第14話 教会の騒動②

「お姉ちゃん!」


祭壇に近付き、サニーがお姉ちゃんに声を掛ける。俺とニックさんも祭壇近くに行く。

俺は、祭壇前で跪いて〘創造神!〙と祈る。

目を開けると創造神がいた。


「おい!創造神!仕事で大事なホウレンソウって知っているか!」


怒りながら質問する。


「来て早々なんで怒っているのですか。意味が分かりません。何でしたっけホウレンソウ知ってますよ。当然じゃないですか!

法律、連携、掃除です。完璧でしょ」


(ちっが〜う!上手いけどちっが〜う!。

違うが間違ってもいない。

法律はコンプライアンスだし

連携は工程管理に欠かせないチームワーク

掃除は4Sと掲示されるぐらい大事。

くっ。どう言い返せば)


怒りゲージが一気に下がってしまった。


「いや! そうじゃない。確かにその3つも大事だけど。だけど基本でだ、報告、連絡、相談だ。

先ず、お姉ちゃんが生き返った報告がない。

お姉ちゃんが祭壇で復活する連絡が無い。

依代になる筈のお姉ちゃんが生き返った事での代わりの依代を何にするかの相談がない。酷い話だとは思わないかね。創造神」


「あっ、いや~。忙しくて忘れてました」


ことわりをあれほど頑なに遵守しようとしていた君がだよ、何で復活させちゃってるの!」


「其の辺を巧く誤魔化す為に、忙しくしていて連絡するのを忘れてました。すいませんした」


「お詫びにお姉ちゃんに良い職業授けてあげて」


「すいませんした。職業は魔闘士でどうでしょう。魔法、体術、剣術三拍子揃った優秀な職業です」


「それでお願いします。では次はダンジョン攻略の報告で伺えればと……。」


「あっ、ちょっと待ってください。すぐにミャアちゃんとクッキーの復活があります。

実は、ミャアちゃんとクッキーは貴方がいなくなってから食事をしなくなってもうすぐ亡くなりそうなんです。齢も齢ですし。

なので、ミャアちゃんの依代はケットシーの幼生で、クッキーはフェンリルの死産しそうな胎児が依代になります。

此方で転生したら、連絡します」


「分かりました。それでは。フッ」


こうして教会に戻って来た。

サニーがお姉ちゃんを揺さぶって、声を掛けるとお姉ちゃんが目を醒す。


「お姉ちゃん!サニーだよ。解かる」


「あぁ、サニー生きていたのね。サラマンダーに焼かれた時は、夢を見せてくれていたとばっかり思って現実味が無かったの。

でも、此処にサニーがいるんだから現実よね。それともヴァルハラなのかしら」


「違うよ、現実世界だよ。それよりサミュエル!お姉ちゃんに服を渡して!」


「キャー。なんで私裸なの!」


お姉ちゃんに買っておいた衣類を渡して。肩掛けカバンも渡す。

教会が騒々しい事で、教会のシスター、助祭、司祭、果ては司教も礼拝堂に来ていた。

シスターと助祭が入口の群衆を解散させて扉を閉めた。そして司教が此方に話掛けて来た。


「事情をご存知であればお教えいただけますかな」


矍鑠とした白髪の司教服を着た長身男性に俺が言葉を返す。


「司教様、私はサミュエルと申します。

申し訳ありませんが祭壇の間近まで来て頂けませんか。神託受けられる方がいらっしゃればその方もご一緒で構いませんので、ニックさん、サニーとお姉ちゃんを下のベンチに、そこで待機していて下さい」


「分かった」


「では私と司祭のランチェルをそちらに」


司教と司祭がニックさん達と入れ違いに祭壇前まで来る。


「先ず、私は創造神様の使徒サミュエルと申します。神託で使徒として未発見ダンジョンの探索及び討伐を命じられております。

まだ若輩なので修行期間ではありますが。

それで、創造神がサポートメンバーを手配してくださいました。それがあの姉妹なのですが、姉がその道中で大怪我してしまい、創造神様に身を預けていたのです」


「なんと!」


「そのような事が」


「3人共まだまだ技術も体も出来ていません。妹の方は9歳なので職業授与もまだです。しかも姉も今回の事で、創造神様が職業を再取得させてくれるとの事なのです。

私の言葉に嘘偽りが無い事を、祭壇で司教様と司祭様ご一緒に祈りを捧げ神託を受けたいと思いますが如何でしょうか?」


「是非もありません」


「私も同じく、是非もありません」


「それでは祈りましょう」


祭壇前に跪いて手を合わせ祈りを捧げる。


(創造神、宜しく)


〝吾の敬愛なる者共よ。

この先、ダンジョンにて人類を脅かす強力な魔物が出現する可能性がある。

その予防に吾の使徒としてサミュエルを地上に遣わした。

しかし、サミュエルは幼少である。

その為に、サポートの出来る者を遣わした。

これからも遣わす予定である。

吾の敬愛なる者共よ。そなた等もこの者達を支えよ。さればそなた等に祝福が訪れるであろう。〟


神託は終わったが司祭と司教は跪いたまま動かない。感涙して動かない。

そしてひとしきり泣いたあと2人は顔を見合せ立ち上がり。祭壇を背にして2人で


「「神託である」」


嫌な予感がする。

司祭、助祭、シスターが一斉に跪く。

そして司教のイケメンボイスが響く。


「教会が冒険者サミュエルとそのパーティーを支える様に神託を賜った。皆も肝に銘じるように。 以上」


【畏まりました。神託の仰せのままに】


そして、司教と司祭のランチェルを残して礼拝堂から退場した。


「それでは、早速職業の授与を行いましょう。ランチェルお願いします」


「畏まりました」


「サニー、お姉ちゃん連れて司祭様について行って」


「はぁ〜い。お姉ちゃん行こ」


お姉ちゃんはサニーに手を引っ張られ職業授与の礼拝堂横に向かった。







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