第22話 夜の独り言 2




 美波の部屋。


「……」


 美波はベッドに仰向けになり、天井を見つめていた。


 冴子が帰ってから、ずっとボーッとしている。


 途中、夕飯に呼ばれたけど、今日はいらないと言ってしまった。


 学校帰りに


 不思議とお腹も空かなかった。


 何てゆーんだっけこーいうの……


「胸がいっぱい……ってやつ?」


 ……なーんかハズいこと言ってしまった気がする。


 まあ、それも別にどうでもいいくらい、頭がふわふわしてる。


 ふと手の平をジッと見る。


(いーんちょ、柔らかかったなぁ)


 時間にすると、ほんの2、3時間前のことを思い出す。


 途端に顔がカッと熱くなってしまい、美波はうつ伏せになって枕に顔を埋めた。


「きゃあああ」


 くぐもった悲鳴を上げ、バタ足でベッドを蹴る。


 正直、結構急でびっくりした。


 まさか今日いきなり?


 そんなこと考えてもいなかったから。


 冴子から言われて、はじめてそういうシチュエーションだと理解した。


 いや、前も勉強会でふたりきりになったことあるはずだけど……。


(いーんちょは何で『今日』って思ったんだろ?)


 彼女的には自分の家と美波の家で、感じるところが違ったのかもしれない。


 って、そんなことはどうでもよくて。


「きゃあああ」


 油断するとすぐお腹の底から感情が込み上げてきて、声にして発散しないと治まらない。


「はあ……」


 美波は顔を横にズラして、もう一回手の平を見やる。


「次……」


 次の機会はいつだろう?


 今日は美波から誘ってくれた。


 次は自分から?


 想像するだけで顔を熱くなるけれど、


「……いや! 次は私からじゃないとダメだよね。告白したのも私なんだし!」


 と、決意してはみるものの、なんて誘えばいいのか考えたり、そもそもどんなタイミングならいいのかもよく分からない。


「あーもう分かんなーい」


 分からないから調べよう。


 美波はスマホを取り出し、「カップル」「誘い方」「ふいんき作り」などで検索してみる。


「あ、そだ」


 今日はテンパっててよく分かんなかったアレの上手なやり方も、ついでに調べとこう。


 そうして夜更かしした結果、美波は翌日遅刻した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る