死刑囚転生~異世界征服の野望を抱く~

パイ吉

第1話死刑囚、転生する①

 死後の世界なんてものを俺はこれっぽちも信じちゃいなかった。なのに死刑判決が言い渡されたとき、『あ~、こりゃ地獄行き確定だわ』と不意に心の中でつぶやいた。死に直面したときふと浮かんだ矛盾した思考。だから俺はこう考えた。死後の世界は実在して、遺伝子レベルでそのかすかな情報が脳内に組み込まれてるんじゃないか? 


 そして死刑執行により、俺は35年の人生に幕を下ろした……はずだった。


 俺が目を開けると、雲一つない青い空が広がっていた。到底地獄の景色には似ても似つかない。


 まあ、一度も地獄に行ったこと無いから知らねぇが……。


 体を起こそうとしたがうまく動けない。なんとか両手を伸ばしてみる。


 な、なんじゃこりゃ!


 俺の両手は小さな赤ん坊の手になっていた。自分の身に何が起こったのか全く理解できない。冷静になろうとすればするほど混乱してくる。


 もしかして、俺は生まれ変わったのか?

 人って死んですぐ生まれ変わるものなのか?

 いやいや、そもそも転生なんてありえない。俺は神も仏も信じちゃいないし、死後の世界だって……ま、信じる信じないなんて無意味か。まずはこの状況を受け入れる。そして分析する。俺が生きてるのか死んでるのか、ここがどこなのか、見極めたうえで決めりゃいい。


 

 赤ん坊の姿と化した俺を拾ったのは小汚い中年男だった。中年男は俺を人買いらしき人物に売り飛ばし、その日のうちに姿を消した。人身売買は俺もやっていたから、すぐに察しがついた。

 俺を拾った中年男、そして人買いの男の身なりは日本のものではない。それどころか現代のものでもなかった。まるで中世ヨーロッパ風の衣装を身にまとい、聞き覚えの無い言語を話していた。知らないはずの言語なのに、俺は話の内容をしっかり理解していることに驚いていた。まるで脳内に同時通訳アプリでもインストールされているかのようだ。

 客や人買いの男の会話から、ある程度の情報収集ができた。


 どうやら、ここは死後の世界ではないらしい。信じられないが俺の生きていた世界とは全く別物、別世界という可能性がかなり高い。

 客と人買いの男の会話に出てきたフレーズは、『国王』『ギルド』『冒険者』『モンスター』といったまるでゲームやアニメに出てくるようなものばかりだった。


 これまでの情報から一つの仮説を立てる。

 俺は異世界に転生したんじゃないか?

 

 それはそれで面白い。人生一からやり直し。しかも親無し、人買いに売られて赤ん坊の俺、絶賛売り出し中。臓器目当ての客に変われたら一発アウトのいきなりピンチ。人生ってホント、ギャンブルだわ。

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