第10話 月は桜の家へ
連休も終わり学校帰りに何時ものように桜並木のベンチで月ちゃんと話す。
桜が咲いていなくても月ちゃんはこの場所が好きだそうだ。
ただ、5月になったら日差しがあると暑くなってきた。
でも、月ちゃんがここが好きなら、これぐらいなんてこと……あるけど我慢するよ。
「今度の土曜日に……さくらさんのご自宅お邪魔します……」
お祭りで約束した日は今週の土曜日。
食材は何時も行く駅前のスーパーで買う予定だから、当日は月ちゃんの家に迎えに行くつもりだけど
前もって月ちゃんにわたしの家の場所を教えておいてもいいかも。
「うん、わかった。月ちゃんはわたしの家の場所を知らないから……今から来る?」
月ちゃんが来るかわからないけど、誘ってみたら
「はい……お願いします……」
と答えので、月ちゃんを家に案内する。
「わかったけど、月ちゃんは一度家に帰る?」
「面倒なので……このままでいきます……」
「わかった。それじゃ、こっちだよ」
わたしは月ちゃんの手を掴んでベンチを立つと、家に向かう。
信号待ちをして国道を渡り、そのまま5分ほど歩いたらわたしの家に到着。
「ここだよ」
「近いのですね……」
「うん、だから駅前にスーパーに夜でも買いもに行ったんだ」
駅前のスーパーは夜は22時までやってるから、夜になっても買い物へ行っている。
月ちゃんを見かけた日も、買い忘れの食材があって急いで買いに行った帰りだった。
行は急いでいたのと、信号が丁度青だったから信号待ちをする必要が無かったから月ちゃんには気付がなかったけど。
「それじゃ、あがって」
「はい……おじゃまします……」
月ちゃんは家にあがると、居間に案内する。
わたしの家はおじいちゃんが建てた2階建ての和風の家だから、リビングでなくまさに居間。
わたしの部屋も月ちゃんと同じく2階が自分の部屋だけど、月ちゃんが見ている所でまだ着替えは出来ないし
自分の部屋に月ちゃんを入れるのは、ちょっと恥ずかしいので1人で着替える。
そして、1階に戻りお茶を淹れたけど月ちゃんが好きそうな甘いものは……羊羹ぐらいだったけど、これでいいかな。
「月ちゃん、お待たせ」
わたしはお茶と羊羹を月ちゃんにだす。
「ありがとうございます……」
「月ちゃん、羊羹は好き?」
「はい……甘いものは和菓子でも何でも好きです……」
「そうか、よかった」
「いただきます……」
月ちゃんは羊羹を口に入れると、笑顔になって美味しそうに食べるけどそれがまたかわいい。
月ちゃんは綺麗だけど仏頂面というか、普段はあまり表情が変わらない。
ただ、月ちゃんとで当て1か月半程毎日のようにいると、意外と表情が変わる事には気付いた。
気付いたけど、変化はやはり少ない。
でも、甘いものを食べている時は誰の目から見ても嬉しそうに食べるので、これはすぐにわかる。
あと、時々する笑顔がとてもかわいくて、綺麗な月ちゃんも年相応の女の子の顔をする。
「ごちそうでした……」
月ちゃんは羊羹を食べ終えてお茶を飲むけど、ちょっと苦めの緑茶だけど大丈夫かな?
「月ちゃん、お茶はちょっと苦めだけど大丈夫?」
「はい……大丈夫です……お茶以外の苦い物や辛い物は苦手です……」
お茶は大丈夫だけど、甘いもの好きだけあって苦い物や辛い物は苦手か。
わたしもこれらは得意じゃないけど、辛い物はカレーとか麻婆豆腐、ラーメンとかなら大丈夫だけどね。
「そうなんだ。カレーも甘いの?」
月ちゃんに聞くと、月ちゃんは目線を逸らして
「はい……カレーも甘口じゃないと……食べれません……」
と言うけど、頬を赤くして恥ずかしがっているから、この様子だと普通の甘口でなくて子供が食べるカレーみたいだな。
「もしかして……お子様のカレーぐらい甘いのじゃないとだめ?」
「……そこまでは……いえ、そうです……」
月ちゃんは誤魔化そうとしたけど、素直に答えけど恥ずかしくて顔がさらに赤なって目を合わせない。
ただ、それがまたかわいくてたまらない。
「味覚は人それぞれだから、気にしなくていいよ。それに、月ちゃんらしいから」
「さくらさんがそう言うならば……」
月ちゃんは恥ずかしくて目を合わせないけど、少しだけ嬉しそうだった。
「土曜日は月ちゃんも一緒にコロッケを作ってみる?」
元々、月ちゃんと作るつもりでいたけど、断る事はないと思うけ聞いてみた。
「はい……わたしも……すこしは料理を覚えたいです……」
「わかった。それじゃ、月ちゃんも手伝ってね。食材は当日、月ちゃんと買いに行くよ」
「わかりました……」
月ちゃんはこちらを向くけど、まだまだ少し顔が赤いけど恥ずかしさはもうないみたい。
そして、このあとはたわいのない話をしたけど、そろそろ帰る時間になった。
「もう、帰る時間かな」
「そうですね……」
「それじゃ、送って行ってあげる」
「お願いします……」
わたしは月ちゃんを送っていくけど、玄関に鍵をして歩き出すと、月ちゃんがわたしの横で手を近づけて来たけど
どうやら、手を握りたいらしい。
なので、わたしも黙って手を握ると、月ちゃんはわたしの肩をくっつけて来たけど……これじゃまるで恋人みたい。
月ちゃんはきっと手を握ること自体、そんな気にしてないと思うけど、わたしは変に意識する。
月ちゃんは綺麗だし、背も高くてスリムで正に美少女だけど、極度のめんどくさがりで、照れ屋でお姉さんが好き。
そんな月ちゃんが恋人なのは嬉しいけど、わたしと釣り合うかな。
わたしは背が小さいし、月ちゃんみたくかわいくはないし、太ってはいないけど細い訳ではない。
そんなわたしが月ちゃんと釣り合うのかな……ってわたしは何を考えてるのかな。
それに、とてもドキドキしてて……月ちゃんにも聞こえそうだよ。
わたしは胸の鼓動が高まっている事が月ちゃんにばれないか不安いなったけど……もしかして
わたしは月ちゃんに惹かれて恋人になりたいって思ってるのかな……。
いやいや、単に月ちゃんがこんな性格だから、姉として面倒を見たいって事に違いなけど……。
わたしが月ちゃんをそれと違う感情で意識している事は薄々わかっていたけど……。
わたしはそんな事を考えながら、月ちゃんを家に送り届けた。
「ありがとうございます」
「さくらちゃん、ありがとね」
「いえいえ、誘ったのはわたしなので。では、失礼します」
「気を付けて帰ってね」
「またあした……」
月ちゃんを家まで送り届けると、陽さんに挨拶をして家に帰る。
ただ、胸の鼓動は月ちゃんの事を思いまだまだ早いけど……この感情は友達とは別物だと認める事はわたしはまだまだできなのであった。
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