第14話 朝の姉妹の会話




 あっという間に初夏も過ぎ、短い梅雨もそろそろ店じまいという季節。


 冴子はいつも通りの時間に起き、制服を着て、妹の友香と朝食を食べる。


「お姉ちゃん、美波さんとはその後どう?」

「どうって?」


 妹の質問に、冴子は首を傾げる。


「何か進展ないのかな~って」

「別に」

「え~つまんなーい」

「そう言われてもね」


 冴子は焼き魚を丁寧に解体しながら、妹と適当な雑談に興じる。


「そういえば、いつの間に美波さんのこと名前で呼ぶようになったの?」

「いつの間にっていうか、仲よくなって自然に?」

「仲よく?」

「ラインでよく話すし」


(いつライン交換したのかしら?)


 妹の社交力にはよく驚かされる。


「何話すの?」

「んー、お姉ちゃんのこととか聞かれたり」

「私の?」

「趣味とか知りたいって」


 友香は少しジーッと姉の顔を見る。


「お姉ちゃんはもっと美波さんと話した方がいいよ」

「学校で話すわよ」

「そーじゃなくて、もっと恋人らしい会話しなよってことー」


 冴子は一瞬黙る。


 それから少し考えて。


「そうした方がいいと思う?」


 冴子に尋ねられ、友香は、


「美波さんは喜ぶと思うよ。でも、お姉ちゃんの好きにしたらいいと思う」


 彼女はそう言って、目玉焼きを口へ運ぶ。


「……そう」


 冴子は魚の最後の一欠片を食べ、食器を片づけた。


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