第33話 再生ポーション

夕食には少し早いのでクッキーハウスを作ろうと考えているが、切断や加工を行う工具が無い事に気付いた。

此の世界には魔法があり俺は全属性の魔法が使えるので、後は、創意と工夫で工具に変わる魔法を創り出そうと思う。

先ずは切断、前世で木材加工工場に行ったときには丸ノコが活躍していたから魔法再現は厳しい。金属加工会社を視察した時は、レーザー切断機とレーザー彫刻機があった。

レーザーと云う事は光魔法で再現出来るのではと考えた。しかし、屋内でレーザーを再現すれば大変な事になると気付いたので作るのをやめた。

そんな考え事をしていたら、クッキーとミャアは食事を終わらせていたので2階に上げておいた。


「俺は、下で作業してそれを終わらせたら、夕食を食べに行くから、お留守番宜しく。」


「はい、お留守番するにゃ。」


〘クーもする。〙


「それじゃ、お願いね。」


下に戻り、中級ポーションを10本と上級ポーションを9本作った。 

これでポーション瓶が無くなってしまったので、出掛けるべく従魔達に声を掛ける。


「クッキー、ミャア出掛けるね。」


「は〜いにゃ。」〘ふぁい。〙


ミャアは毛繕い中で、クッキーはもうすぐ夢の中の様だ。マッタリしている従魔に安心して自宅を出た。

先ずは、商業ギルドに向かう。

商業ギルドの建物には入らず、前回と同じ様に、裏の買い取り所に直接向かう。


「すいません、買い取りお願いします。」


「あっ、サミュエル君!ポーション持ってきてくれたの!上級ポーションが入荷したって上司に報告したら大騒ぎになってしまって、

副ギルド長とギルドマスターが面会したいって言っているのだけど、どうかな?」


「今ですか?」


「サミュエル君の都合が良ければね。

自己紹介が遅れました。この買い取り部門を仕切っている部長のジェロニーと申します。サミュエル様、以後お見知りおき下さいっと鑑定が出来るからって大層な役職ついてますが、これからはフランクなお付き合いをお願いします。

それで、どうですか?」


「買い取りとポーション瓶の購入後で良ければ、面会します。」


「そう!良かった。トルエドさん、マスターと副ギルド長に買い取り終了後、面会出来るみ旨伝えに行って下さい。」


「了解です。」


「今回は、中級ポーション10本、上級ポーション9本とこのポーションをお願いします。」


肩掛けカバン経由でアイテムボックスから木箱2つを出して、カウンターに置き、最上級ポーションの入った木箱から1本取り出し、ジェロニーに渡した。


「これは!薄い青紫色のポーションこんな色のポーション見たことがありません。

赤紫なら解毒ポーションなんですが、解毒ポーションも薬師ギルドが囲い込んでいますからね。 鑑定しますので暫くお待ち下さい。

……!

なっ!なんですかこれは!存在したんですね!再生ポーション。いや、最上級ポーション。こんな物が、人の手で……。私では、値段を付けられません。こちらは、面会時にお出しください。値段は、ギルドマスターに付けて頂きます。

ですので、こちらの買い取りのみ先にさせて頂きます。サミュエル君、これは大騒ぎになるよ。

後ろ盾あるの?おっと、その前に代金を金貨1枚と小金貨9枚です。お確かめを。」


「はい、確かに。」


トルエドさんが戻って来て、


「今から大丈夫だそうです。」


ジェロニーはそれを聞いて、


「分かりました。私は、サミュエル君に同行して、ギルドマスターの執務室に向かいます。ここをお願いします。」


「了解しました。」


「では、ご案内します。こちらに。」


ジェロニーに連れられて、商業ギルドの裏手入口からすぐ、右横にある階段を3階まで登る。3階に上がると両開きの重厚な木扉がありその扉をノックして、


「サミュエル様をお連れしました。」


ジェロニーが開けると応接セットのソファーに40代の男性2名が座っていたが俺が入ってくると立ち上がり、


「始めまして、私が商業ギルドのギルドマスターを勤めている、ベルノルトです。そしてこちらが、」


「副ギルド長のフォロニルスと云います。以後お見知りおき下さい。」


「錬金術師のサミュエルです。宜しく。」


「では、私はこれで失礼します。」


ジェロニーは部屋を出る。

それと入れ違いで、女性スタッフが飲み物を持って入って来た。飲み物が置かれて、


「サミュエル君、実は私達は、君の作った中級ライフポーションを私費で購入してね、飲まして貰ったんだよ……。」


「私は、副ギルド長として、ポーションの試飲を何度もやりましたが、サミュエル君のポーションを飲んでしまっては、薬師の作るポーションは苦汁でしかないと痛感しましたよ。」


