第5話月とお出かの約束
5月の連休前になり、桜並木の桜はすっかり葉桜になった。
月ちゃんとは学校がある日は毎日一緒に帰り、雨の日以外は桜並木の何時ものベンチで話をしたり
お互い何もせずただただ空や景色を眺めている。
「そろそろ連休だけど、月ちゃんは連休の予定はある?」
今日も桜並木のベンチで月ちゃんと話していたけど、そろそろ連休なので月ちゃんの予定を聞くけど
こう言っては失礼かもだけど、月ちゃんが予定があるとは思ってはいなかったりはする。
「予定は……ありません……」
「それなら……どこか行かない?嫌ならいいんだよ」
月ちゃんはしばらく……いや、結構な間で考えたけど、答えは
「さくらさんとなら……一緒にお出かけしたいです……」
だった。
「それじゃ...…お祭りにいかない?隣の市の流鏑馬祭で、電車で行かないとならないけどいいかな?」
「人ごみは苦手ですが……隣の市は親戚のお姉さんがいるので……大丈夫だと思いますので……行きたいです」
「それじゃ……5月3日にお祭りに行こうよ」
「はい……5月3日ですね……」
「待ち合わせは……」
待ち合わせは駅にしようかと思ったけど、月ちゃんがちゃんと時間に来るのか不安になったので
「待ち合わせと言うか、月ちゃんの家に迎えに行ってもいいかな?」
月ちゃんの家に迎え行く事を提案した。
「そのほうが……良いですね……今から自宅の場所は……これから教えます……」
月ちゃんはそう言って立ち上がると「こちらへ」と言って、月ちゃんの家へ向かう。
わたしは月ちゃんについて行くけど、月ちゃんは意外と歩くの早い。
動き出すまでに時間がかかるけど、今日は珍しくすぐに動いたので不意を突かれて離れてしまった。
なんとか月ちゃんの後をついて行くけど、月ちゃんの歩く速度が速いのでどんどん離れていく。
「月ちゃん、ま、まってよ……歩くの速いよ……」
わたしが声を出すと、月ちゃんも気づいて足を止めてたので急いで月ちゃんの元へと行く。
「す、すみません……歩くのが早くて……」
「わ、わたしが……遅いのものあるけど……月ちゃんって意外と歩くのが速いね……」
「面倒な事を早く終えたいので……歩くのは早いです……」
月ちゃんは面倒くさがりであるけど、面倒だからこそ早く終わらせたいため動きが早い。
「でも、流石に歩くのが早すぎるよ」
「すみません……早く家に帰って……さくらさんと一緒に居たいと思ったら……足早になってしまいました……」
月ちゃんの言葉に胸がドキってしたけど、深い意味はないよね。
ただ、月ちゃんの表情が少し照れくさそうな気もするけど……わたしの考えすぎかだよね。
わたしは別に女の子がれない対象じゃないし、百合作品も読んだりはするけど、何で変な事を考えたのかな。
月ちゃんは性格は変わってるけど、美しいというのがピッタリなまさに美少女ではあるけど、あくまでも仲良くなりたい
いや、仲良くなっててるけど、恋愛的な意味合いはないよ。
「こうすれば……桜さんと離れませんね……」
月ちゃんはわたしの手を掴むと、引っ張るように歩きだした。
月ちゃんと手を握れてうれしいけど、月ちゃんに強引な所があるとは思わなかった。
月ちゃんの手は小さくて、背が低いのに女の子の手としては大き目のわたしの手と違うな。
あと、月ちゃんの手はちょっと冷たいけど、体温が高めのわたしからしたらちょうどいいかも……。
そんな事を考えながら、月ちゃんの家へ向かうけど、月ちゃんはわたしの速さに合わせて歩いてくれたのだった。
月ちゃんの家に着くと、月ちゃんのお姉さんが出迎えてくれた。
「月、おかえり。その子は?」
「ただいまです……お姉ちゃん、2年生のさくらさんです……」
「はじめまして、上山さくらです」
「月が友達どころか、年上の女の子を連れて来るなんて意外ね。あ、わたしは月の姉の陽です、よろしくね」
「よろしくお願いします」
「では……上がってください……」
「お邪魔します」
「ゆっくりしていってね」
「は、はい」
月ちゃんの姉の陽さんは月ちゃんと同じく背が高いけど、それに加えて胸も大きくて大人の女性と言った魅力がある。
あと、月ちゃんと違ってとても明る感じだけど、月ちゃんの面倒を見てくれるというので、面倒見はいいのかな。
いや、単に妹だからかもしれないけど、わたしには兄がいるけど兄はそうでもなかったかな。
でも、性別が違うし、女同士だとまた違のかな?
