第39話 兄妹喧嘩


 俺は「決闘だ」と言ったものの決闘場所を知らない。

 というわけで前を歩いている妹についていく。



 決闘というのは互いになにかを賭けて戦い、勝ったほうは相手が賭けたものを貰ったり行使する権利が貰える。

 俺が魔術学院にいたときも決闘システムがあり、大体が「決闘だ」といい手袋を投げそれを拾うと決闘が成立する。

 とはいっても別に手袋を投げる必要はない。口約束でもいいし書類にサインしてこれから決闘しまーす、というのでもいい。

 それでも大体の人が手袋を投げるのはそっちの方がかっこいいからだ。






 しばらく歩いていると訓練場らしきものが見えてきた。


「今からいきなり決闘するための場所なんてもらえないから訓練場で決闘するわ」


「ああ、分かった」



 訓練場に入っていく。人はまばらにおり、あまりいない感じだ。

 空いているスペースに行く。妹と少し距離をとり、向かい合う。


「この石ころが落ちたとき開始ね」


 という妹。いつの間にか石を持っているが多分魔法で生み出したのだろう。


 ぽーいと石を投げる妹。石が曲線を描いて落ちていき


 コン


 決闘が始まった。



 _______________________




「『斬首ディキャパテイション』」



「『防御プロテクション』」


 俺は防御魔法を展開し、やってくる魔法に備える。『防御プロテクション』は防御をするための魔法であり、殺傷能力はない。

 にしても魔法のセレクトに殺意ありすぎだろ。



 カァァァン



 妹が放ってきた魔法から身を守る。からの


「『竜巻トルネード』」


 魔法を放つ。そして俺は魔力を身体に巡らし



「『集中コンセントレーション』」

「『透過インビジブル』」

「『感覚鋭化ハイテンドセンス』」

「『消音ミュート』」



 で自らを強化し妹の方へ近づく。『竜巻トルネード』は目眩ましだ。

 風で視界を悪くし、注意を魔法に向ける。

 そして俺は妹に一気に近づき攻撃。完璧だ。


 魔法使いの弱点は近接戦闘が弱いことだ。

 俺も魔法使いだがこう見えて近接戦闘にはそこそこ自信がある。

 伊達に魔物や人を殴ってきてないのである。




 俺は素早く妹に近づき、手を伸ばしてそのまま―――



「ば〜か」



 俺の足元が光輝き炎が


「『火炎耐性ファイアレジスト』」


 吹き出た。





「あっつ、あつ、あつぅぅぅぅ」


 結構熱い。抵抗レジストしたはずなんだけどな。


 妹の方を見るとこちらを見て笑っている。


「―――ハハハハ、アハハ、アハッ、あ〜〜〜めっちゃ笑った」


 えっと、コレはギルティですね、はい。魔法罠トラップとか卑怯者のすることじゃん。自分にかけていた魔法の効果も切れてるし。

 ただやられただけという結果。





 ………少し本気でいくか。



「『飛翔フライ』」


 俺は空を飛び始める。妹は何もせずただこちらを見ているだけ。

 俺は魔法を唱える。


「『龍雷撃ドラゴニックライトニング』」


 龍の形を模した雷撃が襲いかかる。


 それにに対して妹は


「『多重障壁マルチプルバリア』」


 何枚もの障壁が生み出される。



 ほう、『多重障壁マルチプルバリア』。『龍雷撃ドラゴニックライトニングは防がてしまったか。

 だがああいうのは数で攻めればいい。


「『炎弾ファイアバレッド』」


 妹が張った複数の障壁に魔法を打ち込み続ける。






 少し時間がたっただろうか。俺は既に魔法を止めていて、土煙が晴れるのを待っている。この間も警戒は緩めない。


 土煙が晴れたそこには妹が立っていた。

 俺はまたもや魔法を撃つ準備をする。


 がなんかおかしい。妹はなんの魔法も行使しようとしない。

 さすがにおかしいため、一旦魔法を中断し辺りに気をつける。




 …………魔力探知を全開にする。辺りに反応がないか調べる。

 あれは恐らく幻覚だ。俺が幻覚だと気づかなかったのは魔力がそこに多くあるからだ。視界が悪い中探すのには魔力探知しかない。幻覚を本物に見せるためにはいいだろう。


 しかし魔力は魔法使いにとって生命線。そんな大胆なこと妹がするとは思えないのだが…………んっ?

 後ろに違和感を感じ振り向く。


「!?『バイン―――」


「バレちゃったか。でも残念『睡眠スリープ』」


「なにゅっ」


 強烈な眠気俺を襲いが意識が一瞬なくなる。なんとか『睡眠スリープ』の抵抗レジストには成功したが妹の前で大きな隙を晒している。マズい。やられ――――


 ガンッ


「うっ」


 妹に頭を杖でぶっ叩かれる。俺の脳に衝撃が伝わる。視界が揺れ、まともな思考ができなくなる。『飛翔フライ』の維持ができなくなり重力に従って落ちていく。上を見るとこちらを見てくる妹がいた。


 最後にひと泡吹かせようと魔力を練る。


「『次元断ディメンションシャ―――」


「『重力グラビティ』」


 は?


 ゴンッ



 俺は加速し勢いよく地面とぶつかる。俺の意識はそこで途絶えた。

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