第31話 寒い

いろいろあったがエスタメルに着いた。

今は朝だが門は既に開いているようだ。

門番に身分証明書である冒険者プレートを見せて街に入る。


けっこう北に来たな。20年以上王都にいたため分かるが少し寒い。都会っ子だったせいかもしれん。門番にいい宿屋を教えてもらったためそれにまず向かおう。



周りを確認すると王都で着ているような普段着ばかりだ。

これは慣れかもしれんな。今のうちに慣れておこう。



お高めの宿屋で部屋をとりまた外へ出る。

ファルは家に置いてきた。餌は与えておいたから大丈夫。今頃大喜びで食べているだろう。


とりあえず宿屋でなにか買おうと見て回ることにした。



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俺は片手に異界の食べ物温泉まんじゅうを食べていた。このまんじゅうのキャッチコピーが『清浄の証がつきし漆黒を包む白き羽衣』という時点で真面目に商売する気がないのは分かった。

なんだよ『清浄の証がつきし漆黒を包む白き羽衣』って。しかもこれって何ですかって聞いたら普通に、温泉まんじゅうですよと返されたし。

元からきちんと書いとけよ。と思いながら温泉まんじゅうを食べる。うまうま。



この街をブラブラ歩いていると『歴史資料館』という立派な建物を見つけた。

なんか面白そう。入ってみるか。





「500エルです」


「どうぞ」


普通にお金を取られた。

まぁさほど高くなかったからいいけれども。


この資料館にはこの街の歴史について書かれてあるらしい。

ところどころで金をかけているのが分かる。魔導カメラで取ったであろう写真があるし、紙だって上質な紙が使われている。紙に書いてあることを読んでみる。





ふむ、この街はもともと小さな名もなき村で国境ギリギリであったため人もなかなか来ず大変だったと。

しかし当時の村長エスタメルがお風呂上がりの牛乳を飲んでいたら『温泉ほいほい魔法』と『温泉こいこい魔法』というの魔法をひらめいてしまった。

それらの魔法は温泉を探す魔法と温泉を掘り出す魔法であり、その魔法で温泉をつくり、それで温泉がなかった王国で大ウケしたと。

そしてこんな辺境にも人が往来し発展していき、今のエスタメルができたということらしい。


当時の村長は8等級魔術師だったみたいだ。8等級といえばようやく魔法使いを名乗っていいレベルである。









感想を一つ言わせてほしい……魔法使いなめんな。



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あのあと資料館の中を見て回ったがけっこう面白かった。

特に魔王軍温泉撃退事件。あれは読んでいる俺も爽快だった。ざまぁ、魔王。


資料館を出た俺はすっかり昼が過ぎていた。1度宿屋に戻って昼食を食べようと思い帰路につく。


よし宿屋が見えてきたな。午後は読書でもしてゆったり過ごそう。

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