第4話 運び屋《ランナーズ》

…………


「……と、怖いか?」


「全然、これでやっと僕も元気になるんでしょ?楽しみだよ」


夢?いやコレは記憶だ

誰の?


「柊さん、この子が?」


「そうだ、早速準備してくれ」


……


「眠ってる間に終わるから安心しろよ」


「うん、父さん」


………………


「どうだ身体に異常はないか?」


「うん!身体が軽いよ」


「そうか、それは良かった。けどまだここからは出られないよ。もう少しやる事があるんだ」


「柊室長、、、」


「おお、一ノ瀬少年じゃないか」


「いや、私ももう20です」


「そうか!もうそんなになるのか」


「柊室長、、この子ですか?例の、、」


「あぁそうだよ」


「辛いですか?私はちょっと辛いです」


「私はそうでもないさ」


………

……


「……………はい、24区の14-31です」


「じゃ、あとは警察に任せるか」


「大丈夫でしょうか?警察を嫌がっていたようですけど」


「知るかそんなもん。俺達だって暇じゃないんだからな」


さっきの奴らが話してる

警察はもう呼ばれてるらしい

幸い俺が起きてる事に気づいてはいないようだ


「とりあえず私達は警察が来る前にここから離れないとですね」


三人が立ち去っていく


(今だ!)


立ち上がろうとしても足が上手く動かない

足がロープで固定されてた


「アイツらー!」


どうにかして解かないと


「マスター。この状況のヒントになりそうな情報を開示します。」


ちくしょう!

こんな時でもNAVIは落ち着いて話すんだな

けど、ナイス!


「えっと〜どれだ〜、、、、コレだ!」


簡単縄抜け術と書かれたところにちょうど俺でもできそうなものがあった

NAVIはやっぱ優秀だ

身体が自由になって立ち上がった時

沢山の車が大きなブレーキ音をたてながら

目の前に滑り込んできた


「警察じゃないよな」


「柊真人!動くな!両手を高く挙げろ!」


言われた通りに手を挙げる

ぞろぞろと武装した人達が俺に銃を向けながら出てくる

そしたら真ん中の車から知ってる人が出てきた


「やっぱり。あなたが来るんですね。」


「そうだよ。柊少年。

私は一応ね治安局の局長やってるからね」


「念の為に聞くけどなんで治安局がここに?しかもこんな数」


「治安維持が必要なところにウチらが来るんだよ」


「へ〜、じゃあここには必要ないと思いますけど」


「いいや、必要だね。君がいる限り」


一ノ瀬が手を挙げると

周りにいた人達が一斉に銃口を下げた


「僕も鬼じゃない。大人しく拘束されてくれよ」


「はいはい」


少しずつ治安局の局員が拘束具を持って近づいてくる


(どうやってこの状況から抜け出す?)


「マスター。私が合図した瞬間に10時方向へ走ってください。」


(はァ!なんで!クソ!こんな時には役に立たないのかよコイツ!!)


「信じて!」


(あぁ!もう分かったよ!)


一歩また一歩局員が近づいてくる

俺は神経を研ぎ澄まして待つ



世界が少しづつゆっくりになってく

鮮明に視える

局員全員の視線、緊張、息遣い、

それだけじゃない全て分かる


「今だ!マヒト!走れ!」


合図と同時に走り出す

全員が驚いている

一ノ瀬さんも驚いているが少し悲しそうだった

目の前の局員が恐ろしい者を見るような目で俺を見ながら引き金に指をかけた瞬間

その局員の頭から鮮血が飛び散る


(な!?)


俺を含めた全員が驚愕していた

俺以外の人達は車の影に身を隠してライトも消えた


(チャンス!)


俺はそのまま闇の中へ走っていった

ある程度離れた所でゆっくり息を整える


(あれ?力が、、)


身体に上手く力が入らなくなって倒れる


(ヤバい、ぶつかる)


ボフッ!


(あぁ、、、疲れてるのかな地面が柔らかい)


「えへへ、ナイスキャッチ!」


「お前ホントに見かけによらず力あるよな」


「ちょっと女の子に失礼ですよ!」


「まぁいいでしょう」


そんな会話が聞こえた気がするが俺はそのまま意識を失った


………………………

………………

………


「柊真人、ねぇ、、、柊、柊か、、」


「社長?どうしました?」


「いいやなんでもないよ。それよりどうだい?少年の様子は」


「はい、今は意識を失っていますが命に別状は無いです」


「そうか、それは良かった」


………


眩しい、もう朝?

朝って事は、、、


「やっべ学校!遅刻する!」


飛び上がってから気づく


「ここ?どこ?」


知らない天井ってやつ?

