第3話 出会い
「まひと、マヒト、真人、起きろよ」
誰?俺を知ってるのか?
でもどこかで聞いたことある声
「起きた?この病室の中は真人にとっては退屈すぎるかな」
病室?ここは病院なのか?
霞む視界が晴れてく
ぼんやりと俺に話しかけてくる人が見えてくる
「もうすぐだよ、もうすぐ真人とずっと一緒に居られようになるって」
この人を知ってる絶対に
けど思い出せない
思い出さないといけない気が
忘れちゃダメな気がする
だってその人は……………
6月17日月曜日
6:30
「はやと、、にぃ、さ、、ん」
いつもより少し早めに起きてしまった
こんな日は気持ち良く二度寝が、、、、
7:53
「はぁー!もうこんな時間!?
なんでやさっきまで六時半とかやったろ!」
急いで起き上がって支度を始める
「NAVI、いつもの」
「はい、本日の天気は雨のち曇り、特に予定はございません。ですが第1区から第12区まで治安局の警戒情報が出ています。それに伴い新京学園の始業時間が大幅に変更し、午後のみ授業をするとのことです。」
「マジで?良かった〜連続で遅刻は洒落にらなかったぜ」
そうしてゆっくり準備をする
「NAVI、今日のニュースはどんな感じ?」
「はい、表示します」
机の上にバッと色んな記事が映し出される
「なんかどれも同じ事ばっか書いてるな」
【国立研究所に強盗が侵入。被害は調査中】
【第3区にて爆発音とみられる不審音】
【第12区にて銃声らしき音】
大まかに分けるとこの三つが主だった
「へー、世の中物騒だな」
NAVIの助言もあって俺は早めに家を出た
雨は止んでいるが人通りはいつもより少なかった
通りを歩いているとそこかしこに治安局っぽい人達が道行く人に目を光らせている
空にはドローンが飛んで俺らを見ている
街が喧騒とする中を歩いていると
ある人を見つけた
「あっ、アレは一ノ瀬さん、だよな、、、、」
車の横に立って他の人に指示を出しているように見えるがこちらに気付くと話してた人達を行かせてこっちに向かってきた
「やぁ、柊少年、今日も学校かい?」
「まぁそうですね。午後だけですが」
「いや〜、ホントに申し訳ない。こんな雰囲気だと怖いよね。大丈夫今日の午前で終わるから」
笑いながら頭に手を置いて話す一ノ瀬さん
「コレって記事にもなってるテロとかが関係してるんですか?」
そう言うと一ノ瀬さんは少し難しい顔をして言った
「そうだね。最近は安定してきたこの新東京市を壊そうとする人達がいるんだ。そんな人達から君のような善良な人達を守るのが私達治安局の務めだからね」
「そうですか。あっ俺もう行かないと」
「そうか学校だったね。時間取らせてごめんね」
「気にしないでください。それではお仕事頑張って下さい」
大きく手を振って一ノ瀬さんと別れる
一ノ瀬さんは少し悲しそうな顔をしていた
「あんないい子を騙すのは良心が痛むな」
「局長?何か言いました?」
「いや、何でもないよ。それよりデータチップは見つかったかい?」
「いえ、まだ、、、、」
「もうアレが起動するのを待つか。」
〈局員全員に告ぐ、捜索は終了。これより撤収作業に移れ。その後は、、みんなで昼飯でも食べに行くか。勿論俺の奢りでな〉
………………………
…………
午後の授業は普通にやった
いつもと違う所を挙げるなら
与一が居ないことそれだけで
先生も理由が分からないそうだ
そして、そのまま与一が学校に、いや俺の前に姿を現すことは無かった
最後に見たのは与一の家で見た写真だった
交通事故で即死、遺体は損傷が激しかった為棺の中身は見せて貰えなかった
「今日も雨か、、」
4日連続で雨が続いてそろそろ布団を干したいのに干せなくて泣きそうになる
別に与一が死んだからじゃない
