第4話
『一旦確認させて欲しいんだけど…俺から千斗星を取り上げようとしてる訳ではないんだな?』
「は!?そういう話はしてないだろう?」
『早く質問に答えてくれ』
「ああ、千影が許してくれるのであればどんな形でもいいから一緒に育てていきたいと思ってる」
『っ、はぁ~~』
マジかよ
一気に脱力して千斗星を抱えながら椅子から床へとへたり込む
「千影!!?」
ガタガタと椅子を動かして慌てて飛んでくる
なんだよ、全部俺の勘違いで空回ってただけか…?
『ッズ、なぁ陽斗』
安心したら勝手に流れてきた涙
今までこいつの前で泣いたことなんてないからギョッとしてどうしたらいいのかとオロオロしている
「ぁ、ちーちゃん俺どうしたらいい?分かんないけど触れたらダメか?」
迷子みたいな表情の反応の陽斗が面白かった
だから少し余裕ができた頭でさっき言われた内容を思い出したんだけど、ちょっとムカついたから意地悪もしたくてその言葉に反応せずにおもいを伝えようと思う
『俺ね10年間好きだった人がいたんだよ』
「っ、え?」
真っ直ぐに目を見つめてそう伝えた
今度はこいつも泣き出しそうだ
『別に報われなくてもいい、そう思ってた。傍にいるだけでも十分幸せだったから、そのおもいは伝えたことなかったしそもそも伝える気が俺にはなかった』
「...」
『だけどね俺の欲張りな心がね、ふいにひょっこりとでできたからもう大変。どうしても恋心を終わらせる思い出が欲しくなっちゃって。どうせなら俺のこのカラダを使おうって』
「...ぇ」
『すっごく大切にしてたわけではないんだけどね?一生に一度のこのハジメテの時に、大好きな人の子どもが出来たらいいな。でもそいつ優しいやつらしいから避妊具でもつけられたら俺の計画が台無しになっちゃう。だから卑怯だけど俺、小細工までしたんだよ?
でもさこういう時男だから疑われなくてすんでよかったんだけど、ね?そんな小細工なんていらないくらい、その人は中にいっぱい注いでくれたんだ
あの時は嬉しかったな。
ああ、これで確率は上がったなって。
今後この人とは会うつもりもないから最初で最後だと思ってたけど、まさかあんなにだき潰されるとは思わなかったな。何日間か腰がだるくてアレは大誤算だった……
ね、陽斗。
俺さ自惚れてもいいの、か?
俺の心の奥底で考えないようにしていた燻ぶり続けてるこの恋心がまた欲張りになってる。大好きな人との子どもが出来てそれで充分だったはずなのに。
責任、とってくれる?」
陽斗。俺はこれ以上を望んでいいのか?
「ぅ、ぁちーちゃん。夢じゃない、よな?夢だったらこのまま覚めないでくれよ。
俺が責任とってもいいって言ってくれた?
言質はとったからもう絶対に、離してやることなんてないと思ってくれよ?何度逃げたって絶対に捕まえてやる
色々と順序が入れ替わってしまったけれど。
千影、俺と結婚してパートナーになってください」
『、、ッズはい。』
強く強くギュッと抱きしめられる
「ぱぁぱ、ぎゅー?
…あぇ?いたいいたいのー?ッグス、うわーん ぱぁぱ、ぱぁぱ!」
抱きしめられたせいで近くなった距離に千斗星の顔があって、流れる涙を見て誘発されてしまったのか突然ウルウルなお目目で泣き出してしまった
それに2人して驚いて涙は引っ込んでしまう
涙の膜が張った目で見つめ合い、そしてどちらからともなく微笑んだ
『ちーちゃん、あのね。今は理解が難しいかもしれないけれどぱぱたちのお話聞いてくれる?』
「うん!」
『いいお返事だね?』
それからは陽斗のことをお父さんだよと紹介すると、ご機嫌な千斗星がギュッと陽斗にくっついていた
千斗星のお腹がなったので遅めの朝食をとり、善は急げということで泣いて腫れぼったい状態のその目を隠す暇もなくその日のうちに婚姻届を提出しにいった
よく面倒を見てくれた近所の役所勤めの人が受理してくれた為、我が子のようによかったねぇと俺を祝福してくれた
そうして千斗星が昼寝をしている間に、たくさんのことを話した
会わなかったこの数年のこと
そして恋心を抱いていたあの頃のこと
もう二度とすれ違いが起こらないように。そして幸せになれるように。
その時のお話はまた今度。
今はただこの幸せな空間に佇んでいたい
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