とりあえず俺は屋内にいるのは確実だ

たしか昨日は制服の中身を出してて、、、


「そうだ治安局!まさか!」


「目を覚ましてすぐ騒がないで下さい。何時だと思ってるんですか?睡眠の邪魔です」


「やっほ〜」


「お前はもっと早く起きろ」


どっかで見たことある三人が部屋に入ってきた


スポーツ刈りの男と

ボサボサ頭の目の細い男と

ふわっとしてる女、、


「まさか!お前ら昨日の!」


「だからそう騒がないで下さい」


「覚えててくれたんだ〜」


「覚えてなかったらぶっ飛ばしてたけどな」


なんか昨日と雰囲気が違う気が

特に多分メガネ野郎なんだろうけど

昨日と違ってすごくユルい


「はいはい二人は残りの準備終わらせちゃって!この子の準備は私がやるから」


「わかりました〜Zzz」


「それじゃ頼むわ。ほら!起きろ!」


男二人が部屋から出ていく


「それじゃ!着替えよっか」


「は?」


「聞こえなかった?着替えるの」


「いや、聞こえましたよ。そうじゃなくて

理由が分からないです」


「だって寝間着のままじゃダメでしょ?」


「えっ?」


たしかに着ているものが違う

いつ着せられたんだ?誰に?


「大丈夫だって。別に初めてじゃないんだし」


「あっ(察し)」


「襲ったりしないから!」


襲わない人はね、、そんな獲物を狙う眼をしないんだよ


「すみません!俺一人で出来ますからー!」


部屋から飛び出して逃げる

治安局程じゃないがあの女も十分怖い!


「騒ぐなとあれ程言ってるだろうがー!」


「え!?」


「え?」


ドン!

曲がり角でぶつかった

俺は大した事ないが向こうが大変そう

なんか目をぐるぐるまわして倒れている

よく見るとメガネ野郎だった


「おい、だいじょう、」


「キミ〜、走り回ったらダメじゃないか〜

そんな子にはお仕置だよ」


体がビクッて反応する

首根っこを掴まれる


「程々にしとけよ〜この後社長に合わせるんだから」


「わかってるよ〜」


「あっ!ちょっと待ってください!ホントに!マジ!許して!待って!」


そのまま部屋に引きずり込また


ピギャァァァァァァァァァァァァァァ!!


「スゥゥゥ、、今日は合わせられないかもな」


………


「、、、、、スッキリしたか?」


「はい!社長!」


「君も、災難だったね」


「はい」


「三人は少し席を外してもらえるかな」


あの後お昼ご飯を食べて社長に合わせたい

と言われてついてきた

そこにはスーツでビシってキメたいい感じのイケメンが椅子に座っていた

おそらくこの人が社長なのだろう


「まぁ、アレだ君が柊真人くんだね」


「はい」


「私は『楠木 未来クスノキ ミライ』ここの人達には社長と呼ばれている」


「そうみたいですねって未来?ですか?

あの建設会社の」


「そうだ。未来建設社長の楠木未来だ」


未来建設

この新東京市のほぼ全ての建物の設計、施工を行っている会社だ

そんな会社の社長がなんで?


「今君はなんで建設会社の社長がここにいるか?疑問に思っただろう」


「当たり前ですよね」


「その前に君に聞きたいことがある」


「なんでしょう?


「君は昨日何をしたんだい?しかも治安局が本気になるほどの」


「えっとぉ、」


話したところで信じてもらえるはずがない

けど、、、


「実は、、」


………

……  (少年説明中)


「なるほど、つまり君は一ヶ月程前にデータチップを拾ってそれの中身を見たら治安局から追われるようになったと」


「そうなんです」


「ちなみにそのデータは今も?」


「いえ、すぐに壊しました」


「いい判断だ」


アレ?結構信じてくれてる?

まぁそれなら好都合だ


「それじゃ俺は帰らせてもらいますね」


「柊くん、君帰る場所あるのかい?」


ギクッ!

当然の事ながら治安局に追われているのだからノコノコ家に帰ったら拘束されるのがオチだ


「そこで提案なんだが、君をうちで雇おうと思うんだ」


「ん?」


「だからうちで働いたらどうだって?」


「聞こえてますよ。なんでです?」


朝もこんなやり取りした気がする


「君の運動能力を評価したからだよ」


「でも俺建設なんて、」


「いやいや、君が入るのは建設の方じゃなくて運び屋ランナーズにだよ」


運び屋ランナーズ?」


「そうだ。入ってくれたら私達は君を助けられるようになる」


「運び屋ってなんです?」


「私から説明しましょう!」


ガシャ!

と音をたてて扉が開く


運び屋ランナーズ

通常のルートじゃ出回らない物を調達から配達まで全て行う組織

非合法の物品も運ぶ時もあれば

ウー○ーイーツみたいな時もある

治安局とはすこぶる仲が悪い


「と、こんな感じですかね」


「説明ありがとう」


「つまり、犯罪者になれと?」


「もう既に君は治安局から追われてるんだろう?じゃあまり変わらんよ」


「少し、、、時間をください」


そう言って部屋を出る

部屋を出る際に


「明日までは待つよ。でもこの建物からは出ないようにね。建物内なら自由に行動してもらって構わないから」


と言われた

今なら一ノ瀬さんに誤解だってなんとか出来るかもしれない

けど運び屋ってやつに入ってしまうと

もう後戻りは出来ない


「NAVI、俺は一体どうしたら」


「はい、あの未来社長の言葉に嘘はないと思われます。現在の状況では運び屋への加入が最も良い選択だと思われます」


「そうか」


………

……  (次の日)


「決まったかい?」


「はい、運び屋ランナーズに入れさせて下さい」

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