布団が干せなくて泣きそうなんだ
今はそういう事にしておきたい
「二ヶ月か、長かったような短かったような。そんな二ヶ月だったな」
そう与一に別れを告げて、式場を後にする
また月日が経って7月の中頃
気温も上がって夏本番って感じの暑さだ
一ヶ月間は特に何か起こることは無く平和に過ごした
でも週に一回くらい一ノ瀬さんが俺の家に来て一緒に食事とかをした
そんな日が続いたある日の夕方
俺は夏休み前に制服の上着をクリーニングに出そうとポケットの中身を全部出していた
コンビニのレシートがほとんどだか、中には紙の切れ端とか訳の分からない物も入っていた
全部取ったか確認するためにポケットを引っ張り出すと一緒に何かが出てきた
すぐ拾い上げようとして気づいた
「コレは、、あの時上から降ってきたヤツ」
データチップだった気がする
「そういえば、コイツの中身見てないな」
「NAVI、コイツの中身見れる?」
「はい、それでは机の上に置いてください。」
そう言われて俺はソレを机の上に置いた
「データを解析します。」
…………
……
…
「解析完了。表示します。」
バッとチップの中身の情報が表示される
少し眺めているととんでもない事が書かれていることに気づいた
【人格兵器転換実験事故による損害報告】
【東京都地下実験施設概要】
【東京本実験概要】
etc
どれも詳しくは分からないが、コレはやばい代物だと本能でわかった
けど何故か見なくてはならないような気がして次々と表示されたものを見る
そして一枚の写真を見て目を見開く
「なん、、、で、」
そして次に表示された写真で俺は少し後退する
「この人って、、まさか!」
「マスター。緊急事態です」
…………
時は少しだけ遡り、場所は治安局本部
「あの事件から一ヶ月以上経ちますけど
まだあのチップ見つからないですね。局長」
「そうだなぁ」
あの事件から一ヶ月以上も経過して未だに盗まれたデータが入っているだろうチップが回収出来ていない
政府も大慌てで俺らに早く見つけろってしつこく言ってくる
ボサボサになるまで頭を搔く
「ここまでくるとあの日雨が降っていたので排水システムにでも流されましたかね?」
「そうであって欲しいよなぁ」
「万が一にでも一般の人が拾ってたらどうしましょう」
「それくらいならいいでしょ」
一部局員が理解出来てなさそうな顔をしている
それでも治安局の人間か
「そもそもあのデータはかなりセキュリティが強い。国家機密並みだ。一般の人が持つようなSSDでは解析出来ないよ。なんなら分析さえ出来ないね」
つまり一般人が拾ったとしても分析が出来ないからソレが何かさえも分からない
データチップだと分からないなら解析され中身を見られる心配も無い
もし解析したとしても見れるまでいけるわけない
「けど、奴らはその事を知って盗んだのかが問題かもな」
「局長それはどういう?」
「つまり奴らはそのセキュリティを突破する技術がある可能性があるって事だ。しかも国家機密レベルのセキュリティをな」
これはあくまで可能性の話だ
だが、もし仮にそんな技術があったとしても
「ウチらにはまだ策があるからな」
「それが『トロイの木馬』ですか」
「あぁ、これでデータを開けた場所が分かるってものよ」
得意げに話してコーヒーを飲む
相変わらず苦い、砂糖を大量に入れる
「まぁ、こんなもんかな」
そうしてもはやコーヒーに砂糖ではなく砂糖にコーヒーなのでは?みたいな飲み物を飲んでいると部屋に声が響いた
「「かかりました」」
「場所を特定します」
「かかったのかよ!」
「局長?」
「いや、すまん」
少々拍子抜けしてしまったが好都合だ
このデータを開けられるのは奴らしか考えられない
奴らの本拠地を叩く絶好のチャンス!!
