第10話オスタリア王国編⑤
「さあ、存分に召し上がれ」
カトレアの合図でゴブリン、トロールたちが物陰から姿を現す。地面に転がる兵士たちに襲い掛かり、肉をむさぼり始めた。
『カトレアのスキル、すごい効果だな。2個中隊がほぼ全滅とは……』
「効果範囲は最大で半径200メートルに及びます。対軍団用の強力なスキルですはありますが、使いどころが難しい面もございます」
カリオスの解説に俺はうなずく。
カトレアの固有スキル『刺激を運ぶもの』は、相手を欲情させ惑わせる。他にも幻覚作用や、毒、睡眠といった効果もあり、使い分けを可能とする。雑魚処理には最適のスキルだが、自分と同等以上の上位の存在には効き目が激減してしまう。
「カトレア、女たちは回収してくれ。貴重な母体だ」
「わかってるわぁ。ちゃんと指示は出してあるから安心してちょうだぁい」
カリオスの指示にカトレアが答える。
「あ~、もう終わってんじゃん。アタシの分もちょっとは残しとけよなぁ」
ゴブリンを引き連れて現れたビスタが文句を言う。
「ごめんなさいねぇ。でもぉ、この隊のレベルじゃ、ビスタと遊べる子はいないわよぉ」
「ホント、歯ごたえ無さすぎぃ」
ビスタが退屈そうにぼやいた。
鉱山そして野営地の2個中隊を制圧するまでに10分とかからなかった。本当に頼もしい部下であるとともに、データ上からは見えなかった底知れない力を俺は怖いくらいにも思えた。
かつて犯罪グループのリーダーだった俺は異世界に魔王として転生し、デーモン族を眷属にしたのだ。ことが終わってから実感がやっと湧いてきた。あの頃の部下たちとは違う、全てが規格外の化け物が配下に加わったのだ。
彼らをどう使うか、俺の腕の見せ所だ。気がつけば眠気は一気に吹き飛んで、次の
策を練っている自分がいた。
『カトレアさん、ビスタ、お疲れ様』
俺は水晶に向かって思念で話しかけた。
「リュウちゃ~ん、お姉さんの活躍見ていてくれたかしらぁ?」
『すまないけど、もうひと働きお願い。ゴブリンとトロールたちを鉱山へ戻してくれないかな。娼婦も一緒にね』
「ええ、いいわよぉ」
「アンタ、人間のくせにエグイわね。人間の女を繁殖に使うなんて」
ビスタが意外そうな表情を見せる。
『その娼婦たち、オスタリアの人間じゃないだろ? 問題ないさ』
「いやいや、そういう話じゃなくってさ。まぁ、アンタがいいならアタシは構わないんだけど」
どうやらビスタは、俺が人間であることを気にかけているらしい。
種族が同じだからと言って、互いが尊重し合い協力し合えるとは限らない。事実、この異世界でもオスタリアは人間によって窮地に立たされている。俺自身、前世では同じ日本人をさんざん食い物にしてきた。今さら同種だとか同胞だとか、そんな感情は持ち合わせてない。
今の俺が確実に言えることは、カリオス、カトレア、ビスタ、この3人の部下より大事なものは無いということだけだ。
「リュウ様、後始末はいかがいたしましょう?」
『放置で構わない。それよりカリオスは、違法採掘者と兵士を始末した件、女王に伝えてくれ』
「どのように伝えれば? リュウ様のお名前を出してもよろしいのでしょうか?」
「そうだな……俺の名前は出さないで、こんな感じで頼むよ」
俺はオスタリア女王への伝言をカリオスに頼んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます