第8話オスタリア王国編③

『オスタリアを乗っ取ろうと画策した首謀者は、おそらくハイランド王国のはず。ハイランドの第2王子とオスタリアの王女を結婚させて、実権を握りたいんだろう。違法採掘や宣戦布告を受けたオスタリアを守れるのは、軍事力の高いハイランドだけという構図を作り出したんだ』

「つまりベルデ王国の宣戦布告は脅しってわけ?」

 ビスタが目を丸くして尋ねる。

『おそらく7割くらいは。戦争になると、兵士の不足しているオスタリアは徴兵せざるを得ない。犠牲になるのは鉱夫と職人だろ。オスタリアを手に入れても人材不足になることをハイランドも望まないはずさ」

「リュウちゃんの話、面白いわねぇ。お姉さんも興味湧いてきちゃったぁ。でも、残りの3割は戦争の可能性もあるってことよねぇ?」

 カトレアが声をはずませて尋ねる。

『ハイランドの結婚話を断った場合ね。ベルデが進軍して圧倒的な力を見せつけ、被害を最小限度に抑えて降伏させる。オスタリアの王女が結婚を拒んでも受け入れても、大国の傀儡国家になることは間違いないね』

「リュウ様、軍の配置はいかがいたしますか?」

『鉱山に3分の1、残りはアイゼル軍の野営地に頼む。あとの采配はカリオスに任せる。臨機応変に頼むよ』

「ハッ、承知いたしました」

 カリオスが胸に拳を当てて敬礼する。

「じゃ、お姉さんたち行ってくるわねぇ。いい子で待っててねぇ」

 カトレアが俺の額にチュっと口づけし、優しくベッドに寝かせてくれた。

「ふざけんなっ。アタシらだけ働かせてなに休もうとしてんだよっ。一緒に来い!」

「ぶはっ」

 転移魔法が発動する瞬間、ビスタが俺を乱暴に掴んだ。

 かくして俺は3人と共に、オスタリアまで転移するはめになった。



『あのぉ、ビスタさん。もう赤ん坊の起きてる時間じゃないんですけど……寝てていっすか?』

「よくねぇし。リュウが眠りそうになったらグーパンで起こしてやんよ」


 こいつはマジでやりかねない……。

 眠いが気合でどうにかしよう。


『ついてきちゃったけど、俺やることないし、そもそも魔力0だからみんなに任せる』

「で、司令官のカリオスはどこ行ったのよ?」

 カリオスの姿が見当たらず、ビスタが周囲をキョロキョロ見回す。

「きっと、兵士を呼びに行ったのよぉ」

 カトレアが答えた後、タイミングよくカリオスが姿を現した。 

「リュウ様、兵士の配置完了いたしました。いつでもいけます」

 カリオスはそう言うと俺に水晶玉を手渡し、ビスタから俺を預かった。

 カリオスがカトレアとビスタに指示を出すと2人は頷き、夜の闇に姿を消した。



 

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