エピローグ
数年が過ぎ、季節は何度も巡り、陽介はもうあの小さな学校を卒業していた。彼は今、美術大学で学びながら、週末には地元のコミュニティセンターで子供たちに絵を教えている。彼の生徒たちは、彼がかつて持っていたような夢や不安を抱えている。陽介はそれぞれの子供の個性を大切にし、彼らが自分自身を表現する手助けをしている。
彼のクラスは人気があり、多くの子供たちが彼の指導のもと、絵を通じて自己表現の楽しさを学んでいる。陽介は子供たちが描く絵の一つ一つに、その子の心が映し出されているのを感じ取り、彼自身の過去を思い出すことがしばしばあった。
ある日のこと、教室の壁にかかっている子供たちの作品を見ていると、陽介の目に一枚の絵が留まった。それは空を飛ぶ鳥を描いた絵で、彼のかつての作品と同じように、自由と希望が込められていた。彼はその絵を描いた少年に尋ねた。「この鳥は、どこへ飛んでいくの?」
少年は無邪気に答えた。「どこでも自由に飛べるところへ行くんだよ。だって、この鳥は自分で道を選べるから。」
その言葉を聞いて、陽介は深く感動した。自分がかつて経験したこと、学んだことを、今度は次の世代に伝える役割を担っていることに、改めて誇りを感じた。彼の旅は多くの困難を乗り越え、自分自身を見つける旅だったが、今はその経験を生かして他人を導く旅に変わっていた。
日が暮れると、陽介はいつものように教室の片づけを始めた。窓の外からは夕焼けが教室に優しい光を投げかけていた。彼はふと外を眺めながら、自分が歩んできた道、そしてこれから歩むべき道に思いを馳せた。彼には明確な未来が見えているわけではなかったが、どんな未来であれ、彼はそれを自分の色で塗りつぶしていく自信があった。その夜、彼は静かに微笑みながら、新しい明日を迎える準備をした。
おばけは、化けることができるんだ 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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