第37話 屋台飯と木漏れ日亭でのやり取り
ヴァルハラの特訓を受けて教会から一旦家に戻る為に北の大通りに向かおうとすると、クッキーとミャアは動かず、
〘あるじ、おなかすいた。〙
〘ご主人、屋台行くにゃ、肉にゃ~。〙
〘やたい、いく。〙
と言って従魔達は西の大通りに走り出してしまった。
「おいおい、まだ屋台やってないと思うぞ~!」
〘やってる、こっち、においする。〙
〘やってるはずにゃ。〙
止まる気配は無いので、後ろに付いて走る。
冒険者ギルドを素通りして西門の広場に着くと食べ物の屋台が何軒か肉を焼いていた。
そのうちの一軒の屋台前でクッキーとミャアが止まって待っていた。
〘あるじ、これ、いいにおい。〙
〘ミャアもこの串焼きが食べたいにゃ〙
「すいません。串焼き10本下さい。」
「いらっしゃい。10本も買ってくれるんかね。ありがとね。うちはライバードっていう鳥肉だから美味しいよ。」
「へ〜。珍しいのですか?」
「珍しくは無いけどね西の森にはいっぱい居るから、でも、狩り方や処理の仕方で全然味が変わってしまうもんなの、家の旦那はこれを仕留めるのが上手くてね。はい。ササの葉で包んでおいたから気を付けて持っておいき。お代は小銀貨8枚だよ。」
「ありがとう。これ銀貨1枚で。」
「あいよ。小銀貨2枚のお返し。また来ておくれ。」
ササの葉とは竹の子の皮みたいな物で大きくて水を通さない。それに串焼きを10本乗せてくれた。
乗合馬車の待合所に木のベンチがあるのでそこに座りミャアに2本渡してクッキーには皿を出して串を抜いて地面においた。
〘ガフッ、ガフッ、このにく、うまい。〙
〘ニャム、ニャム、鳥肉美味いにゃ〙
俺も、1つ食べてみる。やはりこの世界の人達はスパイスの使い方が秀逸だ。
塩味なのにスパイスがそれに付き添う様に肉と塩を結び付けて美味しさを引き立たせている。
「美味しいな。」
朝食前に2本も食べてしまった。
〘美味しかったにゃ~。毎日でも良いにゃ。〙
〘クーは、まえのにくと、このにく、じゅんばんこ。〙
「それじゃ、家に帰るぞ。」
〘あい。〙〘はいにゃ。〙
自宅に辿り着き、中に入ると、従魔達は階段を上がっていった。
(階段を上がれるまでになっちゃたか。)
俺は作業部屋で中級ポーション25瓶、上級ポーション25瓶、最上級ポーションを25瓶作って木箱に収めアイテムボックスに収納した。ドラゴンと対戦をするとき用である。
そして、購入していた錬金術師のレシピ本を思い出し読み始めたが、直ぐにサニーとナナシーの話し声が聞こえて、階段から2人が姿を表した。
「おはよう。」「おはようございます。」
「あぁ。おはよう。早速、食事に向かうか。」
「うん。」「はい。」
「昨日は、どうだった。」
と尋ねると、
「お姉ちゃんが上達が早くておいて行かれそうなの。」
「サニーは、一つの事に
だから連動する動きがぎこちなくなるの。」
「だって、講師の人、一撃必殺って言ってたじゃん。そうしたら、パンチもキックも鋭くならないと出来ないでしょ。」
「そうなんだけど。あくまでって言ってたでしょう。目指す所は、一撃必殺でも次撃を疎かになるのは駄目よ。」
「俺も武術をかじったんだけど、全ての動きを連動させる事が大事だと思うぞ。まあ、素人の俺が言う事じゃないが。」
「分かった。頑張ってみる。」
そんな話をしながら木漏れ日亭の食堂に入る。マスターに、
「マスター今日は3人で来たよ。食事お願い。」
「おう、座って待ってろ。」
「そういえば、スライムの話なんか聞いたか?」
「私は何も。お姉ちゃんは?」
「私が聞いたのは、北の草原にスライムが湧いてるとしか、スライムはお金にならないから、誰も見向きもしませんからね。」
「はい、お待ち。」
「そうなんだ。ちょっと俺も冒険者ギルドに行って話聞いてみるか。」
食事を始めて直ぐに、ニックさんが来た。
「おう、おはよう。サミュエルお前何したんだ。」
食事を止めて、
「ニックさん、おはようございます。俺が何をしたって言うんです。」
と告げて、食事を再開した。
「商業ギルドがざわついていたって商人から小耳に挟んでな。それを聞いて俺は、ピンッときたね。サミュエルがなんか持ち込んだって、お前の職業、錬金術師だからな。
で、何作って持ち込んだんだ?」
俺は食事を終わらせて、アイテムボックスから木箱3箱取り出し、各5本ポーションを抜き取って木箱をアイテムボックスに仕舞った。そして、マスターが食器を引き上げにこちらに来たタイミングで話をする。
「この黄緑色のポーションが中級ライフポーション、空色のポーションが上級ライフポーションでこの青紫色のポーションが最上級ポーション、別名再生ポーションです。」
「なっ!」「えっ!」「なにっ!」
「おまぁ、これ幻のポーションって奴じゃないか。そりゃ、商業ギルドが大騒ぎになってる訳だ。」
「それで、この各ポーション皆んなに1人ずつお渡しします。お代はいりません。どうぞ。」
と言って、サニー、ナナシ〜、ニックさん、マスターに各ポーションを1本ずつ渡した。
「いや、これは。」「流石に、貰えない。」
「サミュエル、俺は、宿を適正価格で提供した、ただの商売だぞ、これを貰う義理はねぇ。」
「俺だって、お前を拾って連れてきただけだ。」
「良いんですよ。元はそこい等に生えている草と俺の魔力なんですから、でもタダが気持ち悪いのであれば、分かりました。マスターとニックさんは今回だけ3種で銀貨5枚でお売りします。」
「銀貨5枚はあまりにもだけど、分かった。嫁さんが出産でなんか有ると困るから、俺は買わせて貰う。これ、銀貨5枚な。」
ニックさんは皮袋を取り出し、銀貨5枚をテーブルに置いて、各ポーションを肩掛けカバンに仕舞った。
サニーとナナシーは何も言わず、カバンに仕舞った。マスターは、
「うん。グダグダ言っても意見を曲げないだろうし、俺も銀貨5枚で買わして貰おう。」
と言って、各ポーションをエプロンのポケットに仕舞って、食器と共に厨房へと下がって、食器を置き銀貨5枚を握りしめ戻ってきた。テーブル上に銀貨5枚を置き、
「今回は、これで買わしてもらうが次回は適正価格で頼むわ。」
「了解です。ご馳走様でした。ギルドに行ってきます。」
「おう、夕食は、……、」
「あっ、俺の夕食は無しでお願いします。
ダンジョンに行くかもしれませんので。」
「なにっ、そうか。だったら行く前に立ち寄れ、弁当作ってやるから取りに来い。」
「えっ良いのですか。それではお言葉に甘えます。宜しくお願いします。」
こうして、木漏れ日亭を後にして、冒険者ギルドに向かった。
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