第32話 二学期のはじまり




 二学期。

 学校。


「おはよーいーんちょ」

「おはよう」


 朝の挨拶。


 冴子の声は相変わらずクールだ。


「なんか今日のいーんちょ久しぶりで新鮮」

「夏休みもほぼ毎日会ってたじゃない?」

「制服の話~」

「それこそ見飽きてない?」

「久々だとこれはこれでいいんだってば~」


 美波はにへら~と笑いながら、冴子の白い二の腕に手を伸ばす。


 けど、その手はぺしっと撃ち落とされた。


「ダメよ。約束したでしょ」

「ちぇ~、ちょっとくらいいーじゃん」

「ダメ」


 美波はぶーたれる。


 夏休みの後半くらいから、冴子はスキンシップに少し厳しくなった。


 させてくれないわけではない。


 基本は週2回。


 あとは彼女と約束したノルマ――勉強とかいろいろ――を達成したら追加で、というルールができた。


(ホントはもっとイチャイチャしたいんだけどな~)


 まあ、多少? 自分でも盛りすぎてた感は否めないが。


 それで冴子が呆れてしまったのかも。


 そう思うと、少し反省する気持ちもなくはない。


「この前あげた問題集はやった?」

「えっと~……」


 美波は目を泳がせる。


「あれやっておけば基礎は覚えられるから、やっておいた方がいいわ」

「はーい」


 そう言われても勉強となると億劫……。


 なんて思っていると、冴子はこちらの耳元に顔を寄せて、


「それが全部終わったらデート連れてってあげる」

「…うん!」


 やる気を注入された美波は、早速問題集を鞄から取り出して机に広げる。


(絶対今週中に終わらす!)


「はよ~美波…って、朝から何してんの?」


 遅れて登校してきた麗が美波を見て、奇妙なものを発見したみたいに目をパチクリとさせていた。



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