第20話 教会にて
マーヴィンを連れて教会に行こうとしたが、マーヴィンの持ち物が全然無い事に気付いた。流石にこれじゃ、肩身が狭いと思い、
「マーヴィン、古着屋の場所わかるか」
「知ってるよ、こっち」
マーヴィンに連れられ大通りの方に向かう。
「マーヴィン、ところで年は何歳なんだ」
「7歳」
「マジか?」
びっくりするぐらい幼いのに7歳とは4歳位にしか見えなかった。
大通りに出て向かいの2軒先に服を吊るした店があった。その古着屋でお店の人に声をかける。
「店員さん、この子に合う衣類を見繕って欲しい。下着と肌着も3枚ずつ」
「あいよ。銀貨8枚ぐらいになるけど大丈夫かい」
お金を心配しているので、小金貨1枚出して置いた。
「これで買えるだけ揃えて欲しい。靴は無いかい」
「皮足袋があるけどそれで良いかい」
「それを2足出してくれ」
「了解だ。下着が…。おい坊主ちょっと来てくれ。おっ、このサイズで良いな。肌着は、こっちかな。ズボンは少し長いがこれから大きくなるからな、服はこれとこれ。こんなもんでどうだ」
「良いね。肩掛けカバンあるかい」
「あるよ。銀貨3枚だ」
銀貨3枚を出してカバンを貰う。
「マーヴィン、ここで、一式着替えてしまえ。残りは、この肩掛けカバンに入れて自分の分だ持てるな」
「うん、持てるよ」
そう言って、店の奥で素っ裸になって下着に肌着を着てズボンを履きシャツを着て上着を羽織る。皮足袋を履いて足首を縛り。残りを肩掛けカバンに仕舞って。たすき掛けして出て来た。
「着ていた服はどうする?」
「いらない」
「店員さん、それ処分お願いしていいかい」
「勿論、いっぱい購入して貰ったんだから。それぐらいお安いもんさ」
「ありがとう。じゃあ行くか。 そうだ!串焼き食べるか」
「食べる」
肩掛けカバン経由で前に買った串焼きを2本渡す。マーヴィンは凄い勢いでガツガツ食べた。水筒を出してやって飲ませる。食べ終わったので「クリーン」を掛けてやると服まで綺麗になった。
そして、教会に辿り着くと、シスターに、
「実は、この子はマーヴィンっていうんですが、この子の母親はある商会の愛人だったらしく、その母親が亡くなって父親が引き取ったらしいのですが、家で酷い虐待を受けていて、この身なりで7歳なんです。しかも、兄とその友人たちに魔法攻撃を受けていたんです。その場に僕が居合わせまして、本人の意志でこちらにお世話になりたいと申し出がありましたのでお連れしました」
「まぁ、なんて酷いのでしょう。大丈夫ですよ。ここに来たからには誰にも貴方に酷いことさせたりしませんから安心して下さいね」
マーヴィンは俺の後ろで様子を伺っていたが、シスターの言葉で我慢していたモノが決壊した。
「うわぁぁぁぁん!あぁあぁん!」
「今まで誰も助けてくれなかったんだろ」
「ひっく。お母さん死んで、毎日毎日イヤな事言われて。お腹すくし。ひっく。声出すと怒られた。父さんって言ってた人も家に一緒に行ってから会ってない……ひっく。から、誰も助けてくれなくて。うぐっ」
それを聞いたシスターが駆け寄りぎゅっと、マーヴィンを抱きしめて、
「よしよし。今日からは暖かくしてゆっくりお休みしましょうね」
それを聞いたマーヴィンは、気絶する様に寝てしまった。それを見た俺は、
「あぁっ!シスター大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。私も子供の世話をしていますから。小さな子供を支えるぐらい
「シスター、マーヴィンをこのままお願いして宜しいでしょうか?」
「構いませんが、会ってお別れしなくて良いのですか?」
「またすぐ、会いに来ます」
「そうですか、それではお預かりします」
「はい。宜しくお願いします。あっ、寄付はこちらでも?それとも奥の受付ですか?」
「出来ましたら、奥の受付でお願い致します」
「分かりました」
と言って、俺は左の通路を奥へと進む。
シスターも一緒にマーヴィンをお姫様抱っこして、進む。受付に到着してシスターが、
「子供の受け入れをしますので、入口番を誰か代わりを向かわせて。それと、こちらの方がご寄付の申し出です。対応をお願いします」
「畏まりました」
「それでは、お先に失礼します」
シスターは交代のシスターとサポート要員であろう助祭が職業授与の部屋から出て来たタイミングで助祭と共に部屋へと去って行った。
「ご寄付との事で、ありがとうございます」
受付の助祭が声を掛けてきた。
俺は向き直り、肩掛けカバン経由でアイテムボックスから母親が貯めていた分、
鉄貨 35枚
小銅貨20枚
銅貨 73枚
小銀貨40枚
銀貨 22枚
ちょっと引き抜いたが残りを壺に入れてカバンから出すと、
「細かいですから、この壺ごと渡します」
「お預かりして、壺は直ぐにお返ししますのでお待ち下さい」
助祭は、壺を持って後ろを向きテーブルに中身を出して、壺を返してきた。
「壺をお返しします。教会所属の方ですか、
?」
「はい」
「でしたら、所属カードを提出お願いできますか」
「分かりました」
と言って、カードを提出する。
助祭はカードを受取り、後ろを向いてなにか作業をすると、こちらに向き直りカードを返してきた。
「カードにご寄付の記録を入力致しました。今後もご寄付いただける際は、カードをお出し下さい。領収書代わりです。ご寄付ありがとうございました」
「それでは失礼。 彼の事お願いします」
そして、出口へと進み、教会を後にした。
外はすっかり夕暮れになっており、急ぎ足で宿屋に戻ると、食堂にニックさんがジョッキの飲み物をイッキ飲みしていた。
「ぷはぁ。仕事の後のエールは格別だなぁ。おっ、サミュエル今帰りか?こっちも今帰って来たところだ。で、探し物は見つかったか?」
「ただいま。うん。探し物は見付かって、家も買ってきた。マスター!ただいま!夕食お願いします」
「あいよ!」
「はっ!今なんつった。家買っただと!」
「うん。買った」
「何処に。金は?そんな金どうやったんだ」
「俺の職業、錬金術師で、鍛冶屋に仕事をお願いされて、鉄を錬成したら。思いの外、良いものを作ったらしく、報酬金額がいっぱいになったから、家買った」
「錬金術師ってそんなに儲かるのかよ。っで、どこの家を買ったんだ。いくらした?」
「北エリアの西側。元薬師の家を金貨12枚で購入した」
「そりゃ、お買い得だったな。って云うかそんなに稼げるのか錬金術師って。金払いが良いとは思っていたが」
そんな会話をしていたらマスターが食事を持って来た。
「ほれ、家買ったって、直ぐ、出てくのか?」
「いや、あと9日はここにいるよ。でもほら、錬金作業は宿では出来ないでしょ。そう思って作業場の相談を商業ギルドでしていたらお買い得な家だったんで、買った」
「そうか、薬草の処理とか、魔物素材の処理とか匂い出そうだもんな」
「そうだな。でも飯食いには来るだろ」
「当然、マスターの飯、美味いからちょくちょく来るよ」
ニックさん達と家の話で盛り上がっているとサニーとナナシーが降りてきて席に座った。
マスターが
「今、飯持ってくるからな」
と言って厨房に戻って行った。
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