第2話 夢にまで見た冒険

静かな教会 見上げると天井は高く その中心にはガラスが輝く

今この場にいる子供達は皆どんな気持ちでいるのだろう

俺含めて 好奇心に溢れているのだろうか それとも…

順番に呼ばれていく 次は俺たちの番だ 緊張する

一つ目を瞑り 二つ深呼吸 三つに目を開け 四つ俺はいける


 神父「カラン・アヴェール、アルナ・カルナ前へ」


     カラン、アルナ「はい!」 


15歳の儀の数日前


少し森の奥 そこからドカーンと大きな音が 

カランは今日もその場所で魔法の練習をしている、隣にはアルナと怖い先生が

カランが空に手を翳す、すると空気中の水分が乾いていくのがわかる。

この世界において魔法に序列とゆう物はない、そもそも魔法とは手が届かない場所に手を届かせる言わば孫の手のようなものだ。本来の魔法使いは魔法で魔物を倒そうとは思わない、補助に徹した方が魔力を温存できるから。


カラン「 我の魔を燃やし 眼前の悪を 我の前から消し去らせ 」

呪文を唱えカランの足から手にかけて炎が渦巻き上がる 先も言ったようにこの世界に魔法の序列は無い、だが皆が皆それぞれ違う形で魔法が使える。なぜなら

魔法は使用者の心の形で変わるからだ カランの炎の形は…


先生「すごいですね、そんな大きな鎌見たことがないです」

アルナ「かっこいい…」

カランの背後に炎が円を描き二つの大鎌が交差する 全体は赤く綺麗な鎌だが

刃先は薄青くなっている


カラン「なんか物騒な形だなぁ」

アルナ「私はかっこよくていいと思うよ」

先生「そもそも呪文を唱えて魔法を発動できるのは誰でもできますがその年で形が現れるのはすごいことなのですよ」

カラン「そうゆうものですか…」

先生「では次はアルナ・カルナやってみなさい」

アルナ「わかりました」

先生の前に立ち呪文を唱える


アルナ「 我は激流 絶え間なく動く 怒りを鎮め 悪を祓いて止水と化せ」

呪文を言い終え手を前に出す 指先から水が溢れ 周りを覆う

背後には水の玉が三つ出ており一つずつ色が少し違う とても綺麗だ

それぞれに薄く 黄 緑 赤が混ざっている 


先生「とても綺麗な形ですね それぞれの色が貴方の心の色なのでしょう」

アルナ「なんか少し恥ずかしです」

カラン「俺は好きだぜアルナの水魔法」

アルナ「〜っ」

カラン「あ、先生に聞いたいことがあるんですけど」

先生「なんですか?」

カラン「先生何回か授業で魔法の属性変化していましたけどその時呪文を唱えていなかったのに何故できたのかなって」

先生「それは簡単ですよ、魔力を属性変化させるのは詠唱がなくてもできるからです」

カラン、アルナ「え?」

先生「正確には攻撃性能が無い魔法です」

魔力は慣れれば自分の得意な属性に変換できるが生活に使える程度の威力で攻撃性能は皆無だ 


先生「呪文とは言わば下準備です、たとえば薪をちゃんと置いて火をつけるとよく燃えますよね。呪文なしで属性を変えるとマッチぐらいの火になります」

カラン「なるほど、では頭の中で呪文を唱えるのはダメなんですか?」

魔法の呪文は全て共通している、だから呪文を唱えればなんの魔法か分かるのだ


先生「いい質問です、その答えはできますができません」

アルナ「できるのにできない?」

先生「はい、頭の中で呪文を詠唱するのはできるのですがその時魔力が頭の中で変わってしまいます。ですのでそのまま燃えてしまったり圧迫したりしてしまうんです」

言葉で言うのには理由がある、それは言霊だ。言葉に魔力を乗せて呪文を唱えることによって魔法が扱える


先生「なので貴方たちには特別課題を与えます」

カラン「特別課題?」

先生「あと数日で15歳の儀がありますね、その日までに呪文の短縮をできるようにしていてください」

アルナ「なんですかそれ?」

