第11話 月を迎えに行く

約束の土曜日当日。

何時もは遅くまで寝ているけど、今日は月ちゃんと料理をするのでいつもどおりに起きた。

そして、町内会の泊りの旅行にいく両親を見送ると、わたしも月ちゃんの家に行く。

1度月ちゃんを家に案内して、月ちゃんが家に来るつもりだったけど

昨日の学校帰りに月ちゃんが


『わたし1人で......さくらさんの家に行くのは不安なので……迎えに来てください……』


と言うのでわたしが月ちゃんの家に行く事になったけど、当初からそのつもりだったしね。


「これでいいかな」


わたしは髪をセットして、何時も出かける時に切るTシャツとちょっと短めのスカート姿で月ちゃんの家に出かけるけど

買い物のは何時も行くスーパーだし、家での料理だから気合を入れる必要もないしね。

むしろ、気合を入れてる方が変だろうし。


 戸締りをして、外に出るけど......午前中なのに日差しが強くて暑い。

5月の終わりになる頃ではあるけど、5月でこの暑さ。

少し歩いたけど短い距離だからUVケアはしなくてもいいかなって思ったけど、今から面倒だし国道を渡って

桜並木に出れば木陰になるからこのまま月ちゃんの家に向かった。


「ふう、暑かった......」


月ちゃんの家に着いたけど、かなり汗をかいている。

月ちゃんの家まで歩いて20分かからないけど、海が近いのもあってこの辺りは結構蒸し暑い。

わたしは汗を拭くと、インターフォンを鳴らす。


「どなたですか?」


陽さんの声がするので


「さくらです」


と言うと


「さくらちゃんね、今開けるから待っててね」


と陽さんが玄関のドアを開けて、中に入るようにと言ってくれたのでおじゃまをする。


「さくらちゃん、いらっしゃい、月も待ちきれなく、リビングに居るわよ」

「そうなんですね」


すると、リビングからわたしと陽さんの声を聞いたのか、月ちゃんが顔を出した。


「さくらさん……待っていました……さ、行きましょう」


月ちゃんはすでに準備万端で、早く行きたい様子。


「月、折角上がったんだから少しゆっくりしてもいいじゃないの?」

「お姉ちゃんがそういうなら……」


月ちゃんは陽さんに言われて、はやる気持ちを抑える。

わたしリビングに通されて、陽さんは暑くなってきたのでアイスティーをだしてくれたのでそれをいただく。


「今日は月のためにごちそうをしてくれるそうだけど、さくらちゃんって料理が出来るのね」

「といいましても、コロッケですよ」

「月はコロッケが好きだから、それで十分よ」

「わたしは……さくらさんが作る物なら……なんでもごちそうです……」


月ちゃんはアイスティーをストローで飲みなががら少し頬を染めて言うけど、それを聞いてさらにやる気になった。


「もう、のろけちゃって。月がこんな事を言うとは思わなかったわ」


陽さんはあらあらって感じで喜んでいるけど、付き合ってる訳じゃないからのろけじゃないけどよくある冗談。


「陽さん、わたしと月ちゃんはまだ付き合ってないでよ」

「まだってことは、これから付き合うのね♪」

「月ちゃん次第ですよ」


わたしは陽さんの冗談に乗るけど、月ちゃんは


「さくらさんとなら……恋人になってもいいです……」


と言うので、思わずドキっとした。


「月とさくらちゃんなら、いいカップルになりそうね♪」

「陽さん、からかわないでくださ。それに、女の子同士ですよ」

「あら、わたしは別に女な子同士でもかまわないわよ」

「そ、そうなですか!?」

「さくらちゃんと同じ年の高校生のいとこが女の子と同士で付き合ってるし、今時同性同士でもおかしくないわ」

「そ、そうなんですか」


わたしと同じ年で女の子同士で付き合ってるなんてあるんだ。


「まだその彼女とは会ってないけど、いとこに会って聞いた話だとラブラブみたいよ」

「そ、そうなんですか……」


これを聞くと……わたしと月ちゃんが突き合っても大丈夫かも……て何考えてるんだ。


「だから、月とさくらちゃんが恋人になっても、歓迎するわよ」

「陽さん、わたしと月ちゃんはまだ出会って2か月程ですし、付き合うのは早いですよ」

「そうかな?わたしは今の彼と出会って、1か月もしないで付き合い始めたわよ?」

「そ、そうなんですか?」


男女でも出会って1か月で付き合うのは早い気もするけど……1年生の時に連休明けに数組のカップルが出来てたから

わたしが奥手なだけで、今はそれぐらいで恋人になるのかな?

ただ、そのカップルで今も付き合ってるのは1組だけだから……出会ってすぐは長く続くか無いか?

でも、わたしは月ちゃんとはあくまでも仲良くなりたいだけだし、今日の料理だって月ちゃんに食べて欲しいだけからね。

だから、恋愛云々は関係ないんだ。


「出会って1か月経たないのは早いかもだけどね」

「ですよね」


流石にそうだねよ。


わたしと陽さんが話してると月ちゃんが、わたしの服の袖をつかむ。


「さくらさん……そろそろ行きましょう……」

「そうだね」


わたしは陽さんと話してたけど、買い物にも行かないとならないから、そろそろ行く時間かな。


「それでは、行きますね」

「月の事をお願いね」

「わかりました、それじゃ行こうね」


わたしは立ち上がろうとするけど、月ちゃんは袖を持ったままだった。


「月ちゃん……離してくれるかな?」


私が言うと、月ちゃんは


「……お姉ちゃんばかりとはなしてずるい……です」


とつぶやいて、袖から手を離したけど……え、月ちゃんが嫉妬!?

意外な事に驚くけど、月ちゃんは荷物を手に取るとすぐに立ち上がると、そのまま玄関に向かった。

ただ、少し見えた月ちゃんの顔は……さらに赤くなっていたのだった。

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