「ここが私の部屋です……」
2階の月ちゃんの部屋に案内されたけど、部屋は意外と言うのは失礼かもしれないけど
極度の面倒くさがりの月ちゃんの部屋にしては、かなり綺麗だけど陽さんがかたづけてるのかもしれない。
「部屋は綺麗なんだ」
「はい……お姉ちゃんと……自分で片づけています……」
「そうなんだ」
「ただ……大体はお姉ちゃんがやってます……」
「ははは」
わたしは誤魔化すように笑うけど、そうだよね。
服を着るのも面倒だった月ちゃんがここまできれいに片付けづける事は無いか。
「あの……服を着替えますので……」
「あ、部屋から出た方がいいかな?」
「大丈夫です……」
月ちゃんはそう言って、制服を脱ぎ始めるけどスカートも気にせずに下ろした。
そして、タンスから部屋着を出して切るけど、脱いだ制服はそのままだった。
「月ちゃん、制服はちゃんと掛けないと皴になるよ」
「は、はい……」
「もしかして面倒?」
「はい……」
「そうか……。でも、いい機会だから私が見てるから自分でやるようにしたら?」
「わかりました……」
月ちゃんはわたしにみられながら制服をハンガーにかけるけど、なんかぎこちない。
ただ、ここでわたしがやったら月ちゃんのためにならないから、ぐっと我慢する。
「出来ました……」
少し歪んでるけど、月ちゃんとしてはこれで十分か。
ただ、このままではいけなので、わたしがちゃんと手直ししてあげた。
「ありがとうございます……」
「今日はわたしがいたけど、これからも自分でやってよね?」
「はい……やります……」
月ちゃんはやると言ってるけど、気乗りではない感じかな。
ただ、指導しに来た訳じゃないし、徐々にやっていけばいいからね。
それに、こんなに早く月ちゃんの部屋に入れるとは思わなかった……って流れで上がってたけど月ちゃんの家の場所を
知るために来ただけだったけど目的は果たしたし、別にいいか。
わたしは月ちゃんとお祭りの話をする。
「お祭りに行くのは……子供の頃以来です……」
「そうなんだ。わたしは友達や家族で毎年のように行ってるよ」
「そうなんですね……子供の頃……人ごみで家族とはぐれて以来……お祭りは苦手です……」
月ちゃんは人ごみが苦手なタイプに感じるけど、子供の頃にそんな事があったんだ。
でも、それも子供の頃の話で、今は子供の頃より大きくなってるから大丈夫。
むしろ、わたしの方が小さいぐらい。
「大丈夫、わたしがついてるし、月ちゃんは今では大きくなったから」
「そうですね……。それに……さくらさんとの初めてのデートですから……」
月ちゃんの口からデートと言う言葉が出てまたドキっとしてしまった。
だって、わたしたちまだ付き合ってないし……って別に恋人として付き合うんじゃなくて
友人として付き合いたいだけだからわたしはなにドキっとしてるんだ。
「デートじゃなくて、お出かけね」
「一緒に出掛ける事を……デートと言うのでは……」
「間違いじゃないけど、友達同士ではデートとは言わないかな」
「そうですか……変な事を言ってしまいました……」
「別にいいよ。それに、月ちゃんとはデートしてもいいかなって」
「はぁ……」
月ちゃんの反応が薄い……いや、元々薄いけど思ったよりも薄かった。
それに、わたしもなにをいってるんだろう、月ちゃんとデートなんて。
今まで彼氏なんていないから、デートなんてしたことないけど、女の子同士でデートをするなんて。
でも、今時同性と付き合っててもそこまで変じゃないかも……。
だとしても、まだまだ告白もしてない相手にデートなんて……って、わたしまたなに考えてるんだ。
変な事を考えて首を横に振るけど、月ちゃんは初めて見た時からわたしの心を揺さぶるし、惹かれてしまう子だな……。
「どうかしましたか?」
わたしが突然首を横に振ったので、流石の月ちゃんも変に思ったがが
「ちょっと邪念を払っただけだから」
というと、月ちゃんは余計に理解できず、頭に?が浮かんでいる表情をしていた……多分。
「月、お茶とお菓子を持って来たわよ」
陽さんがお菓子とお茶を持って来てくれたけど、陽さんは在宅勤務って言ってからいつも家にいるんだな。
「ありがとうございます」
「いいのよ、そんなかしこまらなくて」
「そ、そうですか」
「そうよ、気楽ね。あと、月と仲良くしてくれてありがとね」
陽さんはお礼を言うけど、それに続いて
「月と一緒にいるのは多分あと1年ちょっとかな。今付き合っているか相手から結婚の話が出てるからね。
けど。月ってこんな子だから1人にするのが不安で、決めかねているけど……さくらちゃんなら任せられそう」
陽さんはニコと笑うのと対照的に、月ちゃんは下を向いて白い肌が更に白くなている様に感じた。
そして、月ちゃんは陽さんの服を掴んでいた。
「月、高校生になったんだから、服を掴む癖を直しなさい」
「うん……」
「もう、月は私にべったりだからね。もっとも、わたしも甘やかしすぎたのも悪いけど……ってさくらさんの前でする話じゃないかな」
「い、いえ、月ちゃんから話は聞いて言いますから」
「そう、それでも月と付き合ってくれるなんて、さくらちゃんも面白い子ね。さすが、月が家に連れて来るだけあるわ」
陽さんはふふんって感じで笑うけど、わたしも確かに面白い子かもしれない。
でも、月ちゃんは惹きつける魅力があるの確だし、陽さんが面倒を見たくなるのはわかる。
「それではゆっくり……もしていられないかな?」
「家は近くなので大丈夫です」
「そう。さくらちゃん、月をよろしくね」
「はい」
陽さんはそう言って月ちゃんの部屋を出て行ったが、月ちゃんは俯いたままであった。
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