第5話 訓練だ
「うんうん、嬉しいよ君のような優秀な人が増えるのは」
ニッコニコでそう話す社長は本当に嬉しそうだった
「じゃ、改めてこの
荷物の調達から配達まで全てを行う配達業務
食品を届ける出前業務
特定の人物を調査する調査業務
特定の人物を護衛する護衛業務
が基本的な業務でその中でも多いのが
配達業務
ただの配達から違法スレスレの物、
アウト寄りのアウトな品物まで幅広い
基本依頼を受けて動くらしい
依頼規約に背かないなら何してもOK
ただ殺しはダメだったらしい
「最近治安局の連中が物騒でね。
こちらも手段を選べないんだよ」
「じゃ誰かを殺、、」
「あぁ、もう手がキレイな人の方が少ないかもね」
「そんな、、」
「それでも無関係な人の命を奪うのは禁止しているから」
関係ある人は殺していいってこと?
どんな理由があろうと人を殺めていい理由にはなることがあるだろうか(反語)
「賢いね。反語なんて」
「国語の教師かよお前はょー!」
「どうした急に」
「いや、一旦落ち着きましょう」
急に何かに乗っ取られたような気がする
俺はギャングじゃないのに
「まぁ君もいつか殺らなきゃいけない時が来るよ」
「そんな時は8月31日並に来て欲しくないですね」
「いいや近いうちに必ず来るよ」
そして大体の説明を受けて
俺は部屋を出る
部屋を出る時に
「そうだ、ここでは基本的に四人組で動いてもらうよ。そして今三人しかいないチームが一つあるんだ。君はそこに行ってもらうよ
安心しな、彼らは引き出しているからね」
三人組、、、三人、、まさかな
……
そのまさかでしたぁ
「新しいメンバーとは」
「まさか!」
「オメェかよォおおお!」
メンバーの顔合わせをしているのだが
見た事ある三人組が目の前にいる
そんな反応になるのは俺の方だよ
「はぁ、まぁそうなってしまったものは仕方がないですね」
「ね〜」
「そうだな。まぁコイツの動きは悪くねぇしな」
三人で俺を置いて話が弾んでいるのが悔しい
あと聞きたいことが沢山ある
「あの!」
「「「ん?」」」
三人ともこっちに意識を向ける
今、聞かないと、、聞かないと、、
聞か、、ないと、、、
言葉が出てこない
聞きたいことが山ほどあるが
何から聞けばいいのかが分からない
「ごめんねぇ〜私達だけで話しちゃって」
そう言って女が姿勢を正して俺と向かい合う
「おほんっ、え〜とまずは自己紹介だね
こっちの眼鏡をかけた頭で考えるのが好きそうな人が『ヒロ』
あっちのちょっと怖い頭に知識がちゃんと詰まってなさそうな人が『タキ』
そして私がこのチームのアイドル!
『ハナ』!」
「私の説明が棘がある気がしますが」
「頭にちゃんと知識は詰まってるわ!」
コイツらがホントに犯罪をしてるようには
全然見えない
けど人を殺しているかもしれないんだよな
「君の
「俺は『ヒナ』だ」
「うん!いい
「それじゃ!行こうか」
「どこに?」
「上」
……
今日も相変わらず暑い
「天が近いとさらに暑い」
「けどこれからはこの高さが君の庭だよ」
ハナが笑顔で言ってくれる
「何するんです?」
「訓練だぜ」
「お前は身体を動かす能力は私達並かそれ以上だ。だがそれだけではこの世界では死ぬぞだからこれから身体の使い方を覚えてもらう」
「まずは俺だな!」
「ルールは簡単。鬼ごっこだ」
「ヒナちゃんがタキくんに触れられたら終わりだよ」
「ヒナちゃ、、ん?」
「はじめ!」
タキが逃げてく
呼び方について聞きたいけど見失ってしまう
「待て!」
速い!離される!
速度は俺より少し遅いけど追いつけない
何故か背中が小さくなってく
直線では少し距離を縮められるが
角を曲がったり登ったり降りたりすると
途端に距離を離される
ならば!
「NAVI!タキを追う!最短のルートを出してくれ!」
「はい、マスター。
マスターの運動能力を参考に最短のルートをリアルタイムで表示します。
それと、身体の動きをサポートします。」
視界にタキへの最短のルート、身体の動かし方が見えるようになった
どんどん距離が近づいてくる
あと少し、あと少し!
必死に手を伸ばして触れようとする
(よし!これで、、、!)
突然視界からタキが消える
代わりにデカい通気管が出てきた
タキはその下をスライディングで通り抜けてた
(ヤバい!ぶつかる!)
ぶつかると思って目を瞑るがなかなか衝撃が来ない
恐る恐る目を開けると
(なんだ?コレ?)
世界がゆっくりになっていた
あの時のように全てが鮮明に見えた
そして通気管に両手を置いて飛び越える
そして飛んだ勢いを殺さずそのまま
タキに突撃する
「ゴフッ!」
「痛え!」
尻の方からだったからそこまでダメージは受けなかった
「終了!」
「お疲れ様〜」
二人が姿を現して近づいてくる
何やら驚いているようだ
「十分もかからないとか」
「やっぱこの子速いよ」
二人は俺の速さに驚いているようだ
どうだみたか!
