第4話死刑囚、転生する④

『ところで、カリオスは魔族の中でどの位置にいる?』

『位置と申しますと?』

『まあ単純に強さ、あるいは肩書とか』

 俺の質問にカリオスは少し沈黙し、やがて口を開く。

『デーモン族の中では3番手です。魔族全体となりますと、上位に入るか入らないかといったところでしょうか』


 強い部類なのだろうが微妙なニュアンスだな。謙遜しているのかもしれないし、カリオスは真面目で誠実な性格に違いない。


『ご期待に沿えず申し訳ございません』

 察したカリオスが謝罪する。

『いやいや、今後に備えて戦力を把握しておきたかっただけなんだ。ちなみに、デーモン属の2トップは配下に加わってくれるのか?』

『いえ、あの者たちにその気はございません。、私と同じ上級悪魔ではありますが、実力では到底及ばず、説得できませんでした。申し訳ございません』

『なんか俺の知らない所で、色々頑張ってくれてたんだな。ありがとな』

『もったいなきお言葉』

 カリオスが嬉しそうに笑みを見せた。


 俺はカリオスから現状の戦力を手短に説明してもらった。デーモン族以外の他種族は自身の防衛が精一杯で加勢はできない。今動けるのはカリオスの眷族と配下の悪魔のみである。

 俺を狙っている聖教騎士団の団長がカリオスより強く、総力挙げて正面からぶつかれば余裕で全滅するらしい。

 要するに俺達は劣勢で、ピンチと言うわけだ。


『聖教騎士団から逃げ回っていてもじり貧だな。なあカリオス、今の俺に出来ることってあるかな? 例えば使える魔法とかスキルとか?』

『まだ生まれて間もない魔王様が使用できる魔法は限られております。初級魔法が限度かと……』


 一応使えるんだな、魔法。そんな実感、全然なかったけど。

 しかし、俺がショボい魔法を使って戦ったところで何の意味も無い。


『例えば、カリオスを強くできないかな? バフみたいな感じの』

『私を強く、ですか? それは……』

 カリオスが聞き返してから沈黙する。

『おっ、その様子だとあるんだな。もったいぶらずに早く教えろよぉ』

 俺は少し茶化す感じで催促した。

『魔王様の固有スキルにより、眷属の進化及び魔力付与が可能ですが……』

『おおお! いいねっ。じゃ、さっそくカリオスを強くしよう!』

『なりません!』

 カリオスが今までと違う厳しい表情で拒否した。

『なぜに?』

『完全体でない魔王様には負担が大きすぎます。命の危険がございます! 仮に成功したとしても魔王様は魔力を失い、回復するまでに10年以上の歳月を要します』

『魔力を失う? 好都合じゃないか。聖教騎士団が俺を見失うことになる。ここで逃げても見つかるのは時間の問題じゃないか? リスクを背負う価値は十分あるさ!』

『……わかりました。魔王様を信じます。どうぞ私の額に手を触れてください』

 カリオスに言われた通り、俺は彼の額に小さな手を伸ばした。

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