第7話 テスト期間




 春が過ぎ、そろそろ梅雨の足音が聞こえてくる季節。


 それは、地獄の足音が一歩、また一歩近づくことでもあった。


 即ち。


「テストやだ~」


 机に突っ伏し、美波が死にそうな声で呻く。


「はいはい」

「何その反応? 冷たくな~い」

「あんたの場合いつものことでしょ」


 友人の麗は彼女の愚痴を軽くあしらう。


 テスト期間、美波がこうやって騒ぐのは恒例行事のようなものだった。


「だって今度のテスト悪かったら、夏休み塾通えってママ言うんだもーん」

「仮にも受験生なんだし、それくらい普通なんじゃない?」

「じゃあ麗も塾行くの?」

「行かない」


 麗は爪の手入れをしながら、すげない答えを返す。


 それから爪の出来映えに満足した彼女は、ようやく美波の方を向いて、


「てか、勉強ならカノジョに教えてもらったら?」

「!」


 その提案を聞いて、美波はハッとして隣の席を振り向く。


 すると、話が聞こえていたのか、隣に座る冴子もこちらを見て、


「じゃあ、放課後ウチ来る?」

「行くー!」


 ぐてーっとしていた態度から一転、美波は飛び上がらんばかりの勢いで返事をした。


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