「そう!そうなんだ。サミュエル君ポーションは苦みが無く、あの、いつまでも後味が纏わりつく感じが無い。喉越しスッキリ!そして何より体が何処も悪くないと思っていたが飲んだ後、ふわっと疲れが取れたんだ。」


「全く!激しく同感です。サミュエル君

いや、サミュエル様是非商業ギルドと専属契約を結んで下さい。当然、薬師ギルドの様な、生産ノルマは無し、仲介手数料も無し、向こう10年年会費は商業ギルドで立て替えとします。如何でしょう。」


「サミュエル様、如何でしょう。」


「それは、有難いお話しですが、ある事情で、あと何年後かに色々な場所に出向かなければ行けないんです。それも条件に入れて頂ければ。終身契約でも構いませんよ。」


「ギルドマスター!」


「副ギルド長!」


お互いが顔を見合わせて頷き合い、


「「その条件飲ませて頂きます。」」


声を揃えて返答して来た。


「我ら2人は、サミュエル君の後見人となりましょう。そうすれば、嫌な横槍も入りません。」


「それは!本当に助かります。宜しくお願いします。」


「では、早速ですがこの3枚の書類にサインをお願いします。

1枚めが専属契約書、2枚めが後見人受諾書こちらは、私達を後見人と認めたと云う証明書です。

3枚めが被後見人申請書、商業ギルドにこの人達が自分の後見を務めますと云う申告書Bですね。それとギルドカードも出して下さい。裏書きに私達のサインを刻印しますので。」


こうして3枚の書類にサインをしてギルドカードと共に副ギルド長に渡した。

副ギルド長はその書類とギルドカードを女性スタッフに渡した。女性スタッフはそれを持って部屋を出て行った。

そして、俺は肩掛けカバン経由で最上級ポーションの木箱を出し、テーブルに置いて木箱の蓋を開け、ギルドマスターと副ギルド長に1本づつ手渡した。


「これを買い取りして頂きたいのですが、ジェロニーさんが、お二人に値段を決めて貰ってくれと。」


「これは!」


「こんな色のポーション見たことがあるかね?副ギルド長。」


「もしかして、再生ポーション?」


「副ギルド長、監査部のテオドルフを呼んできてくれないかね。」


「了解致しました。」


副ギルド長が部屋を出ていく。

ギルドマスターが、


「サミュエル君、これって、再生ポーション?」


「俺の鑑定では、最上級ライフポーション、

皮膚、筋肉組織、神経、血管、骨の修復が瞬時に出来る。内服により五感機能及び四肢欠損部位再生可能。内臓修復可能再生不可と出ています。」


「それって……。」


ギルドマスターはポーションを持つ手が震えだして、ポーションをテーブルに置いた。

副ギルド長が男性スタッフを連れて戻って来た。


「紹介しよう、こちらが錬金術師のサミュエル君、サミュエル君、こっちは、商業ギルド監査部のテオドルフです。」


「錬金術師のサミュエルです。」


「監査部のテオドルフだ。宜しく。

ギルドマスター!集金で忙しいのに何の様なんだ。」


「テーブルに置いてある。ポーションを鑑定してみてくれ。」


「ポーション?どれどれ。」


片手でヒョイっと摘んで、鑑定する、テオドルフ。 だが、鑑定を始めた瞬間ポーションを落とさない様に両手に持ち替え、暫くすると膝から崩れへたり込んだ。


「こっこれは、ゴクッ、最上級ポーション、いわゆる、さっ、再生ポーションです。もしかして、この木箱に入っている全部が…。」


「はい、最上級ポーションです。確認をしていただいても結構ですよ。」


テオは1本1本確認をして、


「全て、最上級ポーションと確認しました。」


そして、テオドルフは何も言わずふらっと部屋を出て行った。










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