第20話 予定

 朝、いつものようにアラームが鳴る前に起床した俺は、身体が鉛のように重怠く感じていた。


――はぁ……結局連絡来なかった……。


 と思いながらスマホを見ると、うつみんからのメッセが届いていることに気付いた。通知を見た瞬間、眠気も身体の重怠さも吹っ飛んだ俺は、慌ててメッセアプリを開いた。


『夜中にごめん(-"-) 29日と30日が今のところ休み!』


 送信された時間を見て俺は驚いた。


――夜中の3時に連絡来てる……。ん?そんな時間まで起きてたって事……?!


 色々と思うことはあるが、俺はとりあえず籠った空気を入れ替えるために窓を開けた。

 夏間近ではあるものの、ひんやりとした空気が心地よく、しばらく窓の外を眺めていると、見知った顔が目に入って来た。


――あれって……うつみんじゃん!


 俺は居ても立ってもいられず、部屋を飛び出していた。


 玄関の扉を開けると、ちょうど同じようなタイミングでうつみんがエレベーターホールから歩いてきた。


「おっ、和くんじゃん。おはよ!」

「……おはよぅ」

「ん?和くん、起きたてでしょ。寝ぐせがかわいいよ!」

「うおっ!マジか……」


 照れながら髪の毛を整えていると、俺はあることに気付いた。


「うつみん……走ってんの?」


 速乾性の半袖に速乾性のパンツ、足元はランニングに最適なシューズを身に着けていることから俺が尋ねると、うつみんは笑顔で答えた。


「そうだよ~毎日は難しいんだけど、走れるときに走ってる。体力つけとかないと過酷勤務だから乗り切れないでしょ!」

「へぇ……なんか意外」

「そう?……って、立ち話してる余裕ないぞ!和くん、またね!」


 スマホに表示された時間を見たうつみんは、急いで俺の前を通り過ぎ家に入って行った。うつみんの後ろ姿を見届けた俺も、同じように家へと戻った。洗面所で顔を洗い、着替え終えた俺がリビングへ行く頃には、祐希も眠そうではあるものの食卓についていた。


「……和、おはよぉ」

「おはよ、ってまだ眠そうやん」

「試験勉強してたら寝るの遅くなってん……ふわぁ……マジで眠い」

「祐の学校、もうじき試験か」

「……うん。試験結果でクラス分けがどうとか言うてた」

「へぇ……母ちゃん、ヨーグルト欲しい」

「欲しいんやったら自分で出しなさい」


 と言いながらも、冷蔵庫から出してくれる母親に心の中で感謝しつつ、手にしたヨーグルトを俺はサラダにかけた。


「うわっ……出たよ……サラダのヨーグルトがけ……よう食べれんな」

「旨いで!祐もするか?」

「せぇへん!」

「朝からうつみんと会ったで」

「なんか楽しそうな声は聞こえてた」

「たまにジョギングしてはるねんて」

「ふぅん……そうなんや」

「昨日、俺いつ休みか聞いてん。返事帰って来たの夜中の3時やで!」

「なんや不規則甚だしいなぁ」

「んな!俺も思った」


 その後も朝食を食べつつ祐希と話し込んでいると、母親の喝が合間合間で入って来た。いつも通りの賑やかな食卓を囲んでいると、いつのまにか時間は過ぎ、祐希が自宅を出るころには遅刻ギリギリラインとなっていた。


 徒歩で通学できる俺は少しだけ余裕があったため、メッセアプリでうつみんへの連絡内容を打ち込んでいた。


――俺的には30日の金曜日がいいんだけど……それでもええかなぁ。休みの日にはしっかり休んで欲しい気持ちもあるけど、家に行きたいという俺の欲もある……。どないしよ……。


 少しだけ考えた後、俺はうつみんへ返事を送った。ものの数秒後、うつみんから返事が帰って来た。


chikae:『いいよ!家にいるからピンポン押してな!』

KAZU:『時間はいつがいいとかあるん?』

chikae:『別にないよ(*'ω'*) いつでもどうぞ~』

KAZU:『りょ!学校終わったらまた連絡する』

chikae:『りょ!』


――昨日よりも既読からの返信が早いってことは、もともとは即レスする人なんやろなぁ。


 朝起きたときに感じた気怠さはなく、俺は意気揚々と家を出た。


 





 

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