僕たちは流転する

自由神

第1話 カラン・アヴェールと言う青年

世界は夢に溢れている 知っているだろうか? 世界の何処かには

こんな場所があると 

見渡す限りの蒼炎 世界の終りとも思えるその場所に 龍の王が居ると

遥か空 そこは禁足地 だが今まで見たこと無いような 宝があると

ここは海底 だがなぜか空気がある 光もある でも辺りは暗かった

森の奥 そこに聳え立つは 世界樹 この樹一つで国が何国もできるとか

無限とも言える知識 忘れられし書庫 本一冊手にとれば世界が変わる

こんなのは子供騙しの作り話だろう、だが子供を魅了するには十分すぎる物語


そしてここユーナ村に生まれ育った少年 カラン・アヴェールも世界に魅了された一人である


ユーナ村


ここは平和で農業が盛んな村ユーナ村、この村の名物である星の実は多国でも大きな人気がありその実のためにこの村に観光に来る人は珍しくない。

だがそんな平和な村に今日もまた 大きな叫び声が響きわたる


「クォラアァァ!!!またうちの実を勝手に食いやがって!今回ばかりは許さんぞカラン!!」鍬を持ちながら少年を追いかけるおじさん

カラン「お腹減って仕方なかったんだよ〜だから今回だけは見逃してよ〜」

おじさん「何回もその言葉を聞いて何回も見逃してやった!今回は許さん!」

カラン「えー」

星の実を食べながら障害物を乗り越え逃げているこの少年はカラン・アヴェール

今年で10歳になりいつもおじさんの星の実を拝借しては食べている


おじさん「他の子達は今頃学校で勉強しているのに何でお前だけはずっといたずらをするんじゃ!学校行け!」

カラン「おじさんまで親みたいなこと言わないでよ〜。俺もう学校で習うこと無いから別に行く意味ないじゃん」

おじさん「お前はいつもそう言って学校から抜け出しとるがだからと言ってわしの育てた実を食うのはおかしいじゃろ!」

カラン「だっておじさんの育てた実が美味しくて好きなんだもん」

屋根の上に登りおじさんに向かって腹立つ顔をしながら貪り食った


おじさん「その顔のどこにわしは喜べばいいんじゃ!降りてこんか!」

鍬をブンブンと振りながら怒っているがカランは聞く耳を持たない


カラン「でもおいしくて好きってのは本当なんだよ?おじさんのとこ以外からは取ってないし」

おじさん「ほ、本当か?そんなに好きならまぁ少し目を瞑ってやらん」

カラン「取るの簡単すぎて好きだよおじさんの育てた実」

ニマニマとし星の実を食べ終え煽る


おじさん「ンンンンヤァっぱり許さぁぁぁぁん!」

これがこの村の日常であり平和な証拠である 村の人たちはまたカランが何か

やらかしたのねと微笑み和む 


カラン「ん〜やっぱり美味しいなぁ、後二、三個ぐらい持ってこれば良かった」

おじさんから逃げ切り学校へ向かう、この村はそんなに大きくないが学校があるそこでは魔法の勉強、計算学や文字、世界の歴史などを習う。

だがカランからすれば世界の歴史は赤子の手を捻るようにでき計算学はいつも親の手伝いで野菜などを数えたりするため別に必要がない。

魔法に関しては暇だから4歳の時からずっと練習しているため習うことが少ないのだ。


学校に着き自分の教室へ向かう、この学校のクラスは自分で選択できる。

魔法学 計算学 歴史学 この三つだ

文字についてはどのクラスに行っても最初に教えられるのでクラス分けにはない


カラン「ただいまで〜す」

教室のドアを開けると先生がこちらを睨みながら帰ってきた理由を尋ねてきた


先生「さっき出ていったのになぜ帰って来たのですか?カラン・アヴェール」

クラスのそれぞれには専属の教師がいる、ここは魔法学のクラスちなみにここのクラスの先生が一番怖いと言う噂だ


カラン「外の空気吸いたくて出ただけなのでそりゃ帰ってきますよ」

先生「私がいつ外に出ることを許可しましたか?」

カラン「それは〜その〜」

先生「この際勝手に外に出た事などは深く追及しません、ですがあなたは自由すぎます」

カラン「だってつまんないんですもん、全部できることですし分かることを何で俺がしないといけないんですか」

先生「そんなことはどうでもいいんです、ですがここのクラスを選んだのはあなたです。選んだのであれば最後まで責任を持って最後までいなさい」

カラン「俺だって好きで来てるわけじゃないんですよ、親に才能があるからって無理やり通わされてるだけで」

先生「ならばその期待に答えてみては?あなたには確かに才能はあるでしょう、ですが才能があるからと 知っているからと言ってあなたに合わせることはしません」

