第8話月と春の祭り その2
わたしは月ちゃんの手を引いて、お祭の人ごみの中に入っていく。
月ちゃんはわたしの手を離さない様にと、力いっぱい繋いでいるがわたしも離さないようにと握り返す。
人ごみと言っても、地方のお祭りなので普段よりは混んでるけど、東京に行った時の混み方と比べたら言うほどでは無い。
だけど、月ちゃんとっては小さい頃のトラウマで、これでも人が多く感じると思う。
春のお祭りは流鏑馬の馬場の関係で、秋の祭りと比べたら屋台通りの間隔が狭くて混みやすいやすい。
わたし1人だったら、人ごみをかき分けてどんどん進むが、月ちゃんをまた1人に差せる訳にはいかない
「月ちゃん、大丈夫?」
わたしが月ちゃんに声をかけると
「大丈夫です……」
と普段よりも小さい声を出答える。
「月ちゃん、あと少しで本殿の階段だからがんばってね」
屋台巡りをしたいけど、あまり長く人ごみの中に月ちゃんを居させるのもよくないのと、やはり屋台巡りの前には本殿でちゃんと参拝しないとね。
本殿へ向かには空いている別の道があったけど、月ちゃんの苦手克服のためだからこっちを選んだ。
わたしは出来る限り早く人ごみを出ようとしてるが、突然、月ちゃんが手を引っ張った。
「月ちゃん、どうしたの!?」
もしかして人ごみで具合が悪くなったのかと思ったら
「わたしがしが美味しそうです……」
といって、屋台の前で足を止めたのだった。
(お腹が空いただけだったか)
わたしは安心したけど、お腹がすく頃だからね。
「食べたい?」
「はい……」
「わたがしもいいけど、焼きそばやケバブ、焼き鳥、唐揚げ、お好み焼きもいいよ」
「わたがしが食べたいです……」
月ちゃんが珍しく頬を膨らませている……様に見えたけど、そんなに食べたいのかな。
「わたがしが好きなの?」
「はい……甘いものが好きです……」
月ちゃんは少し照れくさいのか、目線を逸らすけど目線の逸らし方がかわいいな。
ああもう、こんな事されたら、お姉さんおごったちゃうよ!
でも、その前にちゃんと本殿を参拝しないと。
「その前にちゃんと本殿をお参りをしてからね」
「はい……でも……戻ってくるのは大変なので……先に欲しいです……」
確かに、また人ごみの中を進むのは大変かもしれないから、買うだけかってもいいかな。
でも、それだったらわたしも何か買いたいけど、わたがしは封がされているから持ち歩くに問題ないかな。
「わかった、お姉さんがおごってあげるよ」
「……いいのですか?」
「もちのろんだよ!」
「……おじさんみたいです。でも...…ありがとうございます……」
月ちゃんが微笑むけど、微笑むだけでも反則だよ!
