第12話 勝敗




 スタートはしたものの、冴子はあっという間に一敗した。


 相手は普通にゲームに慣れてる感じの動きで、コンボも使ってくる。


「このキャラってこんな風に動くのね。コンピューターとは違うわ」

「のんきに言ってないで、すぐ二戦目始まるから!」


 とはいえ、さすがにキツい。


 このまま負けちゃうだろうなー……と美波が思っていると。


『YOU WIN』


「勝ったわ」

「う、うん」

「というか、相手が変な技? ばっかりしてたわね」

「そーだね……」


(いーんちょ挑発に気づいてない)


 格ゲーには挑発行動が取れるキャラがいて、二戦目の相手はそればっかりやっていたのだ。


 ゲームを知らない冴子には、挑発ポーズがコマンド技の何かかと勘違いしたらしい。


(ていうか、やっぱりの向こう奴、煽りカス野郎じゃん!)


 冴子の代わりに苛立つ美波。


 そうこうしている内に三戦目が始まる。


(またなんかしたら許さないし……!)


 感情のボルテージが上がる美波。


 けれど、当の本人である冴子は相変わらずクールなままで、


「……」


 彼女は相手のコンボミスを見て、すぐに反撃を入れる。


「いーんちょ凄い!」

「美波さん肩肩」

「あっごめん!」


 興奮して冴子の肩を揺すってしまった美波は、慌てて彼女から離れる。


 その後も冴子の動きは的確だった。


 相手も上手いけどプロ級というわけじゃないらしく、時々コンボをミスる。


 そこを冴子が的確に刺し、ダメージを与えていった。


 元々、彼女の使うキャラがコンボではなく、一発デカい技を当てるタイプだったのも、相性がよかった。


 最後はゲージを使った超必殺技を決め、見事に勝利を飾る。


「やったぁー! いーんちょ!」


 美波は感極まって冴子に抱きつく。


「揺すりすぎ」


 はしゃぐ彼女に対して冴子は肩を竦めるが、表情は意外と満更でもなさそうだった。


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