第5話死刑囚、転生する⑤

 カリオスの額に触れた手がぼんやりと白く光りはじめる。やがて光はカリオスの全身を包み込んだ。

 俺の中にカリオスの知識と膨大な情報が流れ込んでくる。彼のキャパシティ、ステータス上限を進化させる。教えられなくても自然と理解できた。ゲームでキャラを限界突破させる感覚によく似ている。

 カリオスを包んでいた光が弾け、キラキラと輝きながら消えていく。


「こ、これは! 魔王様、お見事です。まさかこの私が、最上位のデーモンとなる日が来ようとは夢にも思いませんでした」

 進化を遂げたカリオスが興奮のあまり、大声で歓喜する。

『うまくできて良かったよ。昇格おめでとう!』

『私としたことが喜びのあまり取り乱し、失礼いたしました』

 俺の頭の中に、少し恥ずかしそうなカリオスの声が聞こえた。

『魔力のほうも大丈夫みたいだな』

『はい。魔王様の強大な魔力で満たされております』

『よし。早速だがカリオスに頼みたいことがあるんだ』

『なんなりとお申し付けください』

 最上位のデーモンへ進化した忠実な部下は、宙に浮く俺の下でひざまずき頭を下げた。



 

 カリオスと出会ってから1週間が経過した。俺は辺境の町の孤児院に保護され、穏やかな日々を送っていた。

 カリオスにした1つ目の依頼内容は、聖教騎士団の本拠地である王都から最も離れた孤児院に送り届けること。彼は『御意』と答えると転移魔法で一瞬にして辺境の町まで転移し、孤児院の入り口に俺を置いてくれた。彼は配下を護衛につけることを提案してくれたが、丁重にお断りした。心配そうに名残惜しそうに去っていくカリオスを見て、ちょっとかわいそうに思えたが、これがベストな判断である。

 

 カリオスを進化させ、魔力を付与したことにより、俺の魔力は一時的に枯渇した。おかげで俺を狙う聖教騎士団は、完全に魔王の気配を見失った。

 カリオスを進化させた時に得た情報から、魔力の制御方法も学ぶことも出来た。これで俺の魔力が回復しても、簡単に見つかることは無い。


 2つ目の依頼内容は周辺諸国の情勢について調査すること、そして3つ目がデーモン族の2トップを配下にすることである。


 7日後の夜に落ち合う約束だから、そろそろ来てもいいころなのだが……。


「えぇぇぇ! これが魔王? なにこの子、すごいカワイイわぁ」

「ぶはっ」


 突如姿を見せた黒いドレスの女が俺を抱き上げ、豊満な胸に抱き寄せた。


 く、苦しい……窒息する。


「おい、カトレヤ! 魔王様に対して失礼なっ。わきまえよ!」

「だってぇ、カワイイんだもぉん。あら、私を見て笑った。おっぱい飲みたい?」


 全然、笑えねぇよ!

 死ぬとこだったぞ。

 あ、でも、おっぱい飲みたいです。


「チッ。おいエロガキ。カトレアから離れろ」

「ぶはっ」


 派手なピンク色の髪をサイドテールにした少女が、俺の首を掴んでカトレアから引き離し、勢いよく投げ飛ばした。


「魔王様!」

 カリオスに受け止められ、俺は命拾いした。


『なあ、カリオス。この2人ってもしかして……』

『はい。デーモン族の2トップ、カトレアとビスタでございます』

 カリオスは彼女たちを紹介し、ため息をついた。

 

 

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