「特定までの時間は?」
「とても強固なセキュリティです。最悪押し返されてこちらの方が乗っ取られそうです」
「よし、ジェネレーターをフル稼働、
その一言で周りが騒然とする
「
……………
…………
……
「マスター。緊急事態です。
何者かがこちらに攻撃してきています。」
「攻撃?俺なんも怪我してねぇぜ」
「いえ、ハッキングされています」
「はぁぁぁあああ!?」
「相手の処理能力が飛躍的に上がりました。私ではもって5分です。」
「どうするんだよ!」
「提案。逃げましょう。」
「そんな急に言われても!」
「マスター、相手が分かりました。
相手は治安局です。」
そう言われて真っ白だった頭が急に冴える
「そうだよな、治安局か」
………
……
…
「父さん、母さん、いつもより長く帰ってこないかもしれないけど待っててね。
行ってきます。」
そして玄関から、、、ではなく窓から家を出る
もう日は暮れて辺りは暗くなっていた
上から見下ろす景色は建物が残業という名のイルミネーションで飾り付けられている
それだけだ
「行こう」
走り出す
とりあえず遠くへ、遠くへ
道なき道を走り、飛び、転がる
目的地はないただ遠くへ
気が付くと俺は第24区まで来ていた
今は建設途中の建物が沢山あるが、
いつかここも同じ様に都会として発展していくんだな
「とても、疲れたな」
状況整理も出来てない中走り回っていい加減疲れた
ここまで来れば大丈夫だろうと思って近くの鉄骨に寄りかかってそのまま目を閉じた
柊真人の自宅
数々の局員がアパートを囲むようにして立っている
「柊少年、一ノ瀬だよ。急にごめんね。仕事が早く終わったから一緒に夕飯でも食べないか?」
インターホンを押して話しかても一切返事が返ってこない
〈突入しますか?〉
「いいや、まだ大丈夫だ」
それから何回か声をかけたが一度も返事が返ってくることは無かった
それより中から一切物音が聴こえない
「総員に通達、十秒後に突入する」
突入準備を整え扉をこじ開ける
「できれば逃げないで欲しかったな」
ある程度予想してたが部屋の中に柊少年の姿は無い
「諜報部、追跡出来てるか?」
〈すみません局長特定作業終了と同時に接続を切られました〉
「一度繋げたら切られないだろ?」
〈それがMSに多大な負荷がかけられ、機能が低下していました〉
「MSの演算が追いつかなかったって言うのか?」
〈つまりは、そういう事です〉
MS以上のシステムがあるだと?
一応MSはこの国にある最高の演算システムだぞ
その上に全てのネットラインの優先権が認められていて、通信障害も起きない代物だぞ
もし仮にそんなシステムがあったとしても
学生が持ってるようなものでは無い
「柊少年の後ろに何か大きな連中が関わっている可能性があるな」
(許せない、何も知らない無垢な人間を利用して、連中は必ず僕が)
〈局長、見つけました。24区です〉
「分かった。すぐ行く」
…………
………
……
「誰?コイツ?」
「知らないです」
「迷子でしょうか?」
「死体とかじゃないよね」
話し声が聞こえる
うっすらと目を開けると一人と目が合った
「おい、こいつ生きてるぞ」
「そうですね」
「良かった〜」
スポーツ刈りの怖そうな男の人と
眼鏡をかけた背中に大きな荷物を持っている男か女かわからない人と
俺より少し年下って感じの少し怯えてる少女の三人でなにやら話し込んでいる
「君、迷子?」
「どう見ても迷子とかじゃないだろ」
「家出?ですかね」
「さっさと警察に保護してもらおうぜ」
そう言って怖そうな人が通報をしようとしていた
俺は焦りながら口を開く
「すみません勝手に入って、すぐにどこかに行きますので警察にだけは!」
立ち上がって逃げようとすると腕を掴まれた
「逃がしませんよ。どうやって入ったかは知りませんがここは建設中の区域です。勝手に入られて事故にあったと言われても困ります。」
「そうです!危ないです!」
さっきまで縮こまってた少女がいきなり胸を張りながら偉そうに言ってくる
「なんなんだよお前ら!こっちの事情も知らないで、ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!」
「ほう、君には不法侵入することが許されるだけの何か理由があるというのか?」
手に力が入れられていくのが分かる
このメガネ野郎地味に力が強い
とはいえ今警察に捕まる訳にはいかない
「離せよ!」
「ダメだね。その犯罪が許される程の理由を話すまで離さないよ」
正直に話すか?
いや、話したところで信じてくれるわけがない
それっぽい理由を考えないと
「なんだいきなり黙って、早く話せよ」
「ちょっと、この子怖がってるじゃん!」
「そうだぜ。お前はもう少し表情豊かにしろよ」
「二人ともうるさいです」
(今なら!)
注意がそれた時を見計らって力を込めて腕を振りほどく
「あっ!待て!」
出口に向かって走る
後ろからメガネと怖い人が追ってきている
(あの女は?)
「危な〜い!どいて〜!」
「へ?」
身体に強い衝撃が加わって倒れ込む
頭を強く打って意識が消える
「やりすぎた」
「だってこの子結構速いんだもん」
「どうすんだよコイツ」
………
……
…
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