After. Allie side

 アリー・グレイは帰路についていた。

 部室の鍵を返しに行った峰を昇降口先で待っていたのだが、痺れを切らして迎えに行ったところ、星薫子からチョコレートを受け取っている所を目撃してしまったのだ。

 あまりの予想外の出来事に峰を置き去りにしたというわけである。

 ––––何じゃ⁉︎ あんなに鼻の下を伸ばしおって。情けない。

 気になっていた男をポッと出の女に横取りされそうになっているのだ。

 心中、穏やかであるはずがない。

 ホームステイ先の家に着くと、玄関で靴を揃えて自室へ向かう。

「お帰りなさい。峰さんにチョコーレートは渡せましたか?」

 ホストファミリーである西園寺佳代が純粋に声をかけたにも関わらず、その言葉は彼女には届かなかった。

 アリーは自室に着くと、ベッドへダイブし枕に顔をうずめる。

「あーー!」

 叫び声は枕に吸収され、家の外までは響いていない。

「何じゃ、何じゃ⁉︎ この前まではいい感じだと思ってたのに! 可愛い子が気のある素振りを見せればすぐに乗り換えか! 女好き! ハーレム主人公! 阿呆!」

 ストレスが軽減されたところで枕から顔を離す。

 怒っているのは峰に対してではない。星薫子にでもない。自分に対してだ。

 しかし、頭では理解できていても、峰に、星に当たらずにはいられなかった。

「儂の阿呆」

 そして、彼女は再び枕に顔を突っ伏せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る