第2話死刑囚、転生する②
数日が経過したが、いまだに俺は売れ残っていた。他の赤ん坊はすぐに買い手がついたと言うのに、俺を抱き上げる客はそろいもそろって眉をひそめ、挙句の果てに首を横に振る始末。
そんなに俺は可愛くないのか?
生前、身長は低かったが容姿にそこそこの自信があった俺は正直ショックを受けた。そこそこの容姿のおかげで男女問わず騙しやすかったのは言うまでもない。詐欺において、人の第一印象は重要だ。部下たちがそろいもそろって強面ばかりで苦労したのも今となっては笑い話だ。
「ねぇ、アンタ。こいつどうにかしてよっ。気味が悪いったらありゃしない」
甲高い声をまくしたて、人買いの男を引っ張りながら女が部屋に入って来た。
この女は赤ん坊の世話役であり、人買いの妻である。
俺を嫌っているこの女は、俺に対してことあるごとに罵声を浴びせてくる。ここまで女に嫌われるのは初めての体験だ。やはり容姿が悪いのか……。
「どうにかって言ってもなぁ……」
人買いの男が困った表情で俺の顔を覗き込む。
「こいつ、気持ち悪いのよ。笑いも泣きもしない。ずっと無表情のまま」
「泣かれるより、静かでいいじゃないか。そのうち買い手もつくさ」
「目が不気味なのよ。子供の目じゃないっ。すべて見透かしてるみたいな。お客だって同じこと言ってたわ!」
女が人買いの男に詰め寄り両手を握った。
「わ、分かったから。少し落ち着きなさい」
「お願い! こいつを早く処分してっ」
おいおい!
純真無垢な赤ん坊を処分しろとは物騒な。
俺でさえ、子供を殺したことはまだ無いぞ。
「ああ、分かった。明日にでも知り合いの奴隷商に交渉してみよう。赤ん坊を買い取ってくれるかは分からないが」
「タダでいいから絶対引き取ってもらって! それがダメなら捨ててきて!」
女は言いながら俺をにらみつけた。
なんて怖い目だ。
人を殺すヤツってこういう目をしてるんだな。
そういや、かつての部下たちもこんな目をしてたっけ。
「捨てるのは、ちょっとなぁ。買い取った金が無駄に――」
話している途中で、人買いの男が突如青い炎に包まれた。目の前で焼き焦げていく男を見た女がパニックに陥り発狂する。
叫び声を上げる女も青い業火に包まれ、2人は瞬く間にチリと化した。
一体何が起こった!?
状況が呑み込めないまま、体の自由がきかない俺は可能な限りあたりを見回した。
『魔王様、お迎えにあがりました』
俺の頭の中で静かな声が聞こえた。それと同時に俺の体が宙に浮き、床にひざまずく長髪の男の姿が見えた。
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