第6話 妹の反応・友香の場合




 デート後。冴子の家。


 帰宅してリビングに入った冴子に気づき、ソファでだらけていた妹の友香は顔だけをそちらへ向ける。


「おかー」

「ただいま」


 姉の素っ気ない返事はいつものこと。


 それだけなら特に気にせず、視線を再びスマホに戻していただろう。


「……!」


 しかし、出かけていった時と姉の服装が違っていたら、さすがにスルーできない。

 しかも以前の姉であれば買うはずのないスカート。しかもミニ。


 これは事情聴取するしかない。


「おねぇ、その服どーしたの?」


 友香の質問に、ミネラルウォーターを飲んでいた冴子は視線をこちらへ向ける。


「買ってきたのよ」

「いっつも通販じゃん。それにおねぇの趣味じゃないよね?」


 妹の好奇心を悟ってか、冴子は「ああ」と納得したように呟き、


「今日デートだったのよ」

「えええぇぇぇ!?」


 いつも通り素っ気ない淡々とした言い方だったが、その内容の重大さに友香は黄色い悲鳴を上げる。


「おねぇ恋人とかいたんだ!?」

「まだお試しだけどね」

「へぇ~~~?」


(おねぇ、恋とか興味あったんだ)


 今まで浮いた話ひとつなかった姉に、降って湧いた恋バナ。


 本人はお試しと言っているが、友香はもうその恋人(仮)さんに興味津々だ。


「ねぇねぇ、どんな人? 同級生? もしかして、大学生とか?」

「何で大学生?」

「おねぇ理想高そうだし」

「そんなことないわ」

「じゃあ同級生なんだ?」


 冴子は肩を竦め、無言で肯定する。


「えぇ~めっちゃ気になる。ちなみにカッコいい?」

「そうね」


 冴子はわずかに微笑み、


「かわいい人よ」


 と答えた。


「おねぇの好みってそっちなんだ?」


 姉自身がハイスペックなので、自然とそれと釣り合いの取れる相手なのかなと想像していたため、友香は意外そうに呟く。


「ねぇ、私も会ってみたい。家に呼んでよ」


 友香は冴子にお願いしてみるが、彼女は小さく首を横に振る。


「えぇ~」

「お試しが取れたら会わせてあげるわ」


 そう言って、冴子はリビングを出て行ってしまう。


(おねぇガードかった。恋人さん頑張って)


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