第18話 かの厄災

 30年前の悲劇をお教えしよう。


 30年前、ルダニア王国より北、ディアルゼント帝国にて、厄災ミジンコが姿を現した。


 突如、姿を現した厄災ミジンコに人々は戸惑った。しかしずっと戸惑ってもいられない。常に事態は動くのだ。


 事態を重く見た各国と各ギルド、独立都市は厄災ミジンコ討伐に向け、各々の最高戦力を支援に向かわせた。



 各国から優秀な騎士団、冒険者ギルドからは魔物討伐のエキスパートS級冒険者、魔術師ギルドからは魔法使いの最高峰一等級魔術師、傭兵ギルドからは様々な戦場を駆け抜けた熟練の傭兵、独立都市からも実力者が帝国に集められた。


 人類は魔族との戦争をずっと続けており、その最前線の帝国が揺らいでしまうと人類全体がやばいのである。



 人々はこれならば厄災ミジンコも簡単に倒せてしまうだろうと考えた。


 しかし現実は違った。別に余裕ぶっこいていたわけではない、そうでなければあそこまでの戦力を出す必要はないのだ。



 人々にとって誤算だったのは、その大きさ。成体のミジンコは10メートルが普通だが、かの厄災ミジンコは15メートルあったのである。超大型ミジンコだ。



 ミジンコという生物の強さはその大きさに直結する。

 つまり大きいミジンコほど強いのだ。



 魔王軍幹部ならば簡単に倒せてしまうであろう戦力に厄災ミジンコはびくともしなかった。それは要塞のようであり、山のようでもあった。



 人々は絶望した。厄災ミジンコの硬さはまるでアダマンタイトのようであり、あらゆる技、魔法が弾かれ、逆にミジンコの振るうすべての攻撃があらゆる結界、防御を貫くのである。目の前にいるやつは魔王なのではないかと人々は疑った。



 しかし引くわけにはいかなかった。厄災ミジンコの進路上には帝都アルゼストがあったからである。




 人々は引かず戦った。戦いは長期に渡ったが遂にやり遂げた。

 数多の犠牲を出しながら、厄災ミジンコを討伐したのである。








 って言う内容の本『題:一つ目の厄災 著:ダフニア・キクロプス』を思い出していた。


 8メートルでも天空龍を簡単に倒せるというのに15メートルとか。



 俺がそんなことを思っている間にも作戦は組み立てられていく。

 綿密な計画だ。これが失敗してしまったらこう、これも失敗してしまったらこうというふうに何重にも計画されている。


 この場にS級冒険者は10パーティー以上おり、他にも一等級魔術師やもいる。



 勇者というのはイケメンで優秀で強く人格も伴っている、いわゆるハイスペック人間で、魔王を倒すという無理無茶無謀な目標を掲げ、国に援助してもらっている。


 今、この場にいるのは『殲滅の勇者』だ。名前は知らん。


 勇者は単独で魔王軍幹部と渡り合えるぐらいに強い。ドラゴンなんて一捻りだろう。ミジンコ相手だとどうなるか分からんけど。



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本日も昨日、一昨日と続き3話投稿です。

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