第23話 錬金作業

ガンツールの店を出て薬草を冒険者ギルドに納めに向かう。依頼をこなしていないと冒険者登録剥奪されてしまうので、少しでも実績を上げておきたかった。

冒険者ギルドに入り買い取りカウンターの男性スタッフに声をかける。


「すいません。薬草採取をして来たので、買い取りをおねがいします」


「それでは、薬草を出して貰えますか」


「分かりました」


オトギリ草300枚、チドメ草 150枚

ヨモギ草 150枚、 ドクダミ草90枚

をカウンターに置いた。


「すごい量だね、オトギリ草が10枚1束だから30件分、チドメ草は5枚1束でこれも30件、ヨモギ草も同じで30件、ドクダミ草は3枚1束だからこれも30件 1件につき小銀貨1枚だから120件で銀貨12枚だ。

ギルドカードを出して、100件超えてるからE級に昇格だよ」


「そうなんですね。有り難うございます」


こうして、薬草採取だけでE級に上がってしまった。等級の変わったギルドカードと、代金の銀貨12枚をもらって、購入した家に向かう。

冒険者ギルドで買い取りを終わらせて作業場である購入した家にたどり着いた。

家の鍵を開けて、作業台に魔導コンロと錬金釜を設置した。


(これだけで錬金術師らしくなったな。早速ポーションでも作りますか)


そう決めて道具箱から錬金道具を取り出す。

乳棒乳鉢のセット、天秤、ビーカー大中小、試験管と試験管スタンドを並べ、薬研をアイテムボックスから取り出す。

そこで、寝具を思い出し、2階に上がって各部屋に寝具セットをベットの上に置いていった。

それを終わらせて、作業部屋に戻り、ポーションのレシピを思考する、


(ポーションは薬草をすり潰して細胞を破壊したり、煮出したりして薬効を抽出しているみたいだが、これって薬師の作り方じゃないか。

これで作るから残留物が僅かに残って苦みのある初級ポーションしか作れないのかもしれない。

錬金術師は分離が使えるから、分離で薬効成分を取り出してコーヒーのネルドリップ道具で濾せば不純物も入らないで、草の苦みの残らないポーションが出来るかもしれない。

でもネルドリップの道具って売ってないよなぁ。

どちらにしてもネルドリップの道具を探すか濾す布を探しに、もう一度買い物へ出掛けますか)


そのまま家を出て、北の大通りを目指す。


大通りに出ると直ぐに、布地屋を見付ける。

店に入ると店の壁全面布の入った陳列棚があった。 カウンターに行って初老の女性スタッフに、


「目の細かい布はありますか?」


「いらっしゃい。目の細かいねぇ〜。そんな事を意識したことがないからねぇ。どれ、ちょっと待ってな」


そう言って、カウンターの後ろの棚から、3つ取り出して来た。


「思い当たるのは、この3つかねぇ、1つ目は綿糸の細い糸で織った布。

2つ目はグラスワームという魔物が巣作りに使う糸で織った布。これは硬いんだよねでも頑丈さ。

3つ目はシルクスパイダーという魔物の糸から織った布。これは、頑丈で柔らかく水の濾過にも使われている布さ。目が細かいとなるとこの3つかねぇ。どれにする。

綿布は横1m縦1mで小銀貨5枚

グラスワームの布は同じ大きさで銀貨1枚

シルクスパイダーの布は同じ大きさで銀貨1枚と小銀貨3枚だよ。

横は1m織りになってるから長さが欲しければ1m✕何mで注文しておくれ」


「それじゃ、グラスワームを1m✕1mで、シルクスパイダーを1m✕2mで下さい。それと細い紐を10m下さいます」


注文をして、銀貨3枚をカウンターに置いた。


「はいはい、今切り分けるから、紐を10mだね小銀貨1枚だよ。先に小銀貨6枚のお返し」


そうして、綿布を棚に戻して、奥の作業台に2つの布を持って行って広げて定規を当ててナイフで切る。


切った布をこちらに持って来て、10mの紐で括り俺に渡した。


「はい、これね。またおいで」


「はい」


布を受け取り、自宅に戻った。

自宅に戻って2種類の布をナイフで20cm角に切って大ビーカーの口にグラスワームの布を当てて紐で縛った。

中ビーカーの中にオトギリ草を4枚入れて、小ビーカーの中にチドメ草を2枚入れた。

ここでオトギリ草の薬効成分を葉っぱの細胞から取り出す為に、葉っぱに分離を掛けて見ると分離はするがビーカーの中に葉っぱの搾り滓も当然残る。

これでは薬効成分が搾り滓に吸われて能率が悪い。

大のビーカーに掛けたグラスワームの布をすり鉢の様にたるませ、そこにオトギリ草10枚を重ねて指で触れながら分離を掛けた。

布の上に葉の搾りかすが残りビーカーに薬効成分の液体だけが底に溜まった。

嬉しい事にグラスワームの布は布自体水分を吸わない布だった。

中ビーカーの分離したオトギリ草を大ビーカーの布の上に流して中ビーカーにクリーンを掛け、グラスワームの布を20cm角に切り取り中ビーカーの口に布を弛ませて縛った。


中ビーカーの布の上でチドメ草を6枚取り出して同じ様に分離を行った。

各ビーカーから布を取り、中ビーカーのチドメ草の薬効成分を錬金釜に入れて、大ビーカーのオトギリ草の薬効成分も錬金釜に入れる。

中ビーカーに指先からウォーターを唱えて純水を満たし、錬金釜に2杯入れる。

錬金の杖を取り出して魔力を流しながらかき混ぜると少し発光が続いて光が消えた。

錬金釜には黄緑色の液体があった。

その液体に鑑定を掛けると、


《中級ライフポーション、

皮膚、筋肉組織、神経、血管、骨の修復が出来る。切断されたものには修復不可。》


と鑑定結果が出た。


初級ポーションレシピで中級が出来てしまった。取り敢えずポーション瓶に移してみたら6本出来たので木栓で蓋をしてアイテムボックスに仕舞った。

布や錬金道具にクリーンを掛けて、部屋をでて鍵を掛けて、宿屋に戻る。

道中、何事も無く無事に宿屋に着いた。

宿屋に入ると、食堂にはニックさん、サニー、ナナシーがテーブルについて椅子に座っていた。


「ただいま」


「よぅ!」


「「おかえり」」


「おっ!防具買ったんだな」


「お姉ちゃんはナイフも買ったんだよ」


「でも、2人は体術特化の職業だろ。ナックルとか、グローブ、ガントレット、手甲鉤てっこうかぎなんかにを武器にした方が良いのでは」


「それは戦闘スタイルを講習受けてから決めようとサニーと話していたんです」


「お姉ちゃんは、魔法も剣も体術も使えるから習う技術に依って武器も変わる見たい」


「俺は剣士だから良くわからんのだけど、ギルドの指導員が言うには、サニーは武術か体術どちらでも良いそうだ。ナナシーはそれに加えて剣術も良いらしい」


「全部、受けて見ては。そこから自分に合うスタイルを決めれば良い。

だけど、2人は絶対、教会に行って治癒魔法を習得して来て。 ダンジョンに行くと直ぐには帰れないからね、戦闘中も自分で治さないと行けない場面が有ると思う」


「そうだな。適性があるなら真っ先に覚えないと、治癒は大事だぞ。明日は、何も無かったから教会に行こう」


「「はい」」


こうして、俺等4人は食事を済ませて、解散した。









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