第7話オスタリア王国編②

『手伝ってもらいたいことがあるんだ』

「なになに? リュウちゃんのためならお姉さん一肌も二肌も脱いじゃう」

 カトレアがドレスの胸元をはだけさせ、谷間を強調する。

『いやいや、そういうのじゃなくって。国と軍隊が欲しいなぁと思って』

「アタシたちに一国と戦争しろっての? バッカじゃない? 攻め落とすだけなら超簡単よ。でも、その後は聖教騎士団と連合国軍に攻められて一族が全滅よ」

 ビスタが声を荒げる。

『そんな馬鹿な真似はしないよ。カリオス、周辺諸国はどんな感じだった?』

「ハッ、報告いたします」

 カリオスは調査結果を話し始めた。


 カリオスの報告から、オスタリア王国が窮地に立たされていることが分かった。

 オスタリア王国は小国ながら魔鉱石の採掘量トップを誇り、さらにその加工技術にも秀でた国である。魔力を秘めた魔鉱石は武器や防具、日用品にまで幅広く利用されている。オスタリア王国は魔鉱石とその加工品による貿易で利益を生み、国家予算は大国と肩を並べるほどの金額である。

 その資源豊かなオスタリア王国に、3つの大国が目を付けた。アイゼル王国はモンスター討伐を理由に軍を派遣し、国境の鉱山で違法採掘を行っている。ハイランド王国は政略結婚をしつこく迫り続けている。最もたちが悪いのは、ベルデ王国の宣戦布告だ。ベルデ王国は一部地域の鉱山を自国の領土と主張し、オスタリアが領土侵犯、違法採掘を行っているという理由で一方的に宣戦布告した。

 3つの大国に囲まれたオスタリアは打つ手がなく、八方ふさがりとなっていた。


『カリオス、ありがとう。お疲れ様』

「ハッ、もったいなきお言葉」

「それでリュウちゃん、どうするの?」

 俺を抱いているカトレアが顔をのぞき込む。

「まさか、アンタ人間だからオスタリアを助けるなんて言わないでしょうね? オスタリアは兵士どころか冒険者だってほとんどいないのよ。国も軍隊も手に入りっこ無いんだからっ」

 ビスタが詰め寄りまくし立てた。

『う~ん、半分は当たりかな。オスタリアは助けたいな。魔鉱石という資源は魅了的だからね』

「リュウちゃんの言う通り、魔鉱石はお姉さんも大好きよぉ。でも軍隊はどうするのぉ? オスタリアは鉱夫と職人の国よ」

 カトレアが心配そうに尋ねた。

『軍隊は既存のもので十分だよ。ちょっと栄養失調だから、まずは食べさせてやる必要があるけどね』

「なるほど、さすがリュウ様」

 俺の意図を理解したカリオスがうなずく。

「あぁぁ、もう全然意味わかんないっ。アンタ、大国3つも相手にする気?」

『実質的には1つかな。ベルデ王国は本当に戦争する気は無いと思うよ』

「はぁ? どゆこと?」

 ビスタが眉間にしわを寄せて尋ねた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る