第12話 月とのお買い物 その1

月ちゃんの家を出てわたしの家へと向かうけど、その前にお買い物。

作る物はコロッケと決まっているけど、材料をあらかじめ買っていないのは月ちゃんと買い物デートをしたかったから。

この事は月ちゃんには話してないけど、月ちゃんも買い物デートとは気づかないかな。


「家に行く前に、コロッケの材料を買うからお買い物をしていくね」

「わかりました……」

「買う物は決まってるけど、月ちゃんが好きな物を買ってもいいよ」

「......いいんですか?」

「高い物はダメだけどね」

「高い物は......買いません……」

「そういえば、あのスーパーはたい焼きが美味しんだよね」


わたしはちょっとわざとらしく言うけど、たい焼きと聞いた瞬間に月ちゃんの目が輝きだした。

あまり表情が変わらない月ちゃんだけど、誰から見てもたい焼きが食べたいぐらい目がはっきりと輝いてる。


「そうなんですか?」

「そうだよ、お祭りで食べたたい焼きよりもおいしいよ」

「そんなに…...ですか?」

「あんこはあまり甘くはないけど、ぎっしりあんこが入ってるし、頼めば焼き立てにしてくれるよ」

「......コロッケも食べたいですが、そのたい焼きも食べたいです!」


月ちゃんが珍しく大きい声を出したけど、たい焼きでテンションが上がるんだ。

流石、甘い物が好きだけあるな。

でも、コロッケはコロッケでちゃんと食べて欲しいな。


「もちろん食べてもいいけど、コロッケもちゃんと食べてね?」

「もちろん……食べます。さくらさんがわたしに作ってくださるので......」


今度は頬を染めて照れたけど、月ちゃんもこんなにコロコロ変わるんだ。


「月ちゃんも感情を出すんだね」

「わたしも......人間なので......」

「それはわかってるけど、普段は感情をあまり出さないよね?」

「出さない訳ではないんですが......あまり表情が変わらないせいか......変わらないように思われています……」

「正直、わたしもはじめはよくわからなかったけど、最近は少しわかるかな」

「そうなんですね......」


月ちゃんは少し目線を逸らして頬を染めるけど、これは照れていると言う事はわたしでもすぐに分かった。


 わたしと月ちゃんは桜並木の下を歩くが、月ちゃんがそっとわたしに手を出してくる。

これは手を繋ぎたいって事だけど、慣れた道なのに手を繋ぐのは......。

でも、月ちゃんが手を繋ぎたいみただから、わたしは黙ってその手を握り駅前のスーパーへと向かった。


 駅前のスーパーはローカルチェーンのスーパーで、県内どころか住んでいる市と隣の市に数店舗あるスーパー。

大きくはないけど、地物を中心に安くて新鮮な生鮮食品を扱っているので、大手のスーパーが来ても繁盛している。


たい焼きはスーパーの入口の前に売り場蟻、たい焼きの他にソフトクリームやたこ焼き、焼きそばも売ってはいるが

たい焼きが一番人気で、あんことカスタードではあんこの方が人気。

作り置きもあるけど、買い物前に頼めば焼き立ても用意してくる。

今日は土曜日で買って行く人も多いけど、たい焼きをを買う人を見て月ちゃんも早く食べたいと言う顔をしている。


「たい焼きを食べたい?」


わたしが聞くと、月ちゃんは小さく何度か頷く。


「ここのたい焼きは美味しいけど、買い物前に頼めば焼き立て買えるんだよね」


わたしがこう言うと


「では、注文をして買い物を早く済ませましょう」


と普段よりしっかりと月ちゃんは声を出したので、ちょっとわたしも苦笑いをしてしまったがこうな風にも話せるんだ。

そして、早く注文したくてわたしの手を引っ張るけど、月ちゃんの力は弱いからわたしはびくともしない。


「月ちゃん、慌てない。今、丁度お客さんも途切れたから頼んであげる」

「ありがとうございます……」


月ちゃんはやはり目を逸らして頬を染めるけど、欲しがっている事が恥ずかしいのかな。

でも、月ちゃんもこう言う一面があるって事がわかって、わたしは嬉しいな。

月ちゃんは売り場へ行くと、店員さんの前だと恥ずかしいのか手をはなした。


わたしと店員さんにたい焼きを焼いて欲しいと注文する。


「何個にします?」

「わたしは2つあればいいけど、月ちゃんはどうする?」


わたしが聞くと、月ちゃんは目を逸らしながら手で5と示したけど、お祭りの時同じく今日も5つなんだ。


「全部で7つお願いします」

「7つですね、わかりました。支払いは先にお願いします」


わたしは600円を払うと、引きかけ点を受けとるけどこの安さも人気なんだよね。

そして、わたしと月ちゃんはスーパーの中に入り、買い物をするのだった。

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桜の上にのぼる月 しいず @shiizuu

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