第6話オスタリア王国編①

 上級悪魔、その中でもトップの実力を有する2人と初めて対面した俺は面喰っていた。

 カリオスから得た情報で彼女たちの所有スキル、体得魔法、ステータスは理解していた。しかし、容姿や性格までは把握していなかった。


 まさか、こんな美人とは驚きだ。


 カトレアは綺麗なお姉さんタイプ。サラサラしたストレートの黒髪を背中まで伸ばしている。モデルのように長身でくびれたウェスト、豊満な胸と形の良いヒップが目を引く。終始笑顔で、俺に対して警戒心は無いように見える。


 しかし、ほんとエロい体つきだな。


「チッ。キモ。ホントありえないんだけど」

 ビスタのわざとらしい舌打ちが聞こえた。


 ビスタは女子高生くらい幼く見える。綺麗と言うよりカワイイ系のギャルという表現が的確だ。カトレアほど身長は無く、スレンダーな体型だ。ピンク色の髪をサイドテールにまとめ、服装はとにかく露出度が高い派手な女の子だ。俺を威嚇するようににらみつけたまま、何度も舌打ちを繰り返している。


 すごいカワイイけど、この子怖い……


「魔王様が怯えてらっしゃるではないか! その目をやめよっ。無礼者」

「はぁ? 魔王のくせにこのアタシが怖いんだぁ。アンタよくそんなヤツの眷属になれるわ。ないわぁ」

 カリオスの叱責にひるむ様子も無く、ビスタは挑発的な声で答えた。

「あれほどやられて、なお態度を改めぬか。あの場はカトレアに免じて引いたが、もう容赦しないぞ!」

「はぁ? 負けてねぇし。まだ全然、戦えたし。ぼっこぼこにしてやんよ!」

 カリオスとビスタがにらみあい、対峙して構えた。


『おいおいおい。ちょっと待った! 孤児院を吹き飛ばす気か? 俺の大事な仮住まいだぞ』

 俺は思念で2人に話しかけた。

「申し訳ございません。配慮が足りず、ご無礼をお許しください」

 カリオスがひざまずき謝罪する。

「アンタよく最弱の人間なんかに頭下げられるわね。アタシ死んでも無理だわぁ」

『もちろん頭なんて下げなくていいし、ひざまずく必要だってないよ。わざわざ来てもらってごめんね』

「……来たくて来たわけじゃねぇし。カトレアが魔王に会ってみたいって言うから仕方なく……」

 ビスタはちょっと意外そうな目で俺を見ると、視線を外してぶっきらぼうに言った。

『カトレアさんも来てくれてありがとう』

「あら、カトレアでいいわよ。よろしくね、魔王さま」

 カトレアが歩み寄り、ニッコリ笑って俺の手を握った。

「アタシは絶対認めないから。クソ弱い人間を魔王様なんて呼ぶの、吐き気がする」

 ビスタが床に唾を吐いた。

『俺も魔王っていうのはどうもしっくりこなかったんだ。そうだな、良ければリュウって呼んでくれないかな?』

「その名前、すごく可愛いわぁ。リュウちゃ~ん」

「こ、こら! カトレアやめないか」

 カリオスから俺を引き離し、カトレアがギュッと抱きしめる。


 く、苦しい……。

 でも、柔らかくて気持ちい……。


「魔王のくせに変なヤツ。マジ意味わかんないし。で、リュウは何がしたいわけ? 用があるからアタシらを呼び出したんでしょ?」

 サイドテールの髪に触れながら、ビスタは不機嫌な声で尋ねた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る