第25話 海に行こう




 八月に入り、夏休みも三分の一が過ぎた。


「……ただれてる!」

「はい?」


 服を着直していた冴子は、突然叫んだ美波の方を振り返って、怪訝な視線を送った。


「ただれてるって、何が?」

「うちらのことだよ!」


 美波は頭を抱え、天井を仰ぐように叫ぶ。


 その動きを仰々しいなと思いながら、冴子は首を傾げる。


「そうかしら?」

「そうだよ! 夏休みに入ってから毎日エッチしちゃってるじゃん!」

「勉強もしてるじゃない」

「そうだけどさ~」


 冴子はさらに首を傾げる。


「じゃあ、どうするの?」

「海行こ!」

「海?」

「うん! 海行って夏の思い出作ろ!」

「……」


 冴子はチラッと机の上に放り出された問題集を見やる。


(美波さんの受験大丈夫かしら?)


 そんな不安がよぎったが……まあ本人が行きたいならと考え直し、


「いいわよ」

「やったー!」


 というわけで、海に行くことになった。


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