第2話 桜の下の月

1年生の教室を全て見たけど、昨晩見た少女はいなかったので、わたしは諦めて下校する。

学校から家までは歩きだけど、学校から家までの通学路には、昨晩少女を見た場所を通るので

もしかしたら今日もいるかもしれないと思ったけど、そんな事ないとも思いつつ……桜並木を見たら昨晩見た少女がいた。


(今日もここにいたんだ)


わたしはそう思い、桜の木の陰……といってもほぼ丸見えだけど、しばらくその少女の様子を観察する事にした。



——そして10分後


10分ほど観察してたけど、ほぼ微動だにしないでただただ桜と言うか、空を眺めているだけだった。

その間、散歩のお年寄りや近くのスーパーに買い物向かう女の人がこちらを見てたけど

桜の木の陰からかほぼ丸みえの状態で、女の子を見てている女の子の方が怪しいしよね。


 ただなんだろう、声をかけるにも緊張するというか、声をかけていいものか悩む。

わたしはコミ障でないとは思うけど、かといって初対面の人に気安く声を掛けられるほどでもない。

それに、ベンチに座っている少女が、同じ制服を着ているからと言って本当は存在してなくて、わたしだけにか見えないかも。

だから、話しかけない方が良いかと思ったけど……桜並木を歩いて来たお爺さんが声をかけた。


「おやおや、今日もここにいるのかい。暗くならないうちに帰るんだよ」

「は、はい……昨日は帰るのが遅くなって……怒られてしまいました……」

「そうかい。ご両親も心配するし、女の子が夜にこんな所に居たら、変な人に声をかけれるから気をつけな」

「わかりました……今日は面倒でも……明るいうちに帰ります……」

「そうしなよ。それじゃ、またね」


どうやら、わたしが見ている桜の下の少女はちゃんと実在している様で安心した。

そしてお爺さんはわたしにも挨拶をしたけど、お爺さんが言っていた「変な人」はまさにわたしかな。

いや、わたしは同じ学校の先輩だし、別に変な事は……今してるけど。

でも、別にいやらしい事をする訳でないし、単に仲良くしたいだけだから、わたしも勇気を出して声をかける事にした。


 わたしは桜の木の陰から少女が座っているベンチへ向かうが……そのまま通り過ぎてしまった。

いや、1度目は単なる様子見だから今度こそ……と思ったが、やはりまた通り過ぎてしまった。

なんだろう、近くで見ると白雪みたいな肌に、艶のある長くて綺麗な黒髪が映えているてとても綺麗だ。

薄暗い中で見ても綺麗な子とわかったけど、明るい自然光の中で見るとさらに綺麗。

それを見て胸の鼓動も高まるけど、緊張から声をかけれなくて、何度も彼女の前を往復したからであるけど。

ただ、もう何往復仕方わかないぐらい、彼女の前を往復してる。

なので、次こそは……と思いつつも、やっぱりそのまま通り過ぎそうになったが


「あの……先ほどから何度も往復しますが……わたしにご用ですか?」


と向こうから話しかけれて、思わずビクっとなって足を止めた。

ずっと上を見ていたので、わたしに気づいてないかなって思ったけど……何度も前を往復したら気づくよね。


「えーと、用と言うか……同じ学校の子がこんな所で何してるのかなぁって思ったけど、声をかけるか悩んでたんだ」

「そうですか……制服から同じ学校の方……なのはわかりますが……リボンの色から上級生ですね……」


うちの学校はリボンの色で学年がわかり、赤、藍色、深緑の3色がローテーションになっている。

わたしのリボンの色は藍色で、今年の新入生は深緑、そして3年生が赤である。

今の3年生が卒業すると、来年の新入生は赤となる。


「わたしは2年生の上山さくら、よろしくね」

「わたしは……1年生の飯塚月です……よろしくです……つきはお月様の月一文字です……」


飯塚月ちゃんか、よし名前を覚えた。


「えーと、月ちゃんは昨日の夜もここにいたよね?」

「はい……いました……」

「わたしが買い物へ行ったら、偶然見かけたけど……あんな時間になんでここにたの?何か家に帰れない理由があったとか?」

「いえ……なにもないです……。この場所が好きで……よくここに座っているのですが……家に帰るのが面倒になったからです……」


月ちゃんは「家に帰るのが面倒になった」と言ったけど、どういう事?


