第3話 無自覚な委員長と慌ただしいギャル
デート当日。
待ち合わせ場所の駅前に、美波は大慌てで向かっていた。
「もーもーもー最悪ー!」
朝、髪がうまく決まんなかった。
昨夜四時間かけて選んだ服が、やっぱり気になって選び直した。
お陰で遅刻ギリギリ。
「ひーん」
美波は半べそかきながら、スカートを振り乱してダッシュする。
結構な視線を集めたが、今はそんなことを気にしてられない。
そうして何とか彼女は時間ギリギリに、目的の駅に到着した。
「ぜぇ~ぜぇ~」
約束は駅の案内板の前だ。
幸い、冴子はまだ来ていない。
ホッと息を吐いて、美波は案内板に寄りかかって息を整える。
(あっ、髪)
せっかく整えたのに、全力ダッシュのせいでボサボサだ。
急いで手鏡を取り出して直そうとするが、
「美波さん」
「……!」
その声に、美波はドキッとして背筋をピンッと伸ばす。
気がつけば冴子がすぐ隣に立っていた。
「お待たせ」
「ううん! わ、私も今来たとこだから」
「そう」
冴子は頷きながら、美波の跳ねた髪を軽く指で直す。
「よかった。美波さんなら、一時間前とかに来てるんじゃないかと思ってたから」
「えっ!? そ、そう?」
(ホントはそのつもりだったんだけど……)
「なんとなく。そんなイメージ」
「そっか~」
冴子のイメージと一致していて、美波は少し嬉しくなった。
「あっ! てゆーかいーんちょの私服」
思わず口に出して言ってしまいながら、美波は食い入るように彼女を見つめた。
冴子の私服はシンプル。シャツにデニム。あとは肩掛けの鞄。足下は春物のサンダル。
それがたまらなく似合っているのが、とても彼女らしく感じた。
「いーんちょ脚長いからデニム似合うね」
「……そう?」
冴子は首を傾げる。
「そういう着こなしって、美人じゃないと似合わないんだよ」
「ん。ありがと」
冴子は少し照れたように頬を掻く。
「最初は映画だっけ?」
「うん! ちょうど観たい奴があったの」
「じゃあ、行きましょうか」
そう言って冴子は軽く手を差し出す。
「……!」
あまりに自然な彼女の行為に、美波は一瞬息を呑む。
そして、さっき走った時よりもっとドキドキしながら、彼女と手を繋いだ。
(え~! いーんちょ、なんかデート慣れしてない!? 素? 素なの?)
美波があわわとドギマギしている横で、冴子は、
(昨日予習したドラマの感じだと、これでいいのかしら……?)
と、自身のムーブについて自己採点をしていた。
こうして、ふたりのデートは始まった。
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