第7話 月と春の祭り その1

月ちゃんと約束した5月3日になった。

月ちゃんにはお出かけと言ったが、デートと思うぐらいに気合を入れる。

といっても、ファッションセンスが無いわたしの精一杯のおしゃれではあるが。


「うーん、流石にメイクはおかしいか……」


普段メイクなんてしてないから、メイクをしてるのも変かな。

一応、メイクの練習をしてはいるけど、まだまだメイクはわからない。

ちょっとネットで調べても、なんか人それぞれのメイク法があってよくわからなかった。


 それはともかく、約束どおりに月ちゃんを迎えに行く。

時間は10時であるが、電車でお祭りをやっている神社の最寄り駅まで2駅、駅から徒歩で10分ぐらいなので

今から出ると11時前後に神社に着くけど。

ただ、メインの流鏑馬は午後からなので、この時間に行くと早い。

もちろん、早いのはわかってるけど、月ちゃんと屋台を巡るため、この時間にした。


「それじゃ、行くかな」


家を出る前に月ちゃんに家を出た事を伝えるメッセージを送信する。

月ちゃんとはメッセージのやり取り……といっても、返信が来る事はほぼないが、面倒くさがりの月ちゃんが

返信しない事はわかっているけど、さらに言うと既読すらつかない事も多々ある。

ただ、今日はすぐに既読なったので月ちゃんも楽しみにしてるみたい。


 家から10分程で月ちゃんの家に到着。

チャイムを鳴らすと、出て来たのは月ちゃんでなくて陽さんだった。


「さくらちゃん、いらっしゃい。月は準備出来てるから待っててね」


陽さんは月ちゃんを呼びに行くと、月ちゃんがちょっと恥ずかしそうにやって来た。


「さくらさん……こんにちは……」


月ちゃんは白のワンピースと浅いつば広帽子というスタイル。

なんていうか、清楚系お嬢さまって感じかな?

白い月ちゃんの肌に白いワンピースだと、月ちゃんの黒髪がかなり映えるけどいい方は悪いけど幽霊の雰囲気もある。

いやいや、それだけ月ちゃんの肌が白く、髪が綺麗って事だよ。


「制服姿以外は……恥ずかしいです……」


月ちゃんは恥ずかしがってるけど、部屋着を見たけどね。

ただ、私服でのお出かけははじめてだから、恥ずかしいのかもしれないけど。


「そうかな?清楚でお嬢さまみたい」

「そ、そんなことは……」


月ちゃんの頬が赤く染まる。


「わたしと比べたら、お嬢さまみたいだよ」


わたしは色々悩んだけど、おしゃれらしいおしゃれな服装が無いから、初夏らしくTシャツに薄い上着をはおって

膝たけのスカートでデートって感じじゃなく、いつもの……いや、たまに友達とお出かけの服装だったりしる。


「さくらさん……らしい恰好だと思います……」


月ちゃんはわたしらしい恰好って言うけど、無理して褒めてる感じがはする。

でも、褒めてくれてるのは素直に嬉しいよ。


「ありがとうね」

「は、はい……」


月ちゃんの頬が更に染まったけど、そろそろいかないと電車の時間になる。


「月ちゃん、そろそろ行こうね」

「はい……。お姉ちゃん行って来ます……」

「2人ともいってらっしゃい」

「行って来ます」


陽さんに見送られて駅へ向かうけど、月ちゃんはわたしの手を取って引っ張るように歩てい。

これは手を繋ぐというより、なんていうか……はぐれない様に付き添っている感じに見えてしまいデートって言う雰囲気じゃないな。


「月ちゃん、どうせなら隣り来て手を繋ごうよ」


わたしが言うと月ちゃんは


「そうですね……お出かけですから……」


とわたしの隣に来て手を繋ぐ。


「月ちゃんは歩くのが速いけど、わたしの速度に合わせてくれるかな」

「そうですね……わかりました……」


月ちゃんはわたしの歩く速度に合わせるけど、月ちゃんの歩く速度が速いのもあるが身長差があって

歩幅の差もあるので、月ちゃんからしたらわたしの歩く速度に合わせるのは面倒かもしれない。

ただ、それでもわたしの歩く速度に合わせてくれたので、これは面倒じゃないってことかな。

月ちゃんが面倒ではないって事は……いやいや、流石に月ちゃんも高校生だから人に合わせることぐらい……できるよね?