というか、人ごみの中が平気になったのか、それともわたがしの方に気が行ってるからなのかはわからないけど
月ちゃんは人ごみの中でも平気にしてるから、安心したよ。
わたしは月ちゃんにわたがしを買ってあげたけど、握った手を1度離してまた握ろうとしたら月ちゃんの姿がなかった。
それは財布を出す一瞬の間だったけど、その間に月ちゃんが居なくなったのだ。
「あれ、月ちゃんどこ!?」
わたしは慌てて周りを見るけど、月ちゃんの姿が無い。
わたしがを屋台のおじさんからわたがしを受け取ると、わたしは月ちゃんを慌てて捜す。
「月ちゃん、どこ?」
わたし声を出すけど、お金を払うのに1分もしない程度の事だからそんな遠くへ行ってないはず。
月ちゃんの格好なら、きっと人ごみの中でも目立つからすぐに見つかるはずだし、神社もそこまで広くない。
ただ、それでも人の流れの中では見つけるのが難しい。
わたしは身長が低いから、人の中に入ると遠くが見えな。
ただ、さっき本殿に行くと言ったので、もしかしたら先にいってるかもしれない。
もしくは、他の甘いものの屋台の前に居るかもしれない。
わたしはあれこれ考えるけど、携帯で連絡すればいいじゃない。
ただ、そうするにしてもこの人の中では携帯で話すのも邪魔になるので、ひとまず本殿の楼門の前に出た。
そして、そこには月ちゃんの姿は残念ながらなかった。
「月ちゃん……お願いだから出て……」
通話をするけど、メッセージを送っても既読すらつかないし、月ちゃんが通話に出るか不安。
不安であったが、意外な事にすぐに出た。
「月ちゃん、今どこ!?」
わたしが聞くと
「先ほどの……わたがしやさんの前です……」
と答えたけど、またわたがしの屋台の前だった。
「わかった、そこで待っててね」
「はい……でも...…通話は切らないでください……」
「わ、わかった、すぐに行くよ!」
わたしは通話のまま人ごみをかき分けて、急いでさっきの屋台に戻る。
すると、月ちゃんがわたがしを食べながらがスマホを耳に当てながら待っていた。
「はぁ……はぁ……そのわたがしはどうしたの……」
わたしは人ごみを急いで来たけど、まさかわたがしを食べながら待ってるとは思わなかった。
「屋台のおじさんが……かわいいからと言って……くれました……」
わたがしをほうばりながら、ほほを赤く染めてるけど月ちゃんは何でもかわいいな。
でも、突然いなくなったのは流石に心配した。
「居なくなって……心配したよ……」
「すみません……となりのじゃがバターが……美味しそうだったので……ふらっと見てしまいました……」
確かに、隣のじゃがバターの屋台もおいしそう。
おいしそうだけど、買うまでまってくれればいいのに。
「買うまでまってくれればいいのに……」
「すみません……匂いに連れました……」
月ちゃんはさらに頬を赤くするけど、もしかして意外と食いしん坊キャラ?
「もしかして、月ちゃんって意外と食いしん坊?」
わたしが聞くと、今まで一番赤いぐらい顔を赤くして小さく頷いたて、わたしも思わず笑みが出た
そして、スマホの通話を切ると、再び月ちゃんと手を繋いだ。
「もう、心配したけど、月ちゃんが食いしん坊って知れてよかった」
「すみません……」
「別にいいよ。そうだ、わたし実は料理が得意なんだ」
「そうなんですね……」
皆から意外と言われるが、実はわたしは料理が得意だ。
といっても、作れるの種類はそこまで多くはないけど、コロッケを作るのが得意。
ちゃんとジャガイモとひき肉を下ごしらえから作れるし、揚げるのも自分で言うのもなんだけど上手。
じゃがいもなら、じゃがバターだって作ってあげるよ。
「じゃがバターに気を引かれた月ちゃんのために、今度、わたしがコロッケでも作ってあげよう」
「……食べたいです」
じゃがバターなのに何でコロッケなのかツッコミが入るって思ったけど、月ちゃんがツッコむ訳がないか。
でも、せっかくだし、1度わたしの料理を食べてもらいたいな
「それなら作ってあげる。お菓子は作れないけど、コロッケなら任しておいて」
ここはシフォンケーキでも作ってあげたいけど、わたしは揚げ物ばかりだったり。
女の子ならケーキとお菓子だろうけど、揚げ物が好きだし、両親が共働きでおかずがどうしても多くなる。
あと、炒め物も結構得意だし、ハンバーグだって、ちゃんと自分で捏ねて作るよ。
「コロッケは好きです……」
「そうなんだ」
「コロッケは……甘くてホカホカしてるからです……」
コロッケは確か甘めだけど、甘いものが好きな月ちゃんなら好きそうだ。
「わかった、そうしよう。でも、先に参拝しようね」
「わかりました……」
月ちゃんにわたしが買ったわたがしをわたし、、食べわったわたがしの割りばしは本殿前にある
ごみ箱に割りばしを捨てると、わたしと月ちゃんは本殿を参拝したのであった。
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