第6話 プラウエン商会のエルファン
取り敢えず、俺の上着をサニーに貸して、手を繋ぎ一緒に街道を歩く、後、一日程で中継の街レスデアに到着するはず。そう思って歩いていると後ろから荷馬車がやってきた。
道の脇の
「おいっ、いるのは解っているんだ出て来い」
仕方が無いので、姿を現す。
「何だ!子供じゃないか。どうしたそんな格好で!」
「親に捨てられました」
実際俺は実母を実父に殺されて、家に帰れんし、サニーは親に売られた訳だから捨てられたと同じ事だ。
「何とまぁ、
「中継の街に行って冒険者になろうと思ってます」
「そうか。ちょっと待ってろ。旦那〜!」
3人いた冒険者の一人が馬車の雇い主に声を掛けていた。
(旦那、どうも親に捨てられた子どものようでして。連れて行っては駄目ですか)
(なんと!
こちらに連れて来なさい。話を聞きましょう)
(わかりやした。今呼んで来ます)
「お~い。お前達、旦那が話しを聞きたいそうだ」
「「はい」」
返事をして、荷馬車に向かって冒険者達の雇い主の前に立つ。
「名前は何と言うんだい」
「僕は、サミュエル、この子はサニーといいます」
「しっかりと会話出来るのだね。感心だ。
それで親に捨てられたとは?」
「僕の母親は
「どうやって助けたんだね」
「母さんが使う予定だった。ポーションを使いました。それを飲ませて後は、木の実やベリー、ホーンラビットを焼いて食べさせたら元気になりました」
「そうだったんだね。年は
「僕は10歳でサニーは9歳です」
「職業授与は受けたのかい?」
「いいえ、まだです」
「それじゃ、個人メダルはまだ持っていないね。解った。それではうちで働かせる為に連れてきた事にしよう。馬車に乗りなさい」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
二人でお礼を言って馬車に乗る。
「良かったなぁ~。お前達」
「声を掛けて下さり、ありがとうございます」
「よせやい」
声を掛けてくれた冒険者はそのまま後ろに下がって行った。
2人で馬車に乗ると、雇い主が
「まだ名乗っていなかったね。
私は、王都と、この先の街レスデアに店を構えるプラウエン商会のエルファンと云う。
宜しく」
「こちらこそ宜しくお願い致します」
「宜しくお願いします」
そうしてお互いの自己紹介を終えて、仕事の話になる。
「サミュエルは街に着いたら教会に行くのかい」
「はい、そのつもりです。早く職業授与を受けて、お金を稼げないと行けませんから」
「職業にもよるけど、良かったらうちで働かないか?しっかりとした受け答えが出来る商会員は即戦力だからね」
「ですが、僕は読み書きを教わっていません。計算は何とかなると思いますが、それにサニーを養わないと行けませんから」
「読み書きはうちで教えているから問題無いし、計算が出来るのは商人として大きな武器だ。
「はい、ご厚意に感謝します。少し考えてお返事させて頂きます」
そんな話をしていると巨大な城壁が見えて来た。それが中継の街レスデア。
ここから。2本の街道に分かれてそれぞれの西の辺境と南の辺境に分かれる。その道の交差する地点にあるのがこの街レスデアだ。
西と南からの荷物はここに一旦留め置かれて、検品を受けてから王都に運ばれる。
王国の重要拠点の一つだ。当然、王直轄領の街になる。
こちらは東門となる脇の通用門には長い列が出来ていた。それでも、留まる事なく列は消化されて行く。我々の番になると、エルファンが門番に声を掛ける。
「ミルトール隊長。腰の具合は良いのかい?」
「やぁ、エルファン会頭、王都からのお帰りで。護衛はいつものメンバーで。あれっ、その子供達は?」
「道中で見つけてね。見込みが有りそうなんで、見習いで使おうと思って引っ張って来たんだ」
「てことは、授与前って事ですか」
「そうなんだ。男の子は今年、10歳なので明日、教会で授与を受けるつもり。女の子は9歳だから来年だね」
「そうなんですね。それでは子供達は入場税が一人銀貨1枚、なので銀貨2枚徴収します。 はい、確かに行ってください」
こうして、俺達は銀貨2枚を払い、中継の街レスデアに入る事が出来た。
早速、古着屋を探してサニーの服を買わないといけないので、
「皆さん本当にありがとうございました。今からサニーの服を買いに古着屋に向かいます。その後は、宿屋を探します。それでは」
「気をつけるんだぞ、そうだ!西側に冒険者の良く行く古着屋あるからそこまで連れて行ってやる。俺達は、旦那に護衛終了のサイン貰えば仕事は終わりだから」
そう言って、声を掛けてくれた冒険者は、エルファンさんの処に行って依頼書にサインを貰うとそれを護衛メンバーの一人に渡し、戻ってきた。
「それじゃ、こっちだ。そういえば、自己紹介してなかったな。俺は、C級冒険者のニックだ。宜しくな」
「サミュエルです」
「サニーです」
「良し、大分暗くなっているから急ごう」
そして駆け足で向かっていると途中で古着屋を見付けた。
ズボンのポケットには銀貨を5枚忍ばしている。
「ニックさん、時間が無いからここにしましす」
「そうだなぁ。宿屋も決めないといけないし、ここで決めるか」
「サニー気になったのあったら持ってきな。すいません」
「はいはい、いらっしゃい」
「この子の下着を2枚用意してくれませんか」
店の女将さんはサニーを見てドロワーズを2枚持ってきた。
「下着は2枚で銀貨1枚ね」
言われて銀貨一枚を支払う。
サニーは黒のパンツとクリーム色の長袖シャツそれとグレーのローブを持ってきた。
「これもお願いします」
「あいよ。その3点で銀貨3枚で良いよ」
「ではこれで」
「あい。毎度あり」
「サニー。ローブを着て」
そして、ニックさんに、
「安くて安全な宿屋ありますか」
「付いて来い」
そして西側に駆け足で進み、大通りから一本外れた脇道に入り、少し行くと3階建ての宿屋の前で止まった。
「ここが俺のオススメ宿屋の木漏れ日亭だ」
そして、ニックを先頭に宿屋に入る。
「マスター」
「おう、ニックじゃないか。何だ、奥さんに追い出されたか。部屋は空いてるぞ」
「違うわ。追い出されてね〜わ。この子等を泊めて欲しいんだ」
「何だ隠し子か!」
「だから、違うわ。預かってる子達だよ」
「解った。一泊二人で朝と夕食が付いて銀貨1枚だ。何泊希望なんだ」
俺は、銀貨6枚を出し、
「6泊お願いします」
「部屋は2階奥の突き当り201号室だ。ほれ。 荷物を置いたら降りてきな、夕食を出してやるから」
鍵を渡されて。ニックさんに
「案内ありがとうございました」
「気にするな。同じ街にいるんだ。また直ぐに会うさ。元気でやれよ」
「「はい」」
二人で返事をした。
ニックと別れ2階に上がり2階奥の扉の鍵を開けて部屋に入ると2つのベットとテーブルと椅子2脚そしてグローゼットがあった。
取り敢えず、荷物を置き下に戻ると、シチューとパンそれと角切りステーキが配膳された。久々のまともな食事を堪能した。
2人共、あっという間に食べ終え、2階に上がって部屋に入るとベットに倒れ込んで眠った。
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