第3話

スタバの新作を注文して、席につくと

「マリ、新作なんかビミョーだったね。」サエは、カップのストローを混ぜながら言う。

「そう?わたしは、全然ありかな」

サエは、新しいものに飛び付くわりにあまりにも好みに偏りがある。


「そいえば、さっき学校にいたの知り合い?」サエはカップに目を落としたまま聞いてくる。


「えっ?なんで?」

「なんでって、ったくあんたね、ひとが話をしてるのに男子が一人出ていくのぼーっとして見てたでしょう?」

「あっごめん、ごめん」

「もしかして、この前の合コンの?」

「そうだね。」

「なになに、結構良さげじゃないの?」

「まぁ、そうなんだけど…」

「なに、その浮かない感じは、もしかして振ったの?ちょっと、もうちょっと時間をかけて遊んだりとして。マリは、可愛いんだけど。そういう所、苦手だよね。よし、わかった!私が…」

「いや、全然そういう事じゃないんだけど。」

「あ、そうなの?勘違いしちゃった。その男子と何かあるの?」

「どこか、知ってるひとに似てたから」

「知ってるひと?」



「わたしが小さい頃の話なんだけどね…4、5歳くらいに家族でキャンプに行ったことがあったの…」






ー15年前


「みんなで来るキャンプって楽しいね!」

後部座席の後ろでマリは楽しそうに笑ってる。


「ちょっと、はしゃぎすぎて迷子とかにならないでね。」 母が言う


「はーい!」

「あなたもよろしくね。」


「はーい!まぁまぁそんなに気をはらなくても、せっかくの休みなんだから。」

運転中の父がおどけながらも答える。



無事にキャンプ場につくと、荷物おろし始める。


「あれ、ここに入れたはずだったのにおかしいな」

父は、何かを忘れきたらしい。


「どうしたの?」

「いや、今日キャンプファイヤーをやろうとトーチを持ってきたはずだったんだけど」

「別になくても大丈夫でしょう?」

「いや、キャンプには必須です。ってだれかが言ってた。ちょっと借りれないか聞きに行ってくる。」


「もう、マリはあまり遠くに行かないでね。」

母は、かなりの心配症である。


「はーい!」

「もう、わたし一人でこれをみんなおろすの?」

後部座席の荷物をみて呆れながらも荷物を一つずつおろし始める。


「わぁーすごい!蝶々がいる!きれいだな。あっ!あっちにもすごい。」


わたしは、そのまま蝶々を追っていったの


「マリ。ちょっと、これをおろすの手伝ってくれる?マリ…?」

後ろをふりむくと、

母は、私がいなくなってことに気づいた



「なんとか、借りれたよ。これで…どうした?」

母の異常なまでに震えている様子に父は、異変を感じた



「マリが…マリが…いなくなって。ねぇ、どうしよう、どうしたらいい…」

「なぁ、まず落ち着こう。さっきまでいたんだよな?

だったら、子供の足ならそれほど、遠くにいってないはずだから!」


父と母は手分けして、わたしを探しに行ったの


その時わたしは、知らない所まで歩いていたの

大きな湖が見える所まで

「あれっ?ここどこ?お母さん?お父さん?」

段々こわくなってきてわたしは泣き始めたの


「おーかあさん、おーとうさん、どこにいるの?」


すると、たまたま通りがっかたおじさんがいてね。



そのおじさんが話しかけてきたの。

はじめは、なんだか怖かったんだけど



「どうしたの?お嬢さん。」

「おーとうさん、おーかあさん」


そのおじさんはおもむろにポッケから何かをとりだすと、私にくれた。

「いいの?」

「いいよ!食べてごらん。」


包装された袋を破いて、口にいれると

「すっぱ」

おじさんは笑っていた。


「ハァッハァッ!まぁ梅干しだからね。」


でも、そのおかげで緊張がほぐれてそのおじさんに迷子になったことを伝えたの

「そうなのか、迷子ね。よしわかった!おじさんが案内するわ。」

「ほんと?」

「うそは、つかないよ。それにこの辺だとよくあるからね。おじさんに付いてきて来て」


いま思うと、

けっこうこわい事だけど、他に頼るものがなかったからついていく事にしたの


するとね、おじさんがこんな話をしてくれたの


「むかし、俳優さんでこんな事を言ったひとがいてね。”人生はクローズアップでみれば悲劇だが、ロングショットでみれば喜劇だ!ってね」

「どういう意味なの?」

「そうか、むずかしいよね。簡単に言うと今の悲しいことも後から振り返れば笑ってはなせるよっ事かな」

「ふーんむずかしい。」

「まぁ今日の事は大人になれば、分かると思うよ!」

「そうなんだ」




段々と見たことのある風景がひろがてきて

「マリー!マリー!」


「おーい!聞こえるか?マリー!」


お父さんとお母さんの声が聞こえてきた


わたしを見つけたの


「マリ!どこに行ってたんだ!心配するじゃないか」

父は、息を切らしながらもわたしに駆け寄って強く抱きしめた。


「ごめんなさい。」


「でも、どうやってここまでこれたの?」

「それは、おじさんが連れてきてくれて」


「おじさん?」父と母は、不思議なものをみるような顔をしていた。


「ほら、そこに!あれっさっきまでそこに居たのに。」

ふりかえるとそこには、誰もいなかった。




「なに、それ怪談ばなし?」サエが言う。


「違うって!大人になって笑い話にしたの。」

「ああそういう事。で、そのおじさんに彼が似てたという事?」

「そうそう」


「まぁ、他人の空似とかいうもんね」

「そんな感じじゃないと思うけど…」


サエがチラッと時計に目をやると

「マリ、時間の方は大丈夫?」

「えっ?あ、ほんとだ!ありがとう。」


マリは、そそくさと片付けを始める。


「マリは、本当すごいよ!自分の事も家族の事も支えてるんだから。」

「別に大した事じゃないよ。それにわたしだけじゃないから。」


マリは、カバンを手に持つと、

「ごめんね、もう行かないと」

「そう、気をつけてね。」



マリは、近くのバス停へと向かって行った。



その頃、シュンは部屋の中でどうしようか考えていた。

「とりあえず、本屋でお酒の本でも買ってくるか!」


手元のスマホで近くの本屋を検索して、そこに行く事にした。


ここから10分か。




部屋の鍵を閉め、靴を履いた。


この靴もかなり使い込んだな…


とりあえず、本屋に行くか。




本屋へと着くとお酒に関する本がかなりの種類ある事が分かった。

こんなにもあるのか…

さて、どれから選べばいいのか



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