わたしはまた変な事を考えてるみたいだけど、隣に月ちゃんがいるから気取れないように邪念を払った。


 駅から電車に乗るが、電車は混んではないがが座れるほどでもなかった。

神社の最寄り駅まで2駅であるが、それでも10分以上かかる。

月ちゃんは人ごみが苦手であると言ってたけど、流石に大丈夫だよね?


「月ちゃん、人ごみが苦手だから大丈夫?」

「はい……これぐらいなら……大丈夫です……」

「そうか。なら、よかった」


流石に地方の鉄道の混み具合ならば月ちゃんも平気だった。

次駅も乗ってくる人と降りる人が同じぐらいなので、混み具合は変わらず降りる駅についた。

電車を降りると、駅前は混んでなかったが神社に近づくにつれて人が増えいく。

神社の前の通りは歩行者天国で、2車線道路の広い通りであるが、それでも人が多く居る。


「月ちゃん、大丈夫?」

「まだ……大丈夫です……」


月ちゃんはこういうけど、周りを必要以上に見回しており落ち着かない感じ。


「落ち着かない?」

「はい……」

「無理ならいいんだよ?」

「無理はしてません……それに……さくらさんと初めてのお出かけですから……」


わたしと月ちゃんは駅前からまた手を繋いでいたが、繋ぐ手に力が入っている。


「握る手に力がはいってるよ?」

「はい……」


月ちゃんはただ返事をすだけだったけど、緊張している事を言えないらしい。


「緊張してるのはわかるけど、無理をしたらダメだよ」

「はい……大丈夫です……」

「大丈夫なら、行こうか」

「はい……」


月ちゃんの手には力が入ってるけど、行きたい気持ちと人が大勢いる事による緊張の2つの気持ちがあるみたい。

葛藤と言う程でもないかもしれないけど、初めてもお出かけでここまで来たから引き返せない感じかな。

わたしもこのままいくか悩むけど、苦手を克服するためと思ってわたしも月ちゃんの手を握って神社へと向かって行く。


 神社に着くと、やはり大勢の人で混んでいる。

屋台もたくさん出て、いかにもお祭りと言う雰囲気であるけど月ちゃんの手にさらに力が入る。

わたしとしてはごはんを兼ねて屋台巡りをしたかったけど、これじゃ厳しいかも。

流鏑馬を見るには本殿前の馬場へ行かないとならないけど、そこへ向かうにはこの中を通らないといけない訳でなく

神社の横の道路から行けるので、人が少ないそちら側からいくことにした。


「月ちゃん、こっちからいこうか」


わたしが手を引くと、月ちゃんは黙ってついて来る。

わたしだって月ちゃんに引かれのでなく、お姉さんらしく引っ張ってあげないとね。

ただ、この場合は物理的に引っ張るって事だけど。

でも、月ちゃんは何も言わずにつてきて、本殿前の馬場に到着をした。


「ここを馬を走るんだよ」


わたしが月ちゃんに教えるけど、流鏑馬が行われるまでまだまだ時間がある。


「そうなんですね……」

「行われるまで時間がまだまだあるけどね」

「それまで……どうするのですか……」

「屋台巡りをしてないか食べたりしようかなって思ったけど……」


わたしたは馬場と通路や屋台を分ける木の柵の前いるけど、神社の入口付近でここはさほど混んでない。

ただ、馬場に沿って並んでいる屋台は通路も狭くて、肩がぶつかるぐらい人がひしめき合っている。

月ちゃんはお祭りではぐれたのが原因で人ごみが苦手になったから、ここを行かせる訳にもいかない。


「さくらさんと一緒なら……大丈夫……と思います……」


月ちゃんはこうはいうけど、握る手にまた力がはいるが今度は汗もかいてる。

気温が高くて、人も多いから汗ばんでもおかしくなけど、月ちゃんの顔には汗がないのでこの汗は緊張の汗だ。


「手に汗をかいてるから、無理してるのはわかるよ」

「はい……でも……もう子供ではありませんし……わたしも大きくなりましたので……」


月ちゃんはわたしが言った言葉いうけど、このせいで月ちゃんが無理をしてるのかもしれない。

わたしとして無理をさせたくない気持ちと、克服して秋祭にも一緒に行きたい気持ちが交錯する。

ただ、月ちゃんももう子供ではないし、これからこ人が大勢いる場所へいかないとならい。

なので、この人の中を通って屋台を巡ること。


「それじゃ、行こうか」


わたしがこういうと、月ちゃんはこくりとうなづくだけであったが、わたしは月ちゃんんの手を引いて人ごみの中へと入って行った。

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