第13話 慣れてない委員長のはじめてをゲットするギャル




「いーんちょマジゲーム上手いね~」

「そう?」

「そうだよ~。普通はじめてであんな風に勝てないから」


 興奮して話す美波。


「ねぇ、次は私とやろうよ!」

「……」


 美波が提案すると、なぜか冴子は立ち上がり、


「それより、ほかのゲームも教えてくれない? この格ゲー? はもうだいぶやったから」

「あ、オッケー」


 断られたのは残念だが、いろいろ興味を持ってくれるのは嬉しい。


(これからもゲーセンデートできるかも!)


 そう思って、美波は張り切って店内を案内する。


 まずはシューティングで協力プレイでラストステージまで行ってみたり、音ゲーで点数を競ってみたり、クレーンゲームでかわいいぬいぐるみを取ってみたり。


「いーんちょ、せっかくだし取ったの取り替えっこしない?」

「いいけど」


 美波は冴子に猫のぬいぐるみを渡し、代わりに犬のぬいぐるみを受け取る。


「なんかいーんちょには猫似合うね」

「そうかしら?」

「そうだよー」


 猫のぬいぐるみを抱く冴子を眺めながら、美波はうんうん頷く。


「それを言うなら、美波さんには犬が似合うわね」

「えーそう?」

「ええ。この子もポメラニアンだし」


 そう言って冴子は、美波の持ったぬいぐるみの頭をやさしく撫でる。


(私も撫でられたいな~)


 ちょっと羨ましくなる。


「!」


 その時ふとプリクラコーナーが目に入った。


「ねぇいーんちょ! あれ撮ろ!」

「あれ何?」

「プリクラ」

「へぇー、はじめて見たわ」

「じゃあ初プリってこと?」

「ええ」


(やったー!)


 心の中でバンザイする美波。


「早く撮ろとろ」

「そんなに急がなくても」


 美波は冴子の手を引いて、一緒にどの筐体にするか選ぶ。


 まあ冴子はあまり種類が分からないので、結局美波の好みで選ぶことになったが。


「これ四枚撮れるなら、いろいろポーズ取れるから」

「ポーズって、チーズ?」


 冴子は小首を傾げながらピースサインをする。


「そうじゃなくてー、そのさー」


 美波はちょっと恥ずかしそうに頬を赤らめて、


「こ、恋人っぽい奴とか」


 改めて言うとなんか恥ずかしくなる。


 一方、冴子はなるほどと頷いて、


「なら、美波さんが教えて」

「……うん!」


 それからふたりはハートとか、手つなぎとか、ギャルピとか、ちょっとふざけてぶりっことか、いろんなポーズを試した。


「ヤバッ、時間ない時間ない。いーんちょも書いて」


 ラクガキの残り時間を見ながら美波は冴子にもペンを渡す。


「何書けばいいの?」

「思ったことなら何でもいーよ」


 ふたりは時間ギリギリまでラクガキして、機械音声に急かされるように筐体の外に出る。


「出てきた」


 受け取り口に落ちてきたプリシートを手に取り、美波はふと気づく。


 ギャルピースする自分の横に矢印で『かわいい』とラクガキされていた。


「これ、もしかしていーんちょが書いてくれたの!?」

「? ええ」


 思わず前のめりになる美波を不思議そうに見ながら、冴子はあっさりと頷く。


「何でも書いていいって言ったから……もしかして変だった?」

「ううん! 全然!」


 美波はぶんぶんと首を振って、プリシートで緩んだ口元を隠す。


(嬉し~)


 それからお互いプリを選んで、それぞれスマホケースに貼る。


 そのついでに時計を見ると、もう結構いい時間だった。


「そろそろ帰りましょうか」

「うん!」


(今日はめっちゃ恋人っぽいことできたな~)


 美波はウキウキで冴子と一緒にゲームセンターを出た。



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