第32話 スライムの異常発生と北の森

クッキーを抱っこして、ミャアと手を繫ぎながら、北門に向かって歩いていると、周囲からの視線を感じる。

すれ違う人はミャアを見ながら通り過ぎる。

中には、目を見開いて呆然としている人もいる、やはり猫が二足歩行している姿は珍しいらしい。

しかも漆黒の毛並みでお腹と足元は真っ白それがまた目立っている。

クッキーもシルバーグレイのキラキラ毛並みで長毛なので靡くたびに光る。


飼い主目線で申し訳ないが2匹ともまだ幼生なので可愛い。

周囲の視線を釘付けであった。


北門を抜けようとすると衛兵が声を掛けてきた。


「坊主、身分証コイン持ってるか、若しくはギルドカード持っていれば見せてくれ。」


「どうしてです?」


「子供で、北門を出られるのは身分証コインを持っている者かギルドカードを持っている者だけなんだ。北にはスラム集落と呼ばれる、場所があってな子供の連れ去りなんかがあるんだ。

それで自衛手段を持っていない職業授与前の子供は外に出さない決まりなんだ。 特例は職業を持っていなくても冒険者ギルドに登録出来た子供は出れる事になっている。

坊主は、登録された従魔を連れているから大丈夫だとは思うが、そう云う事なんで、持っていれば見せてくれ。」


俺はギルドカードを見せる。


「おっ、凄いな!D級じゃないか。行って良いけど、暗くなる前に帰って来いよ。

それとその従魔、上位種と特殊種族だろ、目を離して捕獲され無い様に気を付けてな。」


「分かった。ありがとう。行ってきます。」


北門を出てみると、右手には集落があった。

掘っ立て小屋が集まって混沌としている。

遠くて良く分からないが子供もいる様だ、周囲は草原になっていて1kmぐらい先に森がある。


「クッキー下ろすぞ。ミャアも手を離すけどはしゃいで遠くまで行くんじゃ無いぞ。あの先に見える森に真っ直ぐ行くからな、寄り道しないぞ!」


〘クーはとおくにいかない。〙


〘ミャアだって。真っ直ぐ行くにゃ〙


そんな事を言いながらも、こっちを見ずに真っ直ぐ森に向かって二匹は、駈けて行く。


(それが駄目だって言ってるのに。)


離れない様に、身体強化を使いながら後を付いて行く。何かを見つけた様でクッキーが地面にの何かを噛みつきで攻撃していた。

近くに寄って見てみるとスライムに攻撃していた。


〘こいつよわい、すぐ、びちゃってなる。〙


「そりゃ、スライムだからな。最弱のモンスターって言われてる。でも、長生きした個体は強くなっているかもしれないから油断するなよ。」


ミャアが見当たらないので周囲を見渡すと、屈んで低い体勢を取りお尻をユラユラさせて何かを狙っていると思った瞬間に、

「ニャ~ァ!」っと何かに飛び掛かった。

間一髪で避けたのはミャアと同じ大きさのホーンラビットだった。

そして、ミャアの方に向き直り、今度はホーンラビットがミャアに飛び掛かると、ミャアは仁王立ちになり両手?両前足?から爪を伸ばし、その爪でホーンラビットの顔を叩き落とした。

そして喉元に爪を立てて倒してしまった。

倒し終わると爪は収納された。


「凄いな!最初の掛け声は駄目だけど、対峙した時は……。あの爪凄かったな。 ホーンラビットは仕舞っとくな。 ほら、こっち来て〝クリーン〟これで良し。」


〘クーだってやれる。みつけたらやっつける〙


〘未だまだ、やるにゃ〜。〙


「取り敢えず、森に行こうよ。森は未だまだ先だよ。」


そして、森へと向かって移動を開始した。

が、クッキーはスライムを見つけては噛みつき、それが段々楽しくなって尻尾がブルンブルン振り切れていた。

ミャアもスライムに爪を立てて猫パンチを繰り出し潰している。

20分もあれば着くと思っていたのに未だ半分ぐらいの距離しか進んでいない。

そして俺はクッキーとミャアが潰したスライムの外皮とちっちゃな魔石を回収していただけ。


(まあ、楽しそうだから良いか。)


と最悪、森に辿り着かないで帰る事になっても良いと感じていた。

続々とスライムを退治しているクッキーとミャアの歩きと攻撃がしっかりして来た。

ラノベ定番のレベルが有るかは知らないが、経験値が上がって来ている様に感じる。


「クッキー、歩きがしっかりして来たな。

ミャアも動きが俊敏になってるぞ。」


〘びちゃってやると、ちからでる。〙


〘ミャアも、思い通りに動けるにゃ。体が軽くなったにゃ。〙


「疲れてないなら、どんどん倒して良いぞ。」


〘クーがんばる。〙


〘ミャアも負けないにゃ。〙


調子に乗ってしまった従魔達はお尻フリフリダンスをしながらスライム退治に勤しんだ。

それにしても、森に近付くにつれて、スライムが増えていってる気がする、しかも最初の1頭以外ホーンが見付から無い。

俺も後ろをついて行く間にスライムを剣で突き刺し潰して行く。

ミャアとクッキーの退治したスライムの数を100まで数えていたが、100を超えた辺りで数えるのを止めて外皮と魔石の回収と退治に勤しんだ。


陽が傾く前に戻る事にして森の手前で、


「クッキー、ミャア、夕食が買えなくなると行けないから街に戻るよ。」


〘わかった。〙


〘そう云えば小腹空いたにゃ。戻って肉にゃ。〙


従魔達の同意を得て、引き返す事にした。

帰りの道でもスライムが居るので、討伐しながら街を目指す。

スライムだけに、数が多くても危機感は無かった。

こうして、スライムを大量討伐しながら北門に辿り着いた。検問で、ギルドカードを見せている時に、


「北の森を目指して向かったんですが、スライムが大量にいました。今回、初めてこっちに来たのですが、五〇〇以上倒したと思います。これって普通なんですか?」


「いや、異常だな。代官に報告して、冒険者に調査してもらう。 報告ありがとな。行って良いぞ。」


検問をパスした俺は串焼き屋台を目指して、クッキーを抱っこし、ミャアと手を繋いで進んだ。


「クッキー、ミャア、串焼き何本食べる?」


〘クーはよんほん〙


〘ミャアも4本は食べれるにゃ〙


「包んでもらって、家でゆっくり食べよう。」


〘〘わかった。〙にゃ〙


屋台で串焼きを8本、小銀貨を渡して受け取り、肩掛けカバン経由でアイテムボックスに収納して、自宅に戻った。

1階で皿を出して串焼きを置き、クッキーには串を抜いて置いた。コップと別皿に水を入れてそれも置いた。


「召し上がれ。」


〘ガフッ、ガフッ、うまい。〙


〘ニャム、ニャム、ニャム、美味いにゃ〙


従魔達はお尻フリフリ肉に食らいついていた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る