カラン「期待って…そうやって押し付けないでください」

先生「ならば言い訳はしないことですね」

カラン「言い訳?何が」

先生「あなたが出来ると、知っていると言ったではありませんか。それらが出来るのなら才能があると期待するのは当然です、それが力を持つものに向けられる視線です」

カラン「期待してなんて言って」

先生「なら何故あなたはずっと出来ると言うのですか?期待されたくないなら言わなければいい、力を見せびらかすのは結構ですがそこには力を持つ者に課せられる責任が付きます」

カラン「…」

先生「理解できたのであれば席に着きなさい」

トボトボと歩き自分の席に座る、隣に座る女の子が小声で「何か食べた?」と聞いてきた

カラン「あ〜さっき星の実食べたからそれかも」

???「またおじさんが育てたやつ食べてたの?飽きないの?」

呆れた顔でこちらをみているのはアルナ・カルナ、幼馴染である

カラン「あの星の実が一番美味いから仕方ない」

アルナ「私があげたやつはそんなに食べないくせに…」

先生「こらそこ静かにしなさい」

カラン、アルナ「すみません」

先生「さっき言っていたていたこと聞いていましたか?」

カラン「聞いていませんでした」

先生「はぁ、ではもう一度言います、しっかり紙に書いてくださいね」

黒板に向かい書き始めた


先生「いいですか?魔法とスキルについて教えます、まずは魔法から」

先生が手を前に出し魔法を使った

先生「魔法には四つの基礎の属性変化があります、火、風、水、土の四つですね。

大体の人がこの四つの魔法を使えますがあまりお勧めはしません」

簡単に言えば器用貧乏になるからだ

先生「ですがこれらの属性を全て操れる方がいます 賢者 メティスですね」

賢者メティスとはこの世界に魔法の使い方を人々に教えた人だ、どこの国の人でも知っていると言うだろう


先生「このお方だけは四つの属性の他に 知 と言う魔法属性を扱えます、世界で唯一このお方だけが火風水土全ての属性変換と属性融合を使うことができます」

属性融合を使えるものは世界に少なからずいる、だが扱うのはとても難しい。

理由は属性の適性と才能が同等じゃなと使えないからである


例:10段階評価として火が3風が5として属性融合が使えるかと言えば使えない

二つとも適性が10だとしても同じである ではどうすれば使えるのか

火が5風が3としようこの時の場合

「火の適性があり風の扱いが上手ければ」使えるのだ


先生「ですが私の授業では属性融合は教えません、もし教えて欲しいなら個人的な相談として教えします」

カラン「先生、質問いいですか?」

先生「なんですかカラン・アヴェール」

カラン「なぜ教えないのでしょうか」

先生「簡潔に言えば教える意味がないからです、貴方達に才能がないと言っているのではなく大人になると扱える魔法が変わる可能性があるのです」

子供の頃は火の適性があり火を使うが大人になるとこっちの方が扱いやすいからと水や風、土など様々な魔法を使い得意な魔法が不得意になる時がある


先生「適性魔法が二つしかない場合ならば良いのですが将来様々な魔法を使いたいのであれば大人になって扱う魔法が決まってから学べば良いと思います」

カラン「返答感謝します、ですがせめてどのような属性になるかだけでも教えて欲しいです」

先生「…わかりました」

黒板に四つの属性と矢印を書いた

火→風→水→土→火…


先生「属性はそれぞれこの組み合わせで融合します、火と風なら炎に、風と水は氷

水と土なら樹、土と火なら溶。これらの魔法は強力ですが扱いがとても難しいです、ですので練習する時は私か他の先生がいる時にのみにしてください」

カラン「教えてくれてありがとうございます」

先生「では次はスキルについてですね、スキルは『選ばれないと』得ることはできません」

                      

この世界には魔法のことにはある程度研究が進んでいる、だからこそ属性融合があるわけだ。だけどスキルに関しては『条件』が分かっていない


先生「今スキルを持つ方はこの国の王と魔族の王だと判明しています、他にどんなスキルがあるのか、得た者にはどんなことが起こるのか分かりません。

ですがただ一つ言えることがあるとするなら今までスキルを持つものは例外なく歴史に名を刻まれる者です」


スキルとは神から与えられた愛だと伝えられている、だが本当に神はいるのか?