「家に帰るのが面倒になったって、どういう事?」

「言葉通りです……座っていたら、家に帰るのが面倒になって……暗くなりましたが……立ち上がるのも面倒になって……

気づいたら……遅くなってしまい……お母さんが心配して怒られました……」

「ははは」


わたしは苦笑するけど、なんか思ってたのと違う。

とても妖艶にみえたけど、実はとても変な子だった。寂しげな表情見えたけど、あれって単にぼーっとしてただけなの?

もしかしたら、家庭の事情で家に帰れないからと思ってたけど、単に面倒なだけだったとは。

というか、家に帰るのが面倒ってどれだけ面倒くさがりなんだろう。


(月ちゃんて実は変な子なの?)


わたしがそう思うと


「わたし……よく変な子と言われます……」


とつぶやいたので心臓がドキっとなった。


「子供の頃から面倒くさがりで……小学生の時、着替えるのが面倒で……パジャマのまま学校に行こうとしました……。

あと、学校に行くのが面倒だから……学校にそのまま泊まろうともしました……でも、お化けが出ると聞いたので……面倒でも帰りました……。

他にも……面倒くさくて色々変な事をしたので……変な子だよく言われます……」


確かに変な子だけど、お化けが怖いから帰ったって言うのはかわいいな。

ただ、わたしは月ちゃん自身がお化けだと思ったけど、これは内緒にしておこう。


「凄い面倒くさがりなんだ」

「はい……出来る事なら……服も着たくないですが……それ以前に朝起きること自体が面倒です……」


朝はわたしも起きたくないからわかるけど、服を着るのも面倒なのは流石に駄目だと思うよ。


「うちの学校って結構受験が難しいけど、面倒くさがりなのによく合格したね」


うちの学校は難関と言う程ではないが、それでも結構受験が難しい学校である。

だから、面倒くさがりなのに、ちゃんと受験勉強をして合格したなと思う。


「勉強は好きです……好きな事は面倒には思いません……学校に行くのも好きです……でも、帰るのが面倒なのです……」

「そ、そうなんだ」


つまり、勉強と学校へ行ことは好きだけど、帰るのが面倒なのね。


「あと……1つ年上の親戚のお姉さんが……○○学園に入学したので……勉強を教えてもらいました……」


〇〇学園って県内で1,2を競う超進学校で県外からも子息令嬢と言われる子が来る学校だよ。

ということは、とても頭がいいじゃない。


「その親戚のお姉さん、すごく頭がいいんだね」

「はい……とってもほんわかしたお姉さんですが……勉強はとてもできます。だから、受験勉強も見てもらいました……」


なんか、月ちゃんの親戚のお姉さんも1度は会ってみたいけど、まずは月ちゃんと仲良くなりたいな。


「ねえ、月ちゃん。いきなりだけど、わたしと仲良くなってくれないかな」

「仲良くですか……」

「面倒だったらしいし、嫌なら嫌ではっきりいってももらってもいいよ」

「……さくらさんならいいかもです」

「ほ、本当!?ありがとね!」


わたしは嬉しさのあまり、月ちゃんの手を握っていた。


「あの……手を握っています……」

「あ、ごめん、嫌だった?」

「嫌ではありません……」

「なら良かったけど」


わたしは月ちゃんの手を放すけど、背の低いわたしよりも月ちゃんの手は小さい手だった。


「なんか話せてよかったかな。そろそろ帰るけど、月ちゃんも面倒くさがらないで帰ってよね」

「はい……昨日はとても怒られたので……さくらさんが帰るなら……わたしも帰ります……」

「そうしてよね。夜に1人は不安だし」

「でも......さくらさんは夜……買い物に行きましたよね……」

「家はこの近くだし、帰り道は街灯があって明るいし、わたしは面倒で家に帰らないって事はないから、大丈夫」

「そうすね……。では、今日は明るいうちに帰ります……」


月ちゃんは腰を重そうに上げるけど、面倒くさがらないで立ち上がってくれた。

わたしは制服に付いた桜の花びらと、座っていたスカートの埃を払うけど、月ちゃんは制服に花びらが沢山ついたまま

帰ろうとしたのでわたしが払ってあげた。


「ありがとうございます……。では、また明日学校で会いしょう……」


月ちゃんは会釈をして家の方と思われる方向へ帰って行ったので、わたしも帰ろうとしど……1年何組か聞くのを忘れてた。

なので、月ちゃんを追いかけようとしたけど、どこかの路地を曲がったらしく月ちゃんのすでに姿は既になかった。

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