第43話 Volvox


魔法都市に突如として現れたボルボックス。ボルボックスはミジンコと同じ浮遊生物プランクトンの一種だ。

しかしボルボックスはミジンコとは大きく違う。

ミジンコは一匹で活動しているのに対してボルボックスは群体を形成する大型浮遊生物プランクトンであるため何万もの単細胞生物が合体している生物なのだ。



俺は今城壁の上で遠くで動いているボルボックスを眺めている。なかなかにデカい。



「クソ、なんで急にボルボックスが出てくるんだ!?」


「知るかよ、にしても最近ミドリムシが多いと思ったがアイツのせいか」



あちらこちらからボルボックスに対してのクレームが入る。俺もクレームを入れたい。いきなり出てくんな。




ボルボックスは見つけたら討伐が推奨される魔物だ。

なぜならボルボックスはポンポンポンポン浮遊生物プランクトンを増やすからだ。

これが非常に厄介でボルボックスはたとえ一匹だけでも体内で子ボルと孫ボルという次世代のボルを育てる事ができドンドン増殖する。子ボルと孫ボルがある程度育ったら、これらを育てていた親ボルは外の世界へと旅立つ。

つまりどんどんミドリムシやゾウリムシなどの敵が勝手に増えていくのだ。

なんて迷惑な。俺達を苦しめるためにできたようなシステムだ。



それとボルボックス自体は他の浮遊生物プランクトンに比べてあまり攻撃性はない。せいぜい時々光って失明させる程の光量で目を焼いてくることぐらいだ。あとはその巨体で押しつぶすことぐらい。

ミジンコ程の凶悪さはない。しかしその生命力は圧倒的だ。ミジンコを凌ぐとも言われている。

なんてったって数万もの浮遊生物プランクトンが集まってできた浮遊生物プランクトンである。生命力が高いのは当たり前と言えるだろう。





俺がボルボックスを眺めていると前にいる黒髪黒目の男がブツブツつぶやいているのが聞こえた。。



「―――プランクトンが強い魔物ってどう考えてもおかしくね。プランクトンって、なんかこう小さくて顕微鏡で見るようなもんだろ。それに何が悲しくて最強の魔物がミジンコなんだよ。普通ドラゴンとかリヴァイアサンとかだろ」


浮遊生物プランクトンが存在していることに対して文句を言っているな。


まぁそれはしょうがない。あいつら、ふざけた見た目に反して強すぎるのだ。



今目の前にいるボルボックスだってキモ巨大化したケサランパサランのようだ。………さすがにアレと比べるのはケサランパサランに失礼か。



はぁ、とりあえず俺達はあの徐々にエリオールに近づいてきているボルボックスをどうにかするのが先決だろう。


__________________



なかなか命令が出ないため、動けない俺達。ボルボックスはゆっくりだが徐々に近づいてきている。


近くに先程外で話していたあの魔術師を見つけたため話しかける。


「なかなか命令が来ないが大丈夫なのか」


「うん?あぁまたお前か。恐らくだが上が混乱してるんだろうよ。さっきより魔術師が減ってるだろ」


言われてみれば、たしかに減ってるな。まさか


「逃げたやつがいるってことだな。まさか敵前逃亡をするとは。俺もしようかな」


「しれっと逃げようとすんなよ。あとそうじゃなくてだな、南の方にも魔王軍が出たからその討伐に向かってるんだよ。んで、上は先に魔王軍討伐してからボルボックスを倒すってわけ、多分」


多分って、すごく不安になるのだが。本当に大丈夫なのか。

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