第19話 修復依頼といじめ

「錬金釜の修復か。修復士が日用品の所にいたはずだ。一緒に行こう」


ガンツールに連れられて、日用品製作をしている集落エリアに着いた。

ガンツールは迷いなく日用品販売をしている店に入っていって、


「お~い。シミリートいるか!お~い」


「うるさい!そんな大声で呼ばなくても聞こえてるよ。カミさんに怒られるぞ。で、何の用だ」


「おぉ。いたか。こいつはサミュエル。錬金術師何だが。錬金釜が壊れているらしくてな、直して欲しいそうだ。お前さん出来るか」


「お前なぁ、修復士に修復できるかって聞のは、鍛冶屋に鍛冶出来るかって聞いているのと同じって分から無いのか? どれ見せてみろ」


「あっ、そうかスマン済まん」


「はい、これになりますが……。」


「おぉ。古いが良い品じゃないか。使い過ぎてミスリルのメッキが剥がれて魔法陣の線が、ここの部分だが、消えちゃって居るから使えなくなっているだけだ。俺が直せば100年は使えるぞ」


「お前100年は言い過ぎだろ!」


「まぁ少し大袈裟だったがその位持つ良い錬金釜って事だ。でもミスリル使うから修復費は高いぞ。金貨1枚だ」


「金貨1枚って、お前新品買えちゃわないか?」

「魔鋼の錬金釜なら買えるぞ。でも、これ使ったらとても魔鋼だけの錬金釜は使えなくなる。これも地の部分は魔鋼だけどミスリルをメッキする事で魔力伝導が良くなって品質が一段は上がるな。どうする直すか?」


「是非、お願いします。後、これと一緒に引き取った魔導コンロも壊れているみたいなのですが」


「どれ、これは魔石の交換で直る。まあ、五徳がガタが来ているから、交換しないと駄目だな。こっちは、魔石と五徳の交換で銀貨5枚だな。どうする」


「そちらも是非」


「それじゃ、丸一日くれ。明日の今頃には直っている」


「分かりました。これ代金です」


「前金か!、今、領収と預かりの木札作ってくる」


そう言って、店内に錬金釜と魔導コンロを持って行き、木札を持って戻って来た。


「それじゃ、これな。明日待ってるぞ」


こうして錬金釜の修復に目処が立ちウキウキでガンツールの店に戻って来たら女将さんが仁王立ちして待っていた。


「あんた、仕事が立て込んでいるってのに何処ほっつき歩いてたんだい。さっさと仕事しな!」


持っていた箒でガンツールの尻をバシバシ叩いて店の中に連れて行った。


「あ〜。女将さ〜ん!俺が頼んで連れて行って貰ったんですよ〜。あまり叱らないで」


「サミュエルのせいじゃないから気にしないでおくれ〜」


「それじゃ、俺はこの辺で帰ります。明日、また顔出しますね」


「あいよっ。待ってるよ!」


こうしてガンツールの店を出て、案内図を出して購入した自宅に向かった。

このまちのエリアで北は庶民の暮らすエリアになる。北門の外にスラム街が存在するらしい。俺は購入した一軒家はその北エリアと北西エリアのちょうど中間に位置して、城壁に近い所に自宅はあった。

玄関扉を開けると直ぐにカウンターがあって、作業部屋というよりも薬局のようだった

玄関扉の左右にそれなりの1m角のガラス窓外に鎧戸がついている。

カウンターの右後ろに薬品瓶を置く陳列棚

左には小さな引き出しの薬品棚があって、

陳列棚の後ろに作業台があり、薬品棚の後ろはクローゼットにその横には階段があった。トイレはその階段横に2階にも同じ位置にトイレの奥は厨房になっていた。作業台のあるスペースを奥に行くとダイニングテーブルがあって6脚の椅子が置いてあった。

2階は店舗上に2部屋、食堂上に2部屋、厨房上に1部屋あった。

各部屋にベットの骨組みは残っており、マットと布団を用意すれば寝れる。各部屋共、グローゼットが備え付けられている。

年季は入っているが手入れがされているためとても綺麗に整っていた。

お出掛けしたく無くなる、居心地の良い空間だった。

しかも、隣に馬車留めがあり、その奥に小さな庭があった。

家に戻り早速、作業台に錬金道具箱を設置した。雰囲気だけは一人前である。

すべての窓の鎧戸をしめて閂を掛ける。

最後に扉の鍵を掛けて、宿屋に向かった。

俺は北門から中央に抜ける大通りから3本外れた裏路地を南に向かって真っ直ぐ歩いている。そこに家一軒分の空き地があってそこで、男の子が立たされ、俺より少し年上の3人組に魔法をぶつけられていた。

本当にこの世界はくそったれだな。


「おい、お前らその子が何したってんだ」


「はんっ。お前に関係ないだろ」


「あぁ。関係ないな。お前は関係あるのか?」


「こいつは、親父の隠し子だったんだ。こいつの母ちゃんが死んでこいつが俺の家に来て。家は目茶苦茶になったんだ。だから俺はこいつに何したって良いんだよ!」


「ほう。他の2人はどんな関係者なんだ」


「俺はこいつの友達だ」


「俺もだ」


「って、事はいじめられている子とは無関係ってことだな。〝ダークバインド〟〝ダークバインド〟」


「なんだ、動けない」


「何だ!この黒いの取れないぞ」


なんか言っている小僧たちを無視して、

魔法をぶつけられていた子供に「ヒール」「クリーン」をかけてやった。腫れ上がっていた顔面や切り傷だらけの四肢綺麗に治った。


「君はどうしたい。奴らに復讐したいか?

それとどうしても今の家にいたいか?

君の選択次第で手伝える事があるかもしれない。どうしたい?」


「痛い事されないならそれで良い。

あの家には帰りたく無い。食べ物パン一個出し。服これしかないから。

寝るとこも床だから。あの家以外だったらどこでも良い」


「そうか、教会の孤児院でも良いか」


「おい、何勝手に決めてんだよ。コイツラの黒いの取れよ。殴るぞ」


と言って、顔面を殴ってきたが、身体強化をしている俺にはノーダメージ。

胸ぐらを掴んでいる左手首を身体強化した右手で力一杯握った。


「ボキッ」


手首の骨が折れた様だ。


「うぎゃー。痛い!痛い!痛い!」


のたうち回っているので、頭を踏み付け動かなくしてから、左掌を持って伸ばし、その間も痛いと騒いでいるがお構い無しに、「ハイヒール」を唱えて直してやった。


「おい、ドラゴンの尻尾は踏んじゃいけないと教えられなかったのか」


「おっ、教えてもらった」


「それなら解るな。お前どこの子で。名前は」


「ミラン商会のアントム」


「そうか、君は名前何ていうの」


「マーヴィン」


「じゃ、マーヴィン。アントムにお別れ言おう」


「うん、アントム兄さんさよなら」


「アントム、マーヴィンは教会に自分の意志で行く。親にはそう伝えろ。

このカードを見ろ、俺が教会所属を証明するカードだ。文句があるなら教会に来いと言っておけ。その代わりマーヴィンが受けた仕打ちが世に出回らなければ良いけどな。マーヴィン、行くか。 おっと、その前に〝解除〟〝解除〟良し、行こう」


マーヴィンを連れて教会に向かう。


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