第40話 兄よりも優秀な妹などいない!


 俺は意識が朦朧とするでゆっくりと目を開ける。


 確か俺は魔法学校に来て、寮に入って妹の部屋を訪れ………決闘?

 あっ決闘。決闘をしたんだった。そして俺は最終的に油断して背後を取られ杖で殴られて地面に叩きつけられたんだった。


 あの威力はさすがにおかしいから魔法で強化していたのだろう。

 ちっ、やられた。


「あっ、目が覚めた?お兄ちゃん」


 目の前に俺の顔を覗き込む妹がいた。

 えっ、あっここ寮か。周りの確認してなかった。俺があのとき『空間保管庫ストレージ』から出したベッドで俺は寝ているようだ。

 てっきり地面に放り投げられているものかと思っていた。


「ああ、てっきり決闘に負けたから外に放り出されているものかと思ってたが………」


「うん、外に放り出そうと思ったんだけどね。お兄ちゃんを引きずっている途中に出会った友達に『それは可愛そうじゃない』って言われて連れてきたの」


 へぇそうか。優しいなその友達。今度ありがとうって言っとこう。


 あと俺を引きずって持って行ってたのか。よく兄にそんなことができるな。妹は鬼だ。


「あっそうそう校長にお兄ちゃんのこと伝えたら別に寮を使ってもいいってさ」


「マジ?」


 妹、実は天使だった件について。


「あっでも寮を使っていい代わりにもしかしたら働く可能性もあるってさ」



 …………まぁそんなもんだよな、普通。



 _____________________




 あのあと俺は自分の部屋を紹介されぐっすりと寝た翌日、俺は妹のところへ訪れていた。


「朝からなんで来てんの、お兄ちゃん」


「妹がちゃんと先生しているかどうかと、この学校のスケジュールを知りたい」


「はぁ、私もう大人だよ。それに私もうお兄ちゃんとは違って一等級魔術師だから――――」




 はっ?えっ?一等級魔術師?妹が?ウソ、ないない、そんなわけないじゃないか。ははははは、ウソに決まってる。


「一等級魔術師?」


 思わず上ずった声が出てしまう。


「あれ、言ってなかったっけ。私すでに一等級魔術師だよ」


 俺は手が震え、持っていたティーカップを落としてしまう。それを急いで拾う妹。


 ば、馬鹿な。ウソだろ。俺でも二等級魔術師だっていうのに。

 い、いやでも俺が最後に昇格試験を受けたのは魔術学院と魔術師ギルドの合同検定のとき。つまり4年前だ。今受ければ俺でも――――


「魔法都市に来てからすぐ受けて資格を取ったから知らなくて当然か。お兄ちゃんとは4年も会ってないもんね」


 来てすぐなら15、16歳には一等級魔術師の資格を取ってたってこと?

 えっ、俺より優秀じゃん。ウソ、だろ。


「―――、―――――」


 妹がなにか言っているが俺の耳には届かない。

 妹が兄である俺よりも優秀だなんてありえない。


『兄よりも優秀な弟などいない!』という本を書いたロース・ペック子爵がその根拠だ。彼は一度も弟にあやとり対決だけは負けたことがないらしい。

 ウソに決まって―――


 バシンっ


「いたっ」


「ねぇ聞いてる?私これから仕事何だけど来るの?来ないの?」


「行きます」


「はい、ならさっさと準備して」


「へーい」



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 俺は妹の授業に参加できるらしい。こうなることを見越して昨日のうちに妹が既に許可を貰っていたのだ。できる妹だ。



 そして今俺は妹の授業を聞いている。周りは圧倒的に若い子が多いがおっさんやおばあちゃんもいる。年齢層は広い。さすが魔法学校、才能があったらどんな人でも受け入れるんだな。



「―――無属性魔法又は無所属魔法とも言いますがこれらは他の魔法とは全く違います。これらの魔法の殆どは論理的に創られておらず偶然の産物です。有名なのは『サビをキレイにとる魔法ゼレスティーネ』です。これはもともととある高名な魔法使いが新しい空間魔法を創ろうとしたときに創られた魔法です。何が理由でこのような全く別の魔法がいきなりできるかは解明されていません。まぁそもそも魔法というのは―――」



サビをキレイにとる魔法ゼレスティーネ』か。懐かしいな。俺も一応この魔法を習得している。ノリで買ったはいいものの全く使っていないミスリルの剣のために習得したのだ。


 名称が無駄にかっこいい魔法TOP10にも入ってたな。『カビをキレイにとる魔法』は『カビキラー』なのに。これがカとサの違いか。



 ______________________


 次話の更新遅れます。すみません。

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