先生「言葉通り呪文を短縮するだけです」

先生が手を前に出し呪文を唱える


先生「 吹雪従え 」

風と水の融合 氷だ 先生の背中に氷の槍が8本 全て淡い紫色に光っている


先生「呪文の短縮はとても難しいです、感覚的には木の棒を持ちそこに火を付ける感覚ですが木の棒のデカさや火をどうやってつけるか。そこが難しい」

木の棒がデカすぎたら扱いきれず威力が弱くなったり、木の棒が小さければすぐに火が消えてしまったりする。そんな感覚だ


先生「魔法とは想像です、自由にその棒に火を付けていいんです。やってみなさい」

カラン「アルナどうす…」

アルナ「 我は止水と化す 」

カラン「!?」

アルナ「やったできた」

さっきと同じように背後に三つの水玉が


カラン「何っでできんだよ」

アルナ「才能かなぁ〜」

先生「さすがですねアルナ・カルナ」

カラン「お、俺だって」

カラン「 魔を燃やせ 」


   シーン

 ナニモオコラナカッタ


カラン「なんで俺の時は何も出ねぇんだ!」

先生「難しいと言ったでしょう」

アルナ「プププッ」

カラン「絶対泣かせる」

先生「カラン・アヴェール」

カラン「な、なんですか」

先生「一つ目を瞑り」

よくわからないがそっと目を閉じる


先生「二つ深呼吸」

大きく息を吸い ゆっくり吐く


先生「三つ目を開けて」

前を見る 真剣に俺をみている先生と、幼馴染


先生「四つじ…」

カラン「俺はできる!」

カラン「 魔を燃せ 」

大きな火 空に登り燃える まるでここに俺がいると言わんばかりに


カラン「で、できたぁ!」

アルナ「さっすがカラン」

カラン「お前さっき煽ってたじゃねぇか」

アルナ「なんのことやら」

煽り混じりのとぼけ顔


先生「二人とも早すぎます、ですがよく出来ましたね」

カラン「先生も俺たちに教えてくれてありがとうございます」

アルナ「先生に教えてもらえたことは幸運でした」

カラン、アルナ「感謝します」

先生「…これからも頑張ってくださいねカラン、アルナ」

あの日以降ずっと先生に魔法や魔力の操作、剣術や戦闘術を教えてもらった

5年間ずっと先生と努力をしてきた、込み上げるものがある


先生「さぁ、あとは儀式だけです。あと数日ですのでそれまでに作法を知りましょう」

カラン、アルナ「はい!」


  〜数日後〜


神父「ここに汝ら二人を神の名の下に自由を宣言する」

世界の村や町どこにでもある掟、その中に15歳になり儀式を受けない限り街の外に出ては行けないとゆう掟。外には魔物がいて魔物に襲われないようにするためだ


神父「ではこれより汝らの適性属性を見る、この水晶に手を」

出てきた水晶の中は紫色のモヤが渦巻いてる、水晶に手を置くと中のモヤの色が変わる


神父「カラン・アヴェール、適性は火と土」

水晶は赤色と黄色に変わり混ざり合う、隣で同じようにしているアルナの色は


神父「アルナ・カルナ、適性は水と土」

青色と黄色が混ざり合った色だ


神父「これにて15歳の儀を終わりとする」

儀式が終わり皆が立ち一礼する

教会を出てアルナの家に向かう、今日はパーティーをするそうだ


アルナ「ねぇカラン、5年前のこと覚えてる?」

カラン「5年前?えーっと確か属性が違うかったらってやつか?」

アルナ「そうそう、もし互いの属性が違う時は」

アルナがこちらを振り向き無邪気な笑顔を見せる


アルナ「一緒に魔法を合わせて新しい魔法を、私たちだけの魔法を作ろ」

カラン「それって結構難しくないか?」

アルナ「私たちならきっとできるよ」

カラン「まぁ楽しそうだからいいぜ」

アルナの家に着き俺の親とアルナの親が一緒に料理を運んでいる


アルナ「早く食べよカラン」

カラン「まずは運ぶの手伝うぞ」(ツマミグイシタイシ…)