先生「では今日の授業はここまでです、忘れ物がないように帰ってくださいね」

クラス一同「ありがとうございましたー」

アルナ「カラン一緒に帰ろ」

カラン「いいよ〜」

教室を出ると先生が止める

先生「カラン・アヴェール、今日は許しましたが明日からは許しませんから」

カラン「わ、わかりました」

さすが一番怖い先生、圧がすごい


先生に「さいなら〜」とかるい帰りの挨拶をして学校からでる

帰ってる途中にふと思う

カラン「あ〜星の実食べたい…」

アルナ「なら私の家来る?星の実あるけど」

カラン「ん〜まぁ妥協してやる」

アルナ「あげないわよ?」

カラン「冗談です欲しいです是非いかせてください」

アルナ「よろしい」

くだらないことを言いながら歩く帰り道 村の人たちに「気をつけて帰ってね」と言われながらアルナの家に行く。


家につき「お邪魔します」と言って中に入る


アルナ「はいこれ、家でとれた星の実」

カラン「おぉーやっぱ星の実はいつ見てもうまそうだよなぁ」

アルナ「ほんっといつまで経ってもそれが好きね」

カラン「この味がいいんだよ、いつまでも食べていたいと思える程の食感に少し酸っぱい甘さ」

アルナ「まぁ気持ちはわかるけど」

星の実を一つ取り部屋の窓から空を見る、あたりは少し暗くだけど薄い紺色が空に広がっていた


アルナ「ねカラン」

カラン「ん?どうかしたか?」

アルナ「15歳になったらさ、魔法の適性を調べるでしょ?」

カラン「あ〜あの教会でするってやつか」

アルナ「その時でさもし互いが違う適性だったらその…」

カラン「違うかったらどうするって?」

アルナ「ん〜やっぱなんでもない、その時になったら言うね」

カラン「そっか〜気になるけど我慢しとく」

星の実を二人で食べながら空を見る、ゆっくりと時間が二人を優しく包む


アルナ「カランは大きくなったらしたいことってあるの?」

カラン「そうだな〜、やっぱ世界を旅したいかな」

アルナ「あの物語みたいな?」

カラン「そうそう!世界にはいろんな場所がある、忘れられた書庫や世界樹、辺り一面が蒼炎で包まれている場所が、海底には空気も光もあるのに暗い場所が、空には見たことない宝が!」

両手を大きく広げてまだまだあるんだって興奮して語る


カラン「そんなとこに行けるって考えるだけでワクワクが止まらない、ずっと胸の奥が熱くなる 早く行きたいって」

アルナ「そのためには魔法とかいろいろ知識を身につけないとね」

カラン「うぅ、勉強はあんまり好きじゃない…」

アルナ「あたしも勉強一緒に付き合うからさ」

カラン「お前、天使だったのか」

アルナ「何言ってんのよ私は聖女になってカランと一緒に冒険するって決めてるんだから」

カラン「お前覚えてたのか?」

子供の頃二人だけで約束した、大きくなったら一緒に旅をして一緒に世界を見るって約束 はっきり忘れてる物だと思っていた


アルナ「私からしたらあんたが覚えてることに驚きよ」

カラン「ひっで〜俺一回も忘れてないのに」

アルナ「ごめんごめん」

(カラン、忘れてなかったんだ…ちょっと意外だけど嬉しい)


アルナ「そろそろ帰らないと怒られるんじゃないの?」

カラン「そうだな〜」

玄関まで送り星の身を持たせる


アルナ「カラン、一緒に頑張ろうね」

カラン「おう、お前も頑張れよ」

そう言って 帰る背中を見届ける


二人はそれぞれ努力をし、月日が流れていった 

この世界を一緒に冒険をする、その約束を互いに胸に抱き

二人は15歳になった

そして教会にて二人の名が呼ばれる


教会


神父「カラン・アヴェール、アルナ・カルナ 前へ」


カラン、アルナ「はい」


ここから二人の物語が始まる

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