第23話 禍々しい

 よく見たらこのドラゴン、可愛いのだがなんか禍々しい。

 3対の翼に漆黒と黄金の身体。瞳も黄金。

 てっきり天空龍の卵だから、きれいな碧色だと思ってたんだけど。


 なんか色的に邪龍っぽくね。


 と思っているとその黄金の瞳でこちらを見つめてくる。


「クェェ」


 かわいい。気の所為。気の所為だよな。こんなに可愛いのに邪龍とかありえないよな。この子が邪龍だったら世の中のドラゴンのほとんどが邪龍だわ。


 と思っていたら、ご飯を食べ終わったドラゴンは


「クェ」


 といい漆黒の炎を吐いた。

 やっぱり邪龍じゃn――


「クゥゥゥ」


 といいこちらを見つめ、首をかしげるドラゴン。


 うん、気の所為だな。



 にしてもこの子の名前どうしよう。

 シトレ、ゼロ、ファスタ、ケモロン、パモリル、ペメペメ……

 駄目だ、いいのが思いつかない。


「うーん、家族にまた今度聞こうかな」



 そもそもコイツ性別はなんだ。

 持ち上げてみる。


 フムフム、レディーだな。すまない。ジェントルな俺はサッと下ろす。


 にしてもこの子のための家を買わないとな。


 また今度買いに行こう。



 _____________________



 そして現在、旅にも出ず、外にも出ず宿屋にいる俺。


 一応、今日はドラゴンを連れ実家へ向かう予定だ。

 家族にはまだドラゴンがいることを伝えていない。

 驚くに決まっている。フッ、どんな表情を見せてくれるか楽しみだぜ。



 1時間後


 俺は今実家の前で立っている。外から見ると燃えてる箇所が見つからない。外にまで達してなかったようだ。


 ガチャ


 家の中に入る。


「上級冒険者様のお帰りだーーーい」


 という。すると


「おお、お帰り。よくそんなふざけたことを言いながら帰ってこれたな」


 と俺の父、ルーバスがいう。


 俺は家を燃やしたあと氷結魔法を放ち、消火して転移でササッと帰ったのだ。


 よって家族から見れば、家を燃やした挙げ句すぐ火を消したあと帰っていった奴と思われているに違いない。


 そんなことを思っていると、リビングから母、レイラがリビングから出てくる。

 表情を見る。笑ってるように見えるが目が笑っていない。これは激怒げきおこだな。

 いつもだと殺されてる。


 しかし、今日は違う。秘密兵器ドラゴンがいる。話題を逸らすのに最適だ。


 母が口を開く。


「リライ――」


「じゃーーーん」


 なにか言われる前にバスケットの中に入れたドラゴンを被せていた布をとって両親に見せる。


「「ドラゴン!?」」


 両親は驚いた表情をする。


「とりあえず、立ってるのも何だしリビングに行かない」


 話題逸らしに成功した俺はそう提案した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る