まぁ半分以上はNAVIのおかげですけどね
「これじゃ、私がやる意味ないですね」
「そうだね。ここからは私がやるよ」
そう言ってハナが走って来る
「マスター。避けてください。」
「えっ?うわっ!?」
間一髪でパンチを躱す
いきなり殴りかかってくるとか
「何をするだァーッ!」
「何って訓練だけど?」
「次は格闘訓練だ。ほらタキ起きろ」
「そう!具体的な内容は私と組手をして
私がいいと判断するまで!」
「えっちょ待って!」
「待たないよ!」
次から次へと拳が飛んでくる
そして一発が重い!
油断してくらうとひとたまりもない
攻めにまわれない
けど少しだけ慣れてきたなんとかなりそう
「おっ!慣れてきたね。それじゃ本気でいくよ!『ミカ』!頼んだよ!」
何をするつもりだ?
ミカ?誰だそいつ
とりあえずもう攻撃にも対応出来てきた
ここから反撃を!
ゴズッ!
左の脇腹に鈍い痛みがくる
「カハッ!」
思わず声が漏れたそして隙を与えずに
もう一発飛んでくる
咄嗟にガードして後ろに大きく吹っ飛ぶ
「なんだよ、、これ、、」
「ダメダメ〜そんな単調な避け方じゃ。
もっとちゃんと避けないと、先に読まれて攻撃されちゃうよ」
笑顔で言われるとスゲー怖い
けどそれよりも怖いのはハナの動きだ
先読み?
あの短時間で俺の動きを理解したのか?
でもいくら才能があってもそんな事は難しいじゃあ一体なぜ?
「マスター。相手の分析が終了しました。
これよりマスターのサポートに回ります。」
よしNAVIのサポートがあったら
この手負いの状態でも互角には戦える
「ハナ、貴方の攻撃はもうくらわない。
次はこっちの番だ!」
「いい気概だね。じゃあこっちも」
ハナが助走をつけて攻撃してくる
速い!さっきよりも速くなっている
勢いをつけて殴る姿勢をとっているが
それは囮で本命は!視界外からの蹴り!
「上手く隠したと思ったのに」
「言ったでしょう。もう攻撃はくらわないって」
俺はなんの苦労もなく躱したが
NAVIのサポートがなければ頭に直撃で
気を失っていただろう
しかし避けたはいいがこの女、隙が一切ない
回避の後に攻撃を入れる隙が全くない
万全の状態ならなんとか一発くらいは出来るかもしれないが、
今の状態では避けるので精一杯だ
一旦距離を置こう
「あれ〜距離を置くんだ。避けたのなら反撃すればいいのに」
「よく言いますね。
こっちが反撃しようとした時相打ち覚悟で拳握ってたじゃないですか」
「バレてた?」
当然この事に気づけたのもNAVIのおかげだ
俺の視界ではハナの攻撃する軌道が見えている
だから避けれている
正直ハナのフェイントを見抜けるのは
俺には無理だ
たけどNAVIは俺が見えないとこまで見えて
正確にサポートをしてくれる
「マスター。簡単な格闘術を見つけましたので、サポートに反映させます。」
これで攻撃手段も揃った
これでハナを倒す!
「まだまだいくよ!」
次はフェイントなしの右ストレート
その次は左!その次は右!
左!右!左!右!
まずい小細工無しで力で押してきた
重い!そして速い!
どんどん連撃のペースが上がっていってる
なんかオラオラって聞こえる気がする
(多少無茶でもここから抜け出さないと)
「マスター。十秒後に後ろに大きく飛んでください。」
十秒も耐えられるかな
でもだんだん連撃の勢いが無くなっていってるからなんとか耐えられそうだが
「吹っ飛んじゃえ〜!」
「マスター。今です。」
ハナの拳が鼻先を掠めていく
流石だよNAVI、タイミングバッチリだよ
そして今なら隙だらけのハナに攻撃出来る
大きく踏み込んで攻撃の姿勢をとる
(貴方の技をもらいます)
俺は拳ではなく足に力を込める
ハナは殴ってくると思って防御姿勢をとった
(勝った!確実にこの蹴りは当たる)
間合いに入って蹴りを出した瞬間
また世界が鮮明になった
(なっ!?)
ハナはスローの世界でも変わらずに動いた
当たるはずだった足は蹴り上げられ、
体勢を崩した俺に強烈な一撃が腹部に入る
「ゴフッ!」
殴り飛ばされて床に横たわる
(早く立て!殺されるぞ!)
でも立てない!身体に力が入らない
ハナが近づいてくる
この状態で攻撃を受けたら普通に死ねる
ついに攻撃の届く所まで来た
(もうダメだおしまいだ)
「うん!君いいね!久しぶりにあの状態になったよ!」
(え?)
「これにて戦闘訓練は終わり!」
「終わりましたか?早かったですね」
「うん!この子すごいよ!」
そうしてメガネ野郎じゃなくてヒロが俺を背負ってどこかに連れてかれる
ハナは未だに伸びてるタキを背負っている
この人やっぱ力の強さがおかしいよな
「この新人かなり優秀だな」
「そうだね。社長がスカウトするだけの事はあるね」
「対応力がかなり高い。
何故かは分からないが、、、」
「それね〜私の予想だけど彼のSSDが関係してるんじゃない?」
「なるほど。今度調べてみようか」
会話を聞いていたらいつの間にか俺は寝ていた
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