第18話 錬金道具の発見

内見もせずに家を買ってしまった。


(衝動買いだ。前世でも良くやって嫁に怒られたなぁ。 でも、クッキーとミャアの居場所を作るには家は必要だったと思う。

不要になれば売れば良い)


「ちょっとお聞きしたいのですが。

錬金道具を売っているお店は何処にありますか?」


「錬金道具となると注文品になりますから。

有るとすれば鍛冶屋にあるかもしれません。

何でしたら取り寄せしますか?」


「家を見に行く次いでに知り合いの鍛冶屋に聞いてみます。無かったら取り寄せをお願いします。今日は此れで失礼します」


「畏まりました。本日はご購入ありがとうございました」


そして、カギ、権利書、案内図を肩掛けカバンにしまって。木札だけを手に持って商業ギルドの建物を出て裏に廻ると大きなロータリーがありその奥に倉庫があった。

倉庫に入ると右手に買取りと書いてあるそのカウンターにいる男性に声を掛ける。


「すいません」


「はい、買い取りですか?」


「いえ。これを」


と木札を渡す。


「あぁ〜、はいはい暫くお待ち下さい」


と言って奥へと男性スタッフ入って行き、しばらく待つと4つの木箱と1袋の布袋を持って来た。すぐに中を開けて確認すると木箱にはポーション瓶25本が布袋にはコルクの様な木栓が入っていた。

それを肩掛けカバンを経由してアイテムボックスに仕舞った。


「では、これで」


「モノが出来たら持って来て下さい。 どんな品質でも買い取りますから」


「分かりました。その時は、宜しく」


と言って倉庫を後にして鍛冶屋のガンツールの店に向かった。

向かう途中に道具屋を見付けたので入ると何と、

乳棒乳鉢のセット、天秤、ビーカー大中小、試験管と試験管スタンドそれを収める大きな引き出し付きの道具箱が陳列されていた。

錬金釜が無いが、カウンターに向かい店の人に話を聞く、


「これは、どうやって入手を?」


「いらっしゃい。これかい、先日取引のあった錬金術師の爺さんが亡くなってね。葬儀に参加したんだが息子さんから一族に錬金術師の職業を授与出来た人物が居なくて後継者が見つからないそうで、

置いていても邪魔だから部屋の物を引き取って欲しいと言われてね、そこにあった全ての道具を買い取ったんだ」


「それで、錬金釜と魔導コンロはありますか?」


「あるけど壊れているよ。何なら、この道具とその2つ合せて金貨3枚で買わないか」


「買います 薬研は無かったですか?」


「薬研ってあっちにあるやつかい。薬師が使う物だからあっちに置いているよ」


薬研は幾つかあった。


「この薬研も下さい」


「あいよ。そうすると金貨3枚に小金貨2枚と銀貨3枚だけど。銀貨はおまけして金貨3枚と小金貨2枚でどうだい」


「わかりました」


と言って金貨3枚と小金貨2枚を肩掛けカバン経由でカウンターに置いた。

店員はお金を引き取り、道具箱に展示していた道具類を収めて、薬研を取りに行く。


「道具箱、しまって良いですか?」


「マジックバックか!良いぞ仕舞ってくれ。今、薬研持って行く」


店員は、薬研をカウンターに置いて、奥に引っ込んだ。そして錬金釜と魔導コンロを持って来た。


「それじゃ、コイツらも引き取ってくれ」


そう言って渡された錬金釜を肩掛けカバン経由でアイテムボックスに仕舞い、薬研と魔導コンロも仕舞った。


「良い取引でした」


「それは、こっちのセリフだよ。死蔵するかビクビクしてたんだからな。錬金術師なんて、早々生まれる職業じゃないからな。

ポーションは品質さえ気にしなければ薬師でも作れるしな。それでも魔道具は錬金術師しか作れないから道具屋としては是非、取引をお願いしたいね。

ここのオーナーのランベルだ。以後宜しく」


「錬金術師のサミュエルです。亡くなった方のレシピが書かれたモノは在りませんか?」


「解かっちゃうよな。あるよ。金貨1枚でどうよ」


「ちゃっかりしてますね~。了解です」


肩掛けカバンから金貨1枚を出す。


「毎度あり。 これだ持ってけ」


それは、本になった羊皮紙の日記の様だ。


「それじゃ、また来ます」


「おう、待ってるぞ」


思わぬ所で錬金道具を手に入れたが肝心の錬金釜を直さないと何も作れないから修復を急ぎたい。

駆け足でガンツールの鍛冶屋に急ぐ。

ガンツールーの鍛冶屋に近づくと、店前に馬車が止まっていた。

馬車の後ろに回って店先を覗くと騎士風2名と貴族然としたガタイの良いおっさんがカウンター越しにガンツールと喋っている。


「鍛冶屋、何度でも言うぞ!一週間の中にこれと同じ物を100振り揃えて納品せよ。良いな!」


「男爵様、何度でも良いやすが、この品質にして収める材料がねぇんですよ。この部落全員で材料さえ有れば納品出来やすが、無いもんは作れやせん」


「だから、明日鉄鉱石は持ってきてやると言ってるではないか!それで作れば良いだろうが!代金はこの剣と同じ金額を支払うと言っておるのだぞ!何故出来んというのだ!」


「ですからね、男爵様。やらないって言ってませんぜ。そちらの剣の切れ味を出す。鋼の原料が無いと言って……。」


話の途中でガンツールと目が合った。


「仕方ごぜいやせん。ここは鍛冶屋街総出でやらしていただきやしょう。その代わり他所様の仕事を後回しにしやすので2割増の料金を頂けやすか?」


「んっ!2割とな。少々暴利ではないか?従来の製品よりも5割増の上で更に2割増とは。せめて1割5分で……。」


「承りやした。おい!」


「あいよ!男爵様、こちらが契約書になります。ご確認の上、こちらにサインをお願いします」


「うむ」


貴族千とした男爵と呼ばれていた男性が書類を確認してサインをする。


「明日の朝一番に鉄鉱石はサルント商会から運ばせる受け入れの準備をせよ。 前金は、前の金額で算出していたので金貨35枚の手形だ。これで良いな」


「構いやせん」


「では1週間後にまた来る。剣の用意1本の不足無く用意せよ」


そう言って、馬車に乗り込み去って行った。


「おう、サミュエル。良いタイミングだった」


「どういう経緯であんな話になったんですか?」


「実はなこの鍛冶屋街は3つ部落で構成されててな、武器、防具、日用品と住み分けて居るんだ。それで、お前さんが真鉄を作ってくれた事で、うちの高炉空いちまっただろ。

高炉は火を落とすと次に使う時に何日も炉を温めなきゃ無ん無くなるから、別の部落の順番待ちの連中に高炉を貸したんだ。

そしたらよ、日用品の弟子がうちの弟子のスクラップの真鉄で作った鋼の剣を譲り受けて、そいつはそいつで衛兵に売っちまったんだ。

その剣で鍛錬をしていた衛兵を男爵が見つけちまって習作にも関わらず丸太を一撃で切れちまったもんだから今回の騒動になった。って訳だ」


「それでも、かなりの量ありましたよね」


「あぁ、まだまだあるぞ正直ロングソードでも2000本は作れる。でも、くれる物は貰わないともったいないだろ」


どうも貴族相手に駄々をこねていただけの様だ。


「貴族相手に、良くやりますね」


「庶民はしぶとくなくっちゃな。それで今日はどんな用事で来たんだ」


「実は、錬金釜の修復が出来る人を紹介して欲しくて来ました」


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