アルナ「どうせつまみ食い目的でしょ」

カラン「お前、なんでわかるんだ」

アルナ「カランのことだからわかるよ」

次々に運ばれる料理、今日はめでたい日だ たくさん食べてたくさん歌う

明日俺たちは旅に出る、前々から決めていたことだ。

この村に生まれたことを俺たちは感謝してる、とっても居心地が良くてみんな優しい。だから…


パーティーも終わり家族と家に帰り リビングに親を呼び3人とも椅子にすわる

少し静寂になり、覚悟を決めたカランが口を開ける


カラン「親父、お母さん 俺明日アルナと一緒に旅にでる。もうここには帰って来ないつもり」

二人は静かにカランの言葉を聞いた


カラン「じ、自分勝手だってわかってる。ずっと二人には迷惑をかけてたのに村を出たいなんて」

カラン「でも俺は、世界をアルナと見たい。一緒に冒険をして悔いのない人生にしたい」

下を向き手の甲に涙が落ちる、この村が大好きだ お母さんも親父も好きだ。

村のみんなも先生も大好きだ


カラン「だから俺に、夢を叶える事を許してほしい」

嗚咽が混じる 前が見れない きっと軽蔑している ずっと我儘で自由だった

親の言う事なんて聞いてこなかった なのに夢を叶えることを、夢を追うことを許して欲しいだなんて。


母親「顔をあげてちょうだいカラン」

少し前を向くことに躊躇った、ゆっくり顔をあげる。

だが そこには二人の優しい笑顔があった


母親「別に許しも何もカランのしたいようにすればいい、お母さんたちはずっとカランを応援する」

父親「そうだぞ、確かに生意気だったし自分勝手だったがそれ以上に」

俺の頭に手を置いて優しく撫でる


父親「お前が元気に大きく育ってくれたことが俺たちは嬉しい」

母親「カランが初めて食べた星の実、初めて言葉を喋る、初めて私達と目が合った時。色々な初めてをお母さんたちに与えてくれたのは貴方よカラン」

涙が止まらない 嫌ってなかったんだ、ずっと考えててくれたんだ


母親「貴方がずっと頑張ってたことも夢も知ってるわ、だから頑張って夢を叶えなさい」

父親「俺たちはいつでもここにいる、だから帰って来ないなんて言うな。帰ってきたくなったらいつでも帰ってこい」

二人が優しく我が子を包む、この子は私達の大事な宝 色んなことを知ってほしい。それでいつか帰ってきた時に 沢山の土産話を聞かせてちょうだい


母親「お母さんたちはいつでも待ってるからたっくさん冒険するのよ」

父親「お前は自慢の息子だカラン、俺たちはお前を愛してる」

こんなにも愛されていたなんて知らなかった、だから余計に涙が溢れる

俺はこんなにも恵まれてたなんて 知りもしなかった


母親「さ、明日出発するんでしょ。もう寝なさい」

涙を拭いてくれた、俺に触れてくれたその手は今までと同じ優しい手だった

部屋まで送ってもらい伝えることを伝える


カラン「お母さん、お父さんおやすみ。愛してるよ」

母親「私もよカラン、生まれてくれてありがとう」

父親「ゆっくり寝ろよカラン」

父、母「おやすみ」


ベットに横になる、今日色々あったからかすぐに睡魔が襲ってきた

(明日晴れだといいな)

今までずっと憧れていた冒険 ずっと見ていた夢の中で どんな事が、どんな場所が、どんな人が そう思うだけでワクワクする 考えている中でいつの間にか


俺は夢の中に入っていた


とある場所 

「おい!◻︎◻︎が現れたって本当か!」

「本当だよ、こんなこと楽しんで嘘つくだけ無駄だ。殺されかねん」

「とりあえず◻︎◻︎様に報告だ」

揺れ動く者たち、今は小さくも確かに揺れ動く。この揺れはいつしか世界全体に揺れ動くだろう だが知らぬ者はそのまま知らない方がいい。


知らない方が良いこともあるのだから


????


ここは眠れる大地、周りに蠢くは力かそれとも厄災か だが誰も知らない


ここは安全?そんなことはない、許されなければそれだけで罪である


恵みを与えよう、土地を与えよう、代償は己自身だ 忘れることなかれ


だめだ、だめだ、だめだ、盗まれる。 ここに逃げ道はないのだ 置いていけ


ここが誰の場所かわかっているのか? 欲しい? ならば求めろ



事細かに囁かれる 世界には関わってはならない者達がいると かの者達は全てが自然そのものだと 知らないままの方がいい?

彼らだけは話が別だ 知らない方が悪い だが確かではない 物語のような話だ


ユーナ村


朝がきた、天気は快晴 昨日の願いが叶ったのかと思えるほど雲一つない快晴だ

支度をする 持っていくものは地図にお金 カバンの中には少しの服 と食料

家を出て村の出口へ、そこにはすでにアルナがいた


アルナ「おっそい!」

カラン「少しぐらい許せよ」

二人が向き合う


カラン「親は大丈夫だったか?」

アルナ「少し怒られた、まだ早いって。だけどちゃんと伝えたら頑張っておいでって言われた」

カラン「この村にはもう帰ってこない気でいるぞ、本当にいいんだな?」

アルナ「私だってそのつもりよ」

カラン「そっか、ならもう行こう」

悔いはない、今まで憧れてた村の外が目の前だ 歩き始める


「ちょっと待て!」


大きな声、聞き慣れた声だ何回も何回も聞いた


カラン「お、おじさん」

おじさん「何も言わずに出るとは大人ぶってんじゃねぇぞカラン」

おじさんが一つ袋を渡す


おじさん「もってけ、お前達の好きなものが入ってる」

中に入ってたものは 星の実だ


おじさん「おーい!ここにまだおるぞー」

そう後ろに声をかけると 村の人たちが集まってきた、そこには親や先生の姿も


先生「貴方達何も言わずに出るなんて許しませんよ、これは私からの贈り物です」

カランには等身が少し細長い剣を、アルナにはこの村の木と宝石が埋め込まれた杖を


先生「武器もなしに出るのは危ないです、それを持っていきなさい」

アルナ「先生…ありがとうございます」

母親「カラン気をつけてね」

カラン「わかってるよお母さん」

アルナ母「貴方もよアルナ」

アルナ「ありがとうママ」


村の門に向かい歩く 村の人たちがそれぞれ声をかけてくれる

「気をつけてねー」「風邪ひかないようにー」

「子供生まれたら見せにこいよー」「元気でねー」

(何か一つ余計な言葉が聞こえたきがしたが気にしない、気にしない)


見送られる事がこんなにも嬉しい事だなんて、知る由もなかった

二人が振り返りただ一言村に、村の人たちに元気に伝える


カラン、アルナ「行って来ます!」

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