第3話
あっという間に、家を出て行く前日の夜となる
俺にとって勝手に決めた最後の日であって、結局ここを出て行くことということを最後まであいつに伝えることはなかった
いつもと変わらない行動をしたけれど、これから俺の今後の人生を左右するような運命の瞬間が訪れることとなる
ゆっくりと全身隈なく愛られ、触っていないところなんてないというくらいドロドロに溶かされて高められていくカラダ
それはものすごく丁寧すぎるくらいの愛撫で自分のとは違う、立派なものでカラダを開かれていく感覚は凄まじかった
好きな人と繋がるって、カラダだけじゃなく心が満たされるんだな
これから先陽斗以外と繋がる気もないので、これが最初で最後の経験として深く記憶に残るだろうと思う
そうやって余韻に浸ろうとしていると、何の前触れもなく何故か突然揺さぶられ始めるカラダ。
俺初心者なんだけど!?とかお前は優しくて気遣いができることで有名なんじゃなかったのか、と思ったがそんなこと口にする余裕なんて全くなくて記憶の淵に落ちていく
それからは何度も何度も、意識を手放しかける
意識を手放さないのは俺の意地でもあった、一秒たりともこの幸せだと思えるひとときは忘れたくない。
どれくらい時間が経ったのかわからないが、やっと陽斗は満足したらしく一緒になってベットへと寝転がった
すると急に眠気が襲ってくる
無意識に陽斗へと擦り寄るように近寄ると、頭を撫でられるような感覚があった
みじろぎするとまだ入ってるような感覚
そして'ナニカ'が出て行く感覚もあった
あれ?そういや途中から避妊具つけてたっけ?
まあいっか、結果的には小細工したやつよりも着実に確率は上がるだろうしと考えながら意識を手放した
ふっと意識を取り戻し、まだ起きていない隣の体温を感じ目が開いていないことを確認したら安心とした
でもまさかここまで足腰がガクガクになるとは思ってもみなかった。こんなに抱き潰される予定はなかった為、というかそこまで抱き潰されたなんて噂はなかったはずだ。所詮それは噂にすぎなかったんだと思い直した。
寝すぎて計画が失敗しないように気合いで立ち上がる。その時に見えた陽斗の目の下の隈。
そっと指の腹を滑らせて、仕事で疲れていたのに申し訳ないことをしたなと少し反省した
立ち上がった時に感じた、どろりとした感触
その感覚に嬉しくなる。
子どもができてくれたらいいなと思いながら、少ない荷物を持って部屋を出たのであった
それからというもの。足がついてしまうスマホは解約し新しく買い替えた。引っ越し先は誰にも伝えていない
もちろん親にも。元気でやっているとだけは伝えて、返信は見ずに解約してしまった。
男体妊娠した時に見てくれる病院ももちろん陽斗は知らない為、誰にも知られず無事に千斗星chitoseを生むことができた
名前はどうせもうバレないだろうとタカをくくって、陽斗から一文字拝借してしまった
それに俺の名前の一文字と生まれた日の夜に見た星が綺麗だったから、組み合わせて"ちとせ"と名付けた
そこからは本当に順調だった。
少し不便だが都会の喧騒から離れて目の前に綺麗な海が見える素敵な場所へと引っ越した
大きくなったらこの子を連れて、たくさん遊ぼうと考えながら。
幸い近所の方にも恵まれて、いい距離感で俺と我が子の生活を見守ってくれている
時には助けていただいたりもして本当に感謝でしかない
そうしてすくすくと順調に育ってくれた愛しの我が子
正直こんなに早く見つかるとは思っていなかった。さて貴方は何を俺に求めている?
「千影。いくつか質問をしていくから答えてほしい、但し答えたくなかったら答えなくていい。だがお願いだから、嘘だけは絶対に言わないと約束してほしい」
その言葉にコクリ、と頷いた
「まずは…俺は千影が抱いているその子、千斗星が俺と千影の子どもだと確信している、違うか?」
『……。違わない、この子は正真正銘俺とお前の子だよ』
思わずギュッと力を入れて目を伏せる
誤魔化すことも出来た。もしかしたら陽斗もそこで引いてくれたかもしれないけれど、言われた手前ウソはつきたくなかった
何よりこの子の目の前でこの子の生まれに嘘をつきたくなかった
「ぱぁ、ぱ?」
本当に聡い子だ、大丈夫だよという意味を込めて頭をそっと撫でる
「そうか!…それなら俺もその子と一緒に暮らしたいと思うんだがどうだろうか?」
っ、やっぱりそうなるよな。
俺にとって可愛い我が子であるように、貴方にとってもこの子は我が子に違いないもんな。
わかっていたけれど胸がギュッと鷲掴みされたように苦しくなる
まだ無理矢理奪われるよりかはこうやって質問してくれてるだけやっぱりこいつは優しい
『.....』
その想いに応えなきゃいけないのはわかってる
でも、でも………。
嫌だ。離れたくないよ。
「あぁ。やはりダメか、そうだよな。ならここに通うことは許してくれるか?」
『ッ、…ぇ?』
「うーん、通うことも難しいとなると電話とかはどうだろうか、それもダメなら手紙とかになるわけだが。」
『....』
急に目の前の人物の言っていることが、何一つ理解できなくなった
あんなにも長いこと一緒にいたから大抵のことはわかっていたつもりだったけど。今の言葉はなんなんだ?
通う?電話?手紙?
そんないじらしいことまでして、貴方はこの子と過ごしたい…?連れて行こうとしている…?
「千影?」
『どうしてもこの子を連れて行くつもり?』
「ああ、ゆくゆくはそうしたいと思っている」
『貴方は』
「なぁ、千影。」
『何?』
「俺のことを名前で呼びたくないくらい、嫌いになった?まぁそうだよな、ハハッ…あの日気まぐれだったとしても千影から誘われたことが嬉しくて舞い上がってた。なんで許可してくれたのか理由はわかんなかったけど嘘じゃないよななんて正直柄にもなく緊張して、言われた日からずっと上手いこと眠れない日々が続いてた。それであんな童貞みたいに無茶苦茶にだき潰してカッコ悪りぃよな、幻滅した?その上許可も取らずに勝手に中出しまでして処理せずに寝落ちるなんていくら千影が……ッ慣れてるからといってもあれはナイよな。流石に嫌われて家も出てかれるよなぁ、そんなカッコ悪い俺の顔なんて見たくないわな
でもあの時はこの機会を失えば、もう二度と千影を抱くチャンスは巡ってこないとおもった
そう思ったら俺のをこの中に何度も何度も注ぎ込んで、何かの間違いが起こって既成事実をつくることが出来たらいいのに。って夢見てどうにかしてお前を繋ぎ止めておく方法がないのかって考えてた。
本当に千影がそういう体質だったとは知らなかったとはいえ、望まない妊娠までさせて幻滅までしてる嫌いなやつの子どもを産まざるをえない状況にさせた。すまない けど後悔はしていない
千影には不本意だとしても俺は好きなやつとの子どもがいたって知って、めちゃくちゃ嬉しかったんだよ
お前を繋ぎ止めておくことは出来なかったけれど、これでどうにか許」
『ちょちょ、ちょっと待って?』
「うん」
フリーズしていた意識が戻ってきた
まわらない頭で今言われた言葉たちを理解できるように反芻する
は?既成事実とか言ってたか?それと何、好きなやつ?俺のこと?それなら確認